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読書時は専らクラシックミュージック、だけれど今の気分は CHAI の END

九州そらのささやきボイスの破壊力を知る 3.18、あれはヤバい。もう聞いた?

「掃除婦のための手引き書」読了から二日経ち、ようやく文章にする気になった。
ずいぶん前にひとからおすすめいただいていたもののついぞ機会がなく、この度アルモドバルが映画化すると知ってようやく読んだ。まず本を手に取って、クラフト・エヴィング商會の装丁とわかり、「もしやルシア・ベルリンとは非実在の作家なのでは」と身構えたがそんなことはなかった。

半分読んでもいまひとつ構造が分からない。しかしなにか先を読み進めたくなる魔力があった。個人的には小説界におけるキュビスムの一種と解釈している。断片的な物語の数々はおそらくすべて作家ルシア・ベルリンの経験が種となっており、するすると多様な茎が伸びていた。ときどき絶望の色の花が咲く。

私にとっては死にゆく妹サリーとの話がどれも印象的で、いくつか心に留めおきたいことばがあった。ちなみに訳者は岸本佐知子さん。

人が死ぬと時間が止まる。もちろん死者にとっての時間は (たぶん) 止まるが、残された者の時間は暴れ馬になる。死はあまりにも突然やって来る。潮の満ち引きも、日の長短も、月の満ち欠けもお構いなしだ。カレンダーを引っぺがす。机に向かったり、地下鉄に乗ったり、子供たちに食事を作るあなたはもうどこにもいない。

「あとちょっとだけ」より

先日で、祖母が他界して11年経った。今も振り向けばすぐそこに、元気な頃の祖母が笑って立っているような気がする。けれどあなたはもうどこにもいない。

最後の数年は介護の日々だったし、私たちは散々覚悟してきたつもりだった。それでもあの日、祖母のもとに死はやっぱり突然訪れた。よく晴れた午後、白い病室で、祖母の呼吸は少しづつ止まっていった。共に暮らした私たち家族全員がそこに間に合ったのが救いだったかもしれない。

すべてが終わって外に出たとき、伯父が青空にうすく伸びる雲を指さし「アレおばあちゃんとちゃうか」と言ったことをよく覚えている。東北での混乱がテレビを通じて身近に伝わる日々だったが、嘘のように穏やかな午後だった。

確かにその後はしばらく暴れ馬だったなあ、と先に引用した文が目に触れた際思い出した。でももうあんまり思い出せない。そういう風に記憶があいまいになるために、葬式などの儀式はあるのだと理解している。これも今は亡き父(当時は元気だった。母とはとっくに離婚していた)がなぜかやって来て、私が邪魔だ来るなと罵り無駄に怒らせたことはよく覚えている。葬式の会場はうすら寒かった。

ルシアにとって妹サリーは、ながらく小さな妬みと罪悪感の対象であったはずだが、大人になって非常に仲が深まったらしい。私には妹どころかきょうだいがひとりもいないので、その感覚は分からないが羨ましく思う。私の親たちはほぼほぼきょうだい仲が悪かったので余計である(母-伯父間は例外)。

その妹が死んでしまう、というときの話は作中いくつか登場しており、どれもサリーに寄り添うルシアの心境が克明に描き出されていて、苦しくも惹きつけられるものがあった。どうしたらいいかわからないルシアに10代終わりごろのかつての自分が重なる。我が家では伯父が介護を全面的に担ってくれてはいたが、もちろん私がお手洗い等を介助することもあり、はやく死にたいと繰り返し泣く祖母の身体を支えるとき、何を思えば良いのか分からなかった。


この小説は「もしも」の話で唐突に終わる。もしもあのとき私が慰めるようなことを言っていたら、祖母はどう思っただろうか。もしも地震のあとすぐ被災地に行っていて、祖母の死に目に会えなかったら、もっと違う私になっただろうか。そもそも一緒に暮らさなかったら? ……親の離婚が分岐点になるのは映画「ミスター・ノーバディ」だったか。たくさんのもしもを考えすぎて、ひとは可能性の山に埋もれる。

11年前の夏、そういう色々があって私は演劇をやってみた。そのときの先生の劇団が本多劇場で公演をしているので、今日はそれを観に行った。久しぶりに触れる激しい感情、当時の私が何に惹かれたのかを思い出す。ひとは皆爆発する、らしい。私の爆発の音を聴け、そうそうこういう感じだった。BOKAN MY LOVE.

私は今、私が好きだと無事思えるようになった。母との暮らしを選び必然的に祖母と暮らしたあの過去を経た、後戻りしようがない現在を生きる私。つい先日何もかもに飽きた気持ちになって「別人になりたい」などと言ってみたりもしたが、そんな自分をごまかす作業は諸々おこなったが、無事少々落ち着いた。そして仕事の波におぼれかけた。自分をなだめながら仕事もしなきゃいけないなんて、大人は大変である。こんなことで落ち着いたなんて言ったらその辺で聞いてる鬼に笑われるかもしれない。しかしその辺の鬼ってなんだ。

仕事といえば実はまた締め切りが1本迫っているので、そろそろこのあたりで今日はやめにしておく。「雑記」と称して毎日なにかしら書くと決めていたのに、三日目にものすごい締め切りが来てしまって早々と中断していた、意志薄弱。でももうすぐラジオ体操は7日連続記録を達成よ。ラタ坊をご存知だったら LINE しましょうか。

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