絵本で子育て〜やんちゃな子の見守りかた『しりたがりやのちいさな魚のお話』
まだ世の中(水の中)を知らない、けれど好奇心はあって「なんでも知りたい!」おはなしの主人公スイスイは子どもたちそのもの。やんちゃな子どもは、経験をつんだ大人たちに見守られ助けられ経験を積んで大きくなっていく。そんな当たり前の世界をちゃんと描いてくれている絵本です。
スゥエーデンの絵本作家エルサ・ベスコフのちょっとユニークなお話。読み終えるのに15分はかかる、かなりお話しの量がある絵本です。
日差しが強く感じられ水辺が恋しくなる5月から6月によく読みました。
ちょっとおかしな魚たちの姿が子どもたちの笑顔を誘います。
魚に足が生えたなら…
表紙には、桟橋に腹ばいになって、水の中を覗き込むトーマスの姿。
水の中ではなにやら相談中の4匹の魚たち。
スイスイは魚のスズキの子、とてもしりたがりやです。
ちいさなスイスイは、さかなの仲間たちと話すうち
「水のないところ」「ニンゲン、みてみたい」と好奇心を刺激されます。
そしてある時、釣りにきた男の子トーマスに釣られます。
さて、水のなかの魚たちは、スイスイを助けに行こうと
ブクブクバーバーという魔法衛お使えるカエルの魔女に、
なんと足を生やしてもらうのです。
そして3匹そろってトーマスの元へ。
「~ここにいたら、スイスイは、しんんでしまうわ。」
という、彼らの言い分に納得して、トーマスはスイスイを水に返しました。
スイスイたちを眺めてるうち、泳ぎたくなったトーマスは、
魚たちの助言で泳げるようになります。
なにが自由でなにが不自由か
ガミガミおじさんのこんなセリフでお話しは終わります。
確かに…。
魚目線で見るとニンゲンはかなり不自由な生き物に見えますね。
魔法で足を生やした魚たち、その姿の不思議なこと。
魚の形は手足のない形が完成形なのだと、つくづく感じました。
登場する魚たちの名前がも楽しい。
スイスイを助けに行くのは、
カレイのテンテンおばさん、コイのピカピカおじさん、カワカマスのガミガミさん。
まだ世の中(水の中)を知らない、
けれど好奇心はあって「なんでも知りたい!」スイスイ。
やんちゃな子どもは、経験をつんだ大人たちに
見守られ助けられ経験を積んで大きくなっていく。
そんな当たり前の世界をちゃんと描いてくれている絵本です。
水の中の世界を覗き見る
そしてどこか懐かしさを感じるパステルカラーのくすんだ色彩。
特別な水辺ではない、大きな事件が起こるような街ではない
日常が描かれる色彩に感じられます。
どこか50年代の映画の一場面のような印象をいつも受けます。
しずかな水辺の優しい緑がかった青系の色が
涼やかさを感じさせてくれる絵本です。
そこに足をはやした魚たちが写実的に描かれていて、
それでいて不自然ではない。
こんな魚いるのでは!?
なんて思わせてくれる、絵のうまさに驚きました。
リアルなのに愛らしいのは、目線でしょうか。
魚たちの会話が聞こえてきそうです。
このお話しを読むと、
いつも水の中の魚のたちがうらやましくなるのです。
さいごにトーマスが魚泳ぎを裸ん坊で泳ぐ姿が、
とても気持ちよさそうです。
水が気持ち良く感じられる季節に読みたい絵本です。
◉◉◉
しりたがりやのちいさな魚
エルサ・ベスコフ作・絵
石井登志子訳
徳間書店 2000年1月発行