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スマホを追いかけて深夜2時

2020年本気モードで始めた婚活でしたが、全件破断となり(せめてコロナが原因とかであってほしかった)、「いやコロナで婚活もできなくってさァ~」なんて言い訳にしてますが現在は一切婚活しておりません。

コロナ騒動が激化するちょっと前、外出自粛ムードなんてまだなかったころ、わたしはマッチングアプリのwithで男性に会いました。

その男性に出会ったことで、アラサー恋愛未経験女のわたしの人生に軽く旋風が吹き荒れましたので記念にここに記しておきます。

withでやり取りすること1か月、ようやく2回目のデートにこぎつけた私。

実は1回目のデートで、見た目はかなりタイプだ!となったものの、喪女でもわかる危険なヤリモク臭を感じ取っており、2回目会ってもいいけどその時は気も股も引き締めねば!!!!と心して向かったのです。

そうして2回目のデート。

健全な食べ物の代表格とも言えるカレー(何基準)を2人で食べ、ほかにしゃべることもあまりないので「美味しかったねえ」の会話を200万回くらい繰り返しながら、駅へと向かいました。

なあんだ、健全じゃないか!もう帰るんだ!ホッと一安心8:2ちょっとがっかり くらいの気持ち。

まあまあ、と自分をなだめて「じゃあ!」と立ち去ろうとしたのですが、男性は「あ、でもまだ20時か~。おれ、この辺詳しいからもうちょっとどっかいかない?」と誘ってきた。

Oh

と思ったが、まあ1時間くらいなら付き合ってやるか。と思いました。

そして、どこに行くんだろう・・・と思っている間にコンビニに連行され、男性が一言。

「おれんちこない?」

Oh!!!!!!!!!!!

である。

数十年待ち望んだこの瞬間、想像とは全くかけ離れていたけど、わたしは今、男性の家にさ そ わ れ た !!!!!!!

わたしは努めて冷静だった。数十年間守り通した自分のプライドは、こんなところでこんな人にぶっ壊されていいものだろうか。

いやしかし、これを逃したら一生あんなこともこんなことも経験しないままにあっという間に30になり、40になって、たぶん糖尿病あたりで死んでしまうかもしれない。

だからわたしは決意した。

と、いうよりもうシンプルに投げやりに、「いかようにもなれ」と思った。

そしてあれよあれよという間にタクシーに詰め込まれ、そこからの記憶はあまりないが、脳へのストレスを最小限に抑えるために記憶・思考をオフにしていたらあっという間に男性の家についていた。

その時にわたしは異変に気付いた。

家が汚かった?NO。変なにおいがする?NO。やっぱ男性はタイプじゃなかった?・・・まあNO。

スマホがない・・・・・・・・。NEW!!!!!!!!

そう、わたしは道中脳をオフにしていたためおちゃらけさん状態になっており、いつもはしない忘れ物をタクシーにしてしまったのだ。

アアアアアアアア、ファッッ〇!!!!!

と脳内で盛大に叫んだがそのようなことが起きているなんでおくびにも出さず、努めてマッチングアプリ様の顔と声で、

「ごめんなさい、用事を思い出したので帰ります。」

を言い、相手の顔も見ぬままに帰った。

よって、数十年間待ち続けたこの瞬間は玄関にも上がらないで終わるというなんとも悲しい結末になったが今はそんなことどうでもいい。

とにかくスマホスマホ!である。

わたしはその瞬間風になり、迅速についさっき男性とタクシーに乗ったタクシー乗り場まで電車で舞い戻った。

人生でここまで意味のない往復は初めてであるが、このなんの意味もない数分間に「生まれて初めて男性の家に行く」という貴重な初体験が詰め込まれているのでここは怒らずに進めていきたい。

まずは公衆電話を探した。

令和になった今、道端から公衆電話が消え失せていたことになんて気がつきもしていなかったが、いかにも公衆電話がありそうな駅前のロータリー付近とかにも公衆電話はありそうでなかった。

そこで交番のおまわりさんに公衆電話の場所を聞いて、やっとこさ見つけた古ぼけた公衆電話(久しぶりに使ったがエモすぎて旋風が走った)から自分のスマホに何度か電話をかけた。

つながらない!!!!

わたしは脳内でうすうす気づいた。

そうだ、あのスマホ、家族割?みたいなの入ってるし、たしか「スマホを探す」みたいな機能に家族を登録した記憶がある。

そう、この手に握られたあと数枚の10円玉で実家に電話して、家族のスマホから探してもらえたら一発だ。

家族ありがとう、ジョブズもありがとう。

・・・でも、実家に電話して何と言う?しっかり者の長女で通っているわたしが、スマホをなくすなんて人生で一度もなかった。

それにタクシーに忘れるだなんて。

なんでタクシーに乗ったの?なんでそんな場所にいるの?(仕事でも私生活でもこの辺をうろつくことはないので)となるだろう。

そうしたら実は男性と会ってまして...ってところから説明しないといけなくなるかも。

無理、だ。

わたしは途方に暮れた。ていうかなんだろう、手元になんのデバイスも持ってないってこんなに不安なことだったのか。

今の私には家に帰ろうにも電車を調べる手段もないし、この危機的状況を発信する手段もない。

こええ。

わたしはこんな時まで人見知りを発揮し、おぼろげな記憶を頼りにとりあえず家に帰ることにした。家に帰ればノートPCがある。そこからTwitterとかLINEで誰かに助けを求めよう。

道中不安で仕方なかったので、意味もなくair podsだけ両耳にはめて帰った。

そしてわたしはなんとか帰宅し、ノートPCでLINEを開き、一番なんでも言える友人グループで勝手にグループ通話を開始。

「ちょ!!!!!!なんで家なんか行ったの!!!!!!大丈夫だった!?!?!?」などと切り込まれたが今は無視して、とにかくスマホを探してくれと懇願した。

だが不幸なことに類が友を呼んでいるのかわたしの友人は機械音痴多めで、「今macから電話してる!」と言ったら「へえ、どこのマックにいるの?」などと返ってきたのであ、もうダメかも、と思った。

だが信頼と実績の金融機関で働く友人が、ケータイ会社のHPから追跡できるかも、という有益情報を与えてくださったので、おおお!となって追跡してみる。

と、スマホはさっきのタクシー乗り場に、いる!!!!!!!

わたしはその瞬間また風になった。今日めっちゃ風になる頻度高い。もう当分風にはなりたくない。

わたしは両耳にairpodsを装着。ノートPCでグループ通話をつなぎながら、さきほどのタクシー乗り場に戻るべく電車に飛び乗った。

PCを閉じると通話も途切れてしまうので、PCは開きっぱなしのまま失礼した。新手のyoutuberみたいでちょっと目立った。

PC開いたまま「今、タクシー乗り場、向かってる!スマホの場所、動いた?」などと息も切れ切れに電話しながら爆走する私。やっぱりちょっと目立った。

そしてまたタクシー乗り場に舞い戻り、追跡画面をコントロール+R。(コントロール+Rのかっこいい言い方ってなんだっけ?リセッシュ?)

でも、

リセッシュしたところ、スマホの位置は住宅街に向かっていた。

うん、運転手さん、ご苦労様です。めっちゃ車内でスマホ鳴ってると思いますけども、誰か気づいて...。

ちなみにPCの充電も切れた。カオス。

やはりこの手元のデバイスが何かしら動いていないと、わたしは無力なのである。

そこで、その辺にあった「充電OK」と看板に書いてあるファミレスに入り、ありがたく充電させていただいた。

店内は深夜ということもあり、たぶんここで夜を明かしそうなおじさんや楽しそうにスマホに向かってしゃべってる若いお姉さんとかがいたけど、ほとんど人がいなかった。

ので、ありがたくグループ通話も再開させていただき、ありがたくチョコレートバナナデラックスパフェ♩みたいなやつも注文させていただいた。

無意識にドリンクバーも頼んだ。

数時間前にそこらへんでカレーを食べた気もしなくはないが、気が気でなかったのでほとんど味もしなかったので、ゼロキロカロリーである。

うめえ、うめえ!とチョコパフェを食べていたら、唯一機械に精通しているSEの友人がグループ通話に参加してくれ、そこからはあれよあれよという間にスマホにぐっと近づいた。

友人はなにやらハイテクな手を使ってわたしのスマホから「S・O・S!!!!!!!」みたいな大音量をかき鳴らしてくれた。らしい。

絶対に迷惑だと思うが致し方がない。

これはもういよいよスマホが見つかる...!正直、ドリンクバーでまだ1杯しか飲めてなかったので後ろ髪は引かれまくったが、パフェは急いで完食したのでまたもや店を飛び出した。

基本的に風になっていたのであまり気がつかなかったが、深夜の路上をPC片手に爆走する女はやはり変だったようで、道行く酔客たちが不思議そうな顔をしている走馬灯が残っている。

とはいえmacbookはproではなくairだったのでギリセーフだと思う。

SEの友人はなんとタクシーの運転手さんとも連絡が取れたようで、タクシー乗り場にダッシュで舞い戻ると、ハザードを焚いて停車しているタクシーを発見した。

あああああああああああ!

と、声にならない声を発しながら近づくと、中からあきれ顔の運転手さんがわたしのスマホを持って出てきてくれた。

すみませんでした、ありがとうございます。

を一生分発し、わたしはやっと、やっとスマホに会えた。

わたしはちょっと泣いた。

こんなちっぽけな正方形のために、こんなにたくさんの人に迷惑をかけたこと。この正方形のために、深夜2時まで寝ずに捜索してくれたグループ通話の友人の存在。

あの時、正直に男性にスマホをタクシーに忘れたと言えていたら、もっとすぐに見つかったかもしれない。

家族に助けを求められていたら・・・。

などという反省がドッと押し寄せてきたが、ここからまた家に帰らないといけないので、さきほどとは別のタクシーを拾って家に帰った。

6000円かかった。

友人にたくさんありがとうを言ったら友人は寝た。当たり前である。本当ごめんなさい。

興奮がおさまらず、わたしは家に帰りついてからもぼーっとしていたが、スマホが見つかった瞬間のグループ通話を友人が録画してくれていたのでそれを見た。

見つかった瞬間、グループの中で唯一既婚者の友人が寝落ちしていたが、旦那さんにそっと起こされていた。

ああ、旦那さんまで気にかけてくれてたんだな。

てか、改めて結婚っていいなあああああああああああ。