心が、あっちにいったり、こっちに来たり。
「伝統芸能、かぁ・・・」
企画でメシを食っていく2021、第二回の講座へ向けた事前課題は「“伝統芸能”を調べて、あなたが見つけた魅力を説明してください。」というものだった。
第一回目の課題「自分の広告をつくってください」のときは、あんなにわくわくして初日からさっそく机に向かって取り掛かったのに。今回は、なんとなく腰が重い。我ながら、わかりやすい正直な心の反応だった。
未知のものに出会ったとき、知らない世界に踏み込むとき。「わくわくする人」と「不安を感じる人」の2パターンがあるとするなら、私は完全に後者だ。
小学生の頃に一度だけ、課外授業で能を見に行ったことがあるくらいで、それ以外に“伝統芸能”に触れたことは、一度もない。だから、未知だった。不安だった。
「魅力、見つけられるかなぁ・・・」
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講座のゲスト講師は、九龍ジョーさん。ということで、九龍さんの著書やインタビュー記事を読みまくる。とにかく、調べられる限り調べて、読んでみる。見てみる。
「魅力、見つかりますように・・・」
もはや願うように情報収集していた。どんだけ不安だったんだ、わたし。もっと楽しみなさいよ!と、過去の自分に言ってあげたい。
ただ、調べていくうちに、自分の中にあった“伝統芸能”のイメージは、少しずつほぐれていった。
ニコ生で配信された超歌舞伎には初音ミクがいるし、ワンピースも歌舞伎化されてるし、YouTubeで講談の演目も見れちゃう。講談はマンガもあって、おもしろくて一気読みした。
小学生の頃は、客席から見たお面を被った人たちが遠くに感じていたけど(なんなら怖かった)、気づいていなかっただけで、今は案外すぐそばに、伝統芸能はあるのかもしれない。
そう気づけたのは、九龍さんのおかげで。そんな九龍さんのインタビュー記事の中でよく登場されている、講談師の神田伯山さんについて調べていくうちに、やっと少し何かが見えてきた感覚があった。見えてきたものを必死でかき集めて、課題を提出した。
***
そして迎えた、講座当日。
2時間、九龍さんはとにかく楽しそうに語っていた。あぁ、ほんとうに伝統芸能が好きなんだな。今この瞬間を楽しんでいらっしゃるんだろうな。もっともっといろんなことを知りたいと思っているんだろうな。
私には、そう見えた。
九龍さんの目にとまるような課題を提出した、企画生の方たちもそうだった。課題を課題として取り組むのではなく、自分なりに解釈して、自分が「おもしろい!」「好き!」と思うポイントを、自分なりの表現でまとめていた。
・・・そんなん難しくもないし、普通のことやろ!と、ダークサイドにいる私が強めな口調で言い出しかねないくらいシンプルなことを言っていますが、これが、意外と難しい。
自分自身に“伝統芸能”をぶつけてみて、出てきた反応を大切に。「自分という演算機(フィルター)」を使うといいですよ。
そう、九龍さんがおっしゃっていたことが印象的だった。
マンガで講談のおもしろさを知れたとき。YouTubeで講談を聴いたとき。情熱大陸で神田伯山さんの想いを知ったとき。私というフィルターを通して、私は何を感じたのか?
感じたこと、あった。たくさんあった。それを、もっと素直に、表現すればよかったんだ。
出発点は「自分」でいい。
仕事をする中で、自分の知ってることや好きなことばかりが、任せられるわけじゃない。最初なんてとくに、「何それ初めて聞いたんですけど!?」ということの連続だ。
そんなとき、知らないからと距離を置くんじゃなくて、「自分」という目線で、自分なりに手繰り寄せること。楽しもうとしてみること。そういうのがきっと、大切なんだろうな。
“伝統芸能” や “企画” に向き合う度に、自分自身にも向き合うことになる、企画メシの講座。悔しかったり、うれしかったり、不安になったり、発見があったり。心があっちこっちいっちゃって、なかなか大変だけど。ちゃんと手繰り寄せておこう。
次回は、“チーム” での企画がテーマになる。自分というフィルターを通して、新しく見える何かを、楽しめたらいいな。