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先輩親子の観光案内を引き受けた話


※このnoteは盛大な愚痴です。

家探しが始まり、更に父の余命宣告を知り気持ちが落ち着かなかった昨年の6月、高校時代の先輩から電話をもらいました。
この先輩とは部活の相談事などをいろいろと話したり、卒業後も常に近況報告をしあっている間柄。お互いの結婚相手を紹介したり、子供達を会わせたりしていましたし、とてもお世話になりました。

先輩のお子さんの話

コロナ渦もLINEで連絡を取り合っていたのですが、その中で先輩の上のお子さん(当時中学生)が不登校になっている事を知りました。
コロナで自宅学習が続く中で小学校を卒業、中学に入学する事になったのですが、登校再開となった時に、なかなかクラスに馴染む事ができなかったようです。
コロナ渦で卒入学など大きな転機を迎えたお子さんの中には、それをきっかけに不登校になってしまう場合もあるそうです。
その頃から折に触れ「家族でNZに遊びに来たい」と言われる事が多くなりました。
遊びに来るのは大歓迎なのですが、ただの観光ではなさそうな含みが少し気になりました。

その後お子さんは不登校のまま中学校を卒業。高校に進学されましたが、やはり不登校のまま。昨年連絡を頂いた時点で、高校入学から一学期間登校していない為、留年が確定していたそうです。
その為、連絡を頂いた時が留年するか、あるいは退学して今後の進路を改めて考え直すかを考える瀬戸際だったようです。学校側からプレッシャーを受けたというわけではなく、仮に来年別の高校を再受験するなら、9月頃までに退学して新しい高校探しを始めたいからという事です。

だから、7月頃にお子さんと先輩2人でNZに遊びに行きたいというお話でした。
7月は日本では真夏ですが、NZでは真冬です。ましてクライストチャーチはかなり寒い。うちはお湯がタンク式なので、シャワーの温度を高めに設定しがちな冬に、ゲスト2人を受け入れる事ができるのか不安です。(お湯が足りなくなりそう)
更に、週末は家の見学優先の日々。平日は学校のお迎えがあるので、その間の時間しか観光案内できません。
もっと言ってしまえば、父が精密検査受けたり入院したりしており、ほぼ毎日ように母から父の容態について報告を受けている中、そんなセンシティブな状況のお子さんをお迎えしておもてなしする心の余裕がありません。

お世話になった先輩にとっても重要であろうタイミングに頼ってくれたのに、お応えできないのは残念でもあったのですが、自分の状況をお話ししました。
気候が良い春か夏(9月~2月)の方が、うちも気兼ねなくお泊りいただけると思うし、この時点ではその頃には家の購入についてはある程度目途が立っているだろうという目論見もありました。
懸念材料のうちの2つがクリアになれば、少しはなんとかできる気がします。

しかし先輩は上記の理由により、なるべく早くNZに来たいとの事でした。
海外に出る事で、もう少しお子さんの視野が広がってくれたらという希望があっての事です。これは先輩夫婦共通の意見で、お二人とも仕事や旅行で海外を訪れた際に、そういった事を感じたからなのだそうです。

海外に出れば視野が広がる

‘確かに。けっこうみんなそう言うし、日本に住んでいるだけでは気づかなかった事を知るという意味では、視野は広がると思う。
よく「こんなに自由でいいんだと思った」みたいな事を言う人がいる(先輩夫婦もそうだった)けど、それはちょっと違うと思う。
どこに住んでいて、周囲の人がどう言おうと自分は自分でしょ。
そりゃ価値観の違いがあるから、一見すると自由に見えると思う。でも誰もが自由なわけでもないし、自由だから良いという事でもないと思う。

特にお子さんは、不登校になって以降より周囲の目が気になるようになってしまったそうで、クラスの子が離れた所で全く違う話をしていても、自分の悪口を言っているような気がしてしまうそうな。
あるいは制服で外を歩いていると、周囲から見られている気がするし、私服で歩いていても「この時間になぜ?」と思われていないか気になるそう。
その為に、外出する事も難しくなってしまった。(つまり引きこもり)というお話でした。

ハッキリ言って、お子さんが行くべきは海外じゃなくてカウンセリングだと思う。制服着て地元を歩けば、そりゃ「あ、〇〇高校の制服だな」程度に視線がいく事もあるだろう。もしかしたら懐かしんでいるのかもしれないし。
私服着てたとしても「今日学校休みの日かな」程度の話なんじゃなかろうか。地域に学校が一つしかない過疎の村ならまだしも、全くそういうわけではないんだし。
気にしすぎとは思うけど、過剰に気になるというのなら、それはどうにかして症状を落ち着かせなければいけない事なんだと思う。
もう何年もその状況なのだから、今更海外に出るというような素人療法よりは、お子さんと相性が合うカウンセラーを探す事にお金を費やした方が良い。

この辺は意見が人ぞれぞれで、こういうとこに書いてしまうと「そんな事ない」って思う人もいるだろうけど、私のような意見の人間もいるって事です。

無論先輩にはもう少しやんわりと自分の意見を伝えたけれど、とにかくNZに行きたいの一点張り。ただ、私に完全にお世話させるつもりはないので、宿泊は自分でとるとの事で、先輩の希望予算で滞在できる良さそうな宿を探すよう頼まれました。探すとこは私がやるのね。

不登校からの留学

当初「もしかしてNZの高校に留学したいから、下見に来たいのかな」とも思いました。留学の仕事じゃないから詳しくないけど、実際日本の高校生活に馴染めずに海外に来る子もいるそうです。
ただ、そういう子の中でこっちで高校卒業まで行ってる子は、環境もあるけれど、本人の頑張りもあると思います。環境だけで全てが良くなるわけではないと思う。

留学を視野に入れているなら応援したいけど、それには本人がどうしたいかという事が不可欠です。
実際にお子さんに会ってみると、会話は普通。観光も楽しんでいたし、うちの子達ともよく遊んでくれました。
バンジージャンプをしてみたいというので連れて行ったのですが、躊躇なく一発で飛んでいました。
日本の友達と電話している様子から、お友達がいないというわけでもなさそう。なんというか、実際会ってみて思ったのは、この子は多分、本気で何かを変えたいとは思ってないんだなって事。
人の目が気になるなら、成田空港までの移動だって大変だと思うんだけど、それはできる。家ではオンラインゲームしているというし、言葉は悪いけど、学校で勉強するより家でゲームする方が楽しいってだけなのでは?という気がする。先輩は「そんなにゲーム好きなら、esportsのプロを目指せば」と言った事があるらしいんだけど、そこまで上手じゃないという事は本人が自覚しているらしい。
それって、好きだけどプロになるほど上達したり、自分を追い込む事はしたくないって事でしょ。

盛り上がる先輩

一方先輩の方は、「ワーホリビザ取れる年齢になったら、ファームステイしてみたら」とか、(シティのアイス屋を気に入ったとお子さんが言ったら)「日本でアイス屋さんを始めてみたら」など、盛り上がっていました。
観光もかなり楽しんでいて、お子さんが先輩のペースで観光を続けた結果、熱が出てしまいました。
この旅の目的を考えるとかなり本末転倒です。

更に話していて知ったのですが、お子さんは海外旅行がこれが初めてでないとの事。何度か家族で海外旅行した事がある上に、日頃も他県への出張に度々同行させているそうで、つまり全く外に出られない引きこもりというわけではなかったのです。これまでの旅行で視野広がってないのに、なんで今回はいけると思ったのか。

先輩のお子さんにとって大事な時。この旅行で、視野が広がらないまでも、せめて気分転換になれば。何か今後の進路を決める上で、良いきっかけをつかむ事ができたらと思って頑張ったけど、「もーこれ絶対意味ないやつやん」と思いました。

モヤった事。


・予め「物価高いですよ」とお伝えしているのに、どの飲食店に行っても、どのお店に行っても「高い」を連呼された事。だから高いんだって。
・現地校をやたら褒める。子供たちが楽しそうに学校に通ってるのを見て、「日本より自由」「日本よりのびのび」と言われるが、普通に差別される事もあるし、大変な事だってある。偉いのは日々頑張ってるうちの子供じゃ!と思った。
・結局お子さんが高校を退学された事は想定内なんだけど、進路決まってない事。先輩からはメールで「もがいているところ」と表現されていたけど。報告頂いておいてナンだけど、脱力感半端なかった。

先輩には本当にお世話になりました。
私は不登校のお子さんに対して、理解が足りない部分もあると思う。夫は「あまりにもこちらの都合を考えてなさすぎる」と少し怒っていたけれど、こちらの状況よりも、自分のお子さんの将来を考えての事だと思う。今が分岐点なのだと思ったんだろう。それだけ切羽詰まっているという事なのだ。
そう思って先輩親子が良い時間を過ごせるように努力したつもりです。

でも、多分お子さんは本気で現状をどうにかしたいという気はなさそうだし、旅行も「普通に」楽しんでいたと思う。そんなお子さんの事を、先輩夫婦も「本気でどうにかしたい」とは思ってなくて、「これも経験」ぐらいの感じなんだと思う。
日本から友達が来るのも案内するのも初めてじゃないけど、こんなにしんどかったのは初めて。尊敬していた先輩と話していて、幻滅する事になってしまったのもショックだった。



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