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日本の動物園のオラウータンを語る上で避けられないモリーとジプシーの光と影

まず、息子がオラウータンを好きになって
オランウータンの事を調べて行くうちに
ある一頭のオラウータンの存在を知った

そのオランウータンの名前がタイトルに含まれている本が
何冊も存在する、、、日本で一番有名なオランウータン

彼女の名前は〝ジプシー〟

2017年9月27日に亡くなった時には
御年62歳(推定)で飼育下での世界最高齢

息子さんは5歳ぐらいからオランウータンを
好きになったので残念ながら
ジプシーにお目にかかる事はなかった

ジプシーの年齢が推定なのは
ボルネオ島で親からはぐれ孤児になって
いるところを保護されたため

多摩動物公園が開園した1958年に多摩に来園して以来
その長い生涯を多摩動物園で過ごした

オランウータンは、高い木の上で生活し
生涯、樹上から降りない個体もいるので
未だに謎な部分もある動物だが
野生下では、その寿命は40〜50年くらいと
言われているのでジプシーがいかに長生きかわかる

そして、もう一頭の〝モリー〟
モリーは1955年に上野に来園した雌のオランウータン
モリーは1961年に子どもを産んだ
これは、国内で初めてオランウータンの繁殖に成功した事例だ

モリーが初めて生んだ子は〝初子〟と名付けられた
モリーも54歳(推定)と長生きをした

ジプシーは4頭の娘を
モリーは2頭の息子と2頭の娘を
どちらも4頭の子どもに恵まれたが

現在、モリーの子孫は残っていない
一方のジプシーは、子どもと孫あわせて16頭存命

モリーとジプシーがなぜこんなにも違うかと言うと
オランウータンの生態が長い間
謎に包まれていたからに他ならない

オランウータンは、アジアに住む唯一の大型類人猿
インドネシア(スマトラ島北部、ボルネオ島)と
マレーシア(ボルネオ島)にのみ分布している

長い間〝オランウータン〟という1つの種として認識されていたが
後に、遺伝的、形態的、生態的に異なる点が多いことから
ボルネオオラウータンとスマトラオランウータンに分けられた
2017年にはタパヌリオランウータンという新種が発見され
現在は3種類に分かれている

ボルネオとスマトラが別種として認識されだしたのが1980年代
それまで、ボルネオとスマトラを同じ檻で飼育する事もあった

モリーとジプシーはどちらもボルネオオランウータン
彼女達の運命の明暗をわけたのは繁殖相手の雄に他ならない

たまたまではあると思うが
モリーの最初の繁殖相手の〝タロー〟はスマトラオランウータン
ジプシーの最初の繁殖相手の〝ドン・ホセ〟はボルネオだった

モリーが1961年から81年までに産んだ
タローの子3頭は後に雑種であると判明し
繁殖制限がかけられた
唯一ボルネオオランウータンである〝ジロー〟との間に
できた〝敬太〟の子ども〝リュウ〟もやはり雑種であると判明
おそらく〝リュウ〟も繁殖計画から外され子どもを持たずに
2016年に死亡しモリーの血統は途絶えた

ジプシーの末娘はドン・ホセではなく
敬太の父、先出のジローとの間の子どもだが
幸運なことにジプシーの繁殖相手はいずれも
ボルネオオランウータンであったために
ジプシーは多くの子孫を今も残し続けている

2020年には孫の〝ホッピー〟が多摩動物公園で
玄孫の〝令斗〟が北海道の円山動物園で生まれており
北は北海道から南は鹿児島まで
全国9カ所の動物園でジプシーの子孫を見ることができる