絵本で子育て〜きょうだいの気持ちを考える『ティッチ』
この絵本に登場するのは、3人のきょうだいのみ。
ティッチは末っ子の男の子の名前です。
絵本の画面はいたってシンプル。
ほとんど背景もありません。
3人の関係性だけに注目したとも言えるでしょう。
おはなしは
さておはなしのはじまりは、
ティッチは ちいさな
おとこのこでした。
ねえさんの、メアリは、
ティッチより ちょっと おおきくて、
にいさんの ピートは、
ずっと おおきな子でした。
小さなピッチが持っているものはいつもメアリや人の物には及びません。
自転車や楽器、大工道具、きょうだいの中で見劣りでするものばかりです。
けれど、
最後にピッチの持っていた小さな種が大きく大きく育つ。
というおはなし。
子ども時代のきょうだいの当たり前
この絵本の文章は淡々と情景を語るだけです。
感情を表す言葉はありません。
それは読んだわたしたちが考えて、とでも言いたげ。
メアリとピートもちょっと自慢げな様子はありますが、
意地の悪い感じはうけません。
ティッチはさほどいじけたりしている様子もありません。
きょうだいの序列とはこうしたものでした。
最後に何もかもがにいさんねえさんに持ち物で叶わなかったティッティッチが、大きなものになった時、とてつもなく驚きの表情を見せました。
ふたりとも、
ティッチ、やるな〜 と。
きょうだいという外界
子どもにとって親ときょうだいは、はじめて外界です。成長するにつれてそれは広がっていくもの。
特にきょうだいは同じ子どもですし下の子は上の子の真似をして様々なことを知っていきます。
子どもにとって身体の大きさは重要です。自分より大きいものは強い、と思うのは当たり前のこと。
上の子と下の子の目線は最初から固定されています。
親から子どもたちをみるときには、平等なようで平等ではあり得ないのが現実なのです。大きい子は小さな子よりもできることが多いのはあたりまえ。子どもにとっても同じことがいえます。
ティッチは自分のできることを淡々としました。そして絵本のさいごでは兄も姉もびっくりするのです。
この絵本で、なんでも欲しいものを買ってもらっていた兄を思いだしました。ラジカセもレコードプレーヤーもバイクも。
兄と妹の3人きょうだい、でしたが、当時はあまりうらやましいとも思っていなかったように思います。親が彼だけに特別だったと思わなかったから。
親の愛情は平等に感じていたからでしょうか。
随分と大人になってから、妹と「兄はなんでも買ってもらっていたね」とあきれて笑い合ったくらいです。
きょうだいははじめての身近な人間です。そこでそれぞれが色々なことを感じあい観察し合っているのだな、と思います。
お子さまにきょうだいができたら読んでほしい絵本です。
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ティッチ
パット ハッチンス さく・え
いしいももこ やく
福音館書店 1975年4月発行