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【ネタバレあり】パンどろぼうとほっかほっカー レビュー
どうも芳川です。遅くなりましたがパンどろぼうシリーズの新刊「ほっかほっカー」を購入&複数回音読させられましたので、内容をレビューしてまいります。
過去4作のレビューはこちらから。
新作の書影はこんなです。
購入前の私の危惧は「①違法改造車に ②無免許運転して ③ヤバい粉を助手席で運んでいる」ということで、刑法を無視しすぎて数え役満で死刑とかになるのでは?でした。
結論から言うと、①②は当たっていますが、③は違いました。
・あらすじ
絶望的にパンを作るのが下手な人間のおじさんと、世界中のパンを盗み食いして舌が異常に肥えているパンどろぼうのタッグにより、今日も森のパン屋は大盛況。食べログで4.5。ミシュランが来てるとか来てないとかそんな感じになってきました。もはや買うだけで大行列です。
そんな中、常連客のヤギのおばあさんがボヤきます。
「ここのメロンパンめっちゃ美味いから、孫たちに食べさせたいけど、孫たちの家めちゃくちゃ遠いのよね。私はほら、前に一回椎間板ヘルニアをやってるのもあるしあまり遠出するのは怖いっていうか」
「そんなん、おれが運ぶっしょ」
さすが世界中のパンを盗み食いした、倫理観を突き抜けた独特の行動力に定評があるパンどろぼう。すぐさま配達を引き受けます。
徒歩で。
しかし、めちゃくちゃ遠い。
「徒歩、めっちゃきつ…」
そう思った矢先に、水たまりにきた自動車のタイヤに水をかけられて心が折れるパンどろぼう。
しかし、なんか、その水たまりをぶっかけてきた「どう見ても違法改造車」に乗っているやつが、違法改造車を作っている妹を紹介してくれる。そしてどれ一台たりとも車検を通らないであろう自信作の数々を見せてくれた挙句、「もしかして、パンどろぼうさんすか?自分、ファンなんすわ、一台作りましょか?」「マジ?」という感じでアレよあれよという間に、フルオーダー違法改造車「ほっかほっカー」が爆誕する。
どういう車か。
すごく簡単に言うと「アンパンマン号」。
もっと現実に即して言えば「かまど付きキッチンカー」だ。
ちなみにルーフに寝袋も備えていて継戦性も高い。
「無免許運転」のところは、もう目をつむるしかない。
そんな感じで、ヤギのおばあさんの孫ファミリーの家にて緒戦を迎えるパンどろぼう&ほっかほっカー。私のようなジブリ好きからすると「おばあさんから孫へのプレゼント」というフラグによって「ニシンのパイ事件」を彷彿としてしまい、「メロンパン?は?おれ好きなんて言ったことねぇけど?ババアに返してきて。捨ててもいいけどw」くらい言われる鬱展開を予想してしまうが、そんなことは特になく普通にメロンパンパーティは成功。
そして、パンどろぼう&ほっかほっカーはキッチンカーとして路上で商売を展開して、繁盛して終話している。
・あらたな犯罪について
最後の最後に、「えっ?保健所や都道府県に営業許可取ったの?」という点と「パン屋の時はおじさんがそうなんであろうと思っていたが、「食品衛生管理者」の資格をパンどろぼうは持っているの?「道路使用許可は?」しつこいけど「そもそも運転免許は?」
読後に余韻ならぬ、「余罪」への想いを残してくれるのがパンどろぼうシリーズの醍醐味である。
・残された森のパン屋のおじさんについて
なんとなくめでたしめでたしであるが、パン屋のおじさんのことをみんな忘れてないか。
パン屋のおじさん視点でいうと、この物語はこうだ。
「おっさん、おれ、ヤギのばあさんの孫んちにメロンパン届けてくるわ」
「ヨロ」
このやりとりを最後に、パンどろぼうは帰ってこないのである。パンどろぼうは「森のパン屋」の要、おいしいパンを作る担当だ。その相方がいないのは非常に厳しい。
なかなか帰ってこない(というかキッチンカーで商売し始めたので、おそらくもう帰ってこない)パンどろぼうを尻目に、森のパン屋はもはや行列店である。
「これは…まぁ…ワシがやるしかない…か」
開店前から大行列のプレッシャーに押され、久しぶりにエプロンをまとうおじさん。おじさんは見た目が良いパンを作ることに関しては天下一品であることは第一巻で証明されている。
パンは大売れし、町中に行き渡るだろう。
食べるまで、その異変に誰も気づかない。
そして、集団食中毒事件の発生である。おじさんのパンは、作中ずっと「兵器」として描かれているが、いよいよ保健所と警察が動く時が来たのだ。
ということになると思うのだが、大丈夫なんだろうか。私が心配することでもないけど。