回文歌(マワリウタ)
前から読んでも、後ろから読んでも、音が同じ歌を回文歌(マワリウタ)という。
古史・古伝とされる『ホツマツタヱ』には、この回文歌が出てきて、その由来を解説している。
有名な回文歌に、「なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな」という歌がある。
この解説は、Wikipediaさんから引用したい。
なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな
なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな
長き夜の 遠の睡(ねむ)りの 皆目醒(めざ)め 波乗り船の 音の良きかな
(現代読み:ながきよの とおのねむりの みなめざめ なみのりふねの おとのよきかな)
意味・解釈
進みゆく船は心地良く波音を立てるので、過ぎ去る刻の数えを忘れてしまい、ふっと「朝はいつ訪れるのだろう」と想うほど夜の長さを感じた。
調子良く進む船が海を蹴立てゆく波の音は、夜が永遠に続いてしまうのではと思うほど心地よいので、思わず眠りも覚めてしまう。
長い世の中の遠い戦いの記憶から皆よ目を覚ましなさい。波に乗っている船にぶつかる音の状況はよいのだろうか。
ホツマツタヱ(天の巻1:きつのなとほむしさるあや/東西の名と蝕虫去る文)によると、この歌はカナサキ(住吉神)が船に乗っていた時に、波が高いのを打ち返そうとこの回文歌を詠むと、風が止んで波は静かになったとある。
この章には、ワカ姫のアチヒコへの恋歌も回文歌になっていて、必然的に夫婦になるエピソードがあり、そこではワカ姫の養父であるカナサキが「コノウタハ カエコトナラヌ マワリウタ」と解説している為、回文歌には呪術的な要素があると推測される。
そちらの回文歌も取り上げておく。
キシイコソ ツマオミキワニ コトノネノ トコニワキミオ マツソコイシキ
キシイ(紀州)こそ 妻を身際(みぎわ)に 琴の音の 床に我君(わぎみ)を 待つぞ恋しき
「紀州で私は貴方の妻になって近くで琴を奏でてさしあげたいのです。寝床で私の伴侶を恋しく思いながらお待ちしております」
現代人からすると色ボケのような歌ではあるが、これは回文歌になっている為、絶対的な力を持ち、イエスともノーとも返事ができるものではなく、ここに書かれている事が事実となるように決められているというのだから恐れ慄く話である。結婚して二人は幸せになったのだから、良い話なのだけれども。
初めに紹介した回文歌「なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな」については、室町時代や江戸時代に宝船や初夢の風習として残ったそうで、興味深い。
正月2日(地方によっては3日)の夜、上記の歌が書かれた七福神の宝船の絵を枕の下に置き、歌を3度読んで寝ると吉夢を見られるという風習がある。また、歌を歌いながら千代紙や折り紙などに歌を書き記し、その紙を帆掛け船の形に折って枕の下に置くことで良い夢が見られるとも。なお、悪い夢を見てしまった場合は、その船を川に流すことで邪気を払い縁起直しした(水に流す)。
江戸時代には、正月早々に「お宝、お宝」と声を掛け、歌が書かれた宝船の絵を売る歩く「宝船売り」がおり、暮れどきになると庶民は買いに走っていたとされる。
ここでいう正月というのは、元旦ではなく、節分であるという説がある。私も節分が正しいのではないかと思っている。
↓YouTubeで表さんなどの解説を参考にされるとよい。