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アメリカの話2

今日もアメリカのお話。
前回はSTAPLES Centerでの観光客を狙った悲しい体験談を書いたが、海外旅行は決して悲しいことばかりが起こるわけではない。見たこともない景色を見て感動し、人の温か味に触れて心が浄化される、それも海外旅行の醍醐味だ。今日はそんな人の温か味に触れた話。

STAPLES Centerのお作法

陽気なラッパー風の黒人に20$のCDを売りつけられた(※)後のこと、
(※ラッパーの話の詳細は『アメリカの話』をご覧下さい)
STAPELS Centerの開場が30分前になり、入口付近は開場待ちの列が徐々にできていた。マメ吉は20$をボッタくられたばかりだったこともあり、ウロウロせずにじっとすることを決め、大人しく列に並ぶとことにした。

ファミリーやカップル、マメ吉と同じお一人様っぽい人、多種多様な人が並んでいる。場所取りを任されたのか、お父さんらしき人が一人で並んでいる姿もチラホラ見受けられる。「こういった光景は日本もアメリカも変わらないな」としみじみ感じながら、財布や日本から持ってきたNBAグッズを入れたバックパックを大事に背負っていた。

開演20分前になった時だ。
会場スタッフが整列を促しながら、持込み不可の物についての説明を始めた。列の後ろまで伝わるよう、持込み不可一覧の看板を持って回るスタッフもいる。

note用写真素材

STAPLES Centerの持込み不可を示す看板(公式twitterから引用)


……What's?

右上をよく見て欲しい。
リュックNG、、、になっていないか?


右上というか、上段にはリュックNGのマークが。ご丁寧にも上段にあるNG物の実に2/3をリュックが占めている。日本人のマメ吉ですら、とにかくリュックの持込みがNGであることが一目で分かった。
ユニバーサルデザイン、万歳!


会場まではホテルから歩いて来ていたので、レンタカーに荷物を置くことができない。ましてや、荷物をどこかに隠したり、見ず知らずの誰かに預けるわけにもいかない。かといって会場側が預かってくれる雰囲気はない。
完全に詰んだ。。。
片道15分をかけて歩いてホテルまで戻り、部屋に荷物を置いた後、また15分かけて会場まで戻る、これしか選択肢は無い。

完全に諦めたその時だった。

人生初のクエート人とのセッション

リュックがNGだと知って肩を落としていた時、マメ吉の後ろに並んでいた一人の男が声を掛けてきた。

「リュックはNGみたいだね。」

同情した様子で話しかけられた。身長は180cm以上あり、小太りで、あごには立派なヒゲをたくわており、顔立ちはいかにもアラブ系だった。パーカーにジャージをはき、いかにも近所から来ました感のあるラフな格好だ。
彼は続けて、

「近くのパーキングに車を停めてあるんだけど、荷物を置きに来るか?」

と言ってきた……。

一瞬、迷いが生じた。
Yeah men、実はさっき陽気なラッパーに洗礼を受けたばかりで、容易に他人を信用できる状態ではないんだ。でも声を掛けてくれたことは嬉しかった。
ただ、君が本当に信用してもよい人なのであれば、是非ともお言葉に甘えさせて下さい。お願いします。

また英語にならない声が心をかき乱す。
彼は「気にしなくていいよ。置きにきなよ」としきりに言っている。


しばらく迷った結果、マメ吉は彼を信じることに決めた。
ここまでくれば、流れに身を任せてみるのも旅の一興だ。ただ、いつでも全力でダッシュができる心構えだけはしていた。

簡単な自己紹介をしながら、少し距離を保って彼の後ろを付いていく。
彼曰く、身なりからは想像できなかったがどうやら彼自身も観光客らしく、マメ吉と同じお一人様の海外旅行とのこと。クエート出身で、普段は石油採掘会社に勤めているらしい。いかにもクエートっぽい話だ。

ここまで聞いてもまだ完全には信用しきれなかったが、ビジネスマンという点ではお金には困っていないのかもしれない、という淡い期待を持ち始めていた。

5分ほど歩いてパーキングエリアに到着。彼が車のキーをピコピコと押すと、奥で黒い車が反応していた。

おやおや?
あの車、、、
もしかして マスタング じゃないか?!

ま「Did you rent a Mustang?」
彼「Yeah, Mustang! Yes, of course!」

ドヤ顔だった。
 ただマメ吉は確信した。「この人はお金に困っていない!」と。
「Mustangを借りるような人が、他人のリュックをパクるはずない。」と。
トランクにリュックを置き(もちろん中身は空っぽ)、ケータイの番号を交換し(もちろん繋がることは確認済み)、会場内で別れた。

クエート人に学ぶワールドクラスの優しさ

試合が終わり、ドキドキしながら彼に電話をしてみた。
4コール目で電話に出た彼の声は若干興奮気味だった。どうやらNBAの生観戦に興奮したらしい。とても純粋な人だ。

無事に合流し、彼のMustangが停めてある場所まで向かう。道すがら、試合のハイライトについてや、今日のLAKERSはどうだったかなど、バスケ話で盛り上がった。更に彼は日本にも行ってみたいらしく、日本に来たら桜を見たいと言っていた。クエートには桜が咲かないそうだ。

ま「もし日本に来たら、絶対に連絡して欲しい。案内するよ」

そう言って、たまたま持ってきていた名刺を彼に渡した。
普通はこの後にバーへ飲みにいくのがベストアンサーだと思ったが、彼は朝一でMustangに乗ってラスベガスに向かうそうで、ホテルに帰って寝たいと言うので、いつかまた会うことを固く誓って、彼と別れた。

ちなみにホテルも近かったので、彼にホテルまで送ってもらってしまった。リュックを預かってもらっただけでなく、人生で初めてMustangに乗るというサプライズも経験させてもらい、本当に彼の器の大きさに感嘆した。

彼との交流を通じ、マメ吉の中のクエート人像は完全に「良い人」になった。もちろん、彼は自分がクエートを代表しているとは微塵も思っていないだろうが、マメ吉は彼の底なしの優しに触れ、クエート全般に好印象を持った。20$をぼったくられて気持ちが滅入っていた自分が恥ずかしくなったし、彼の様に振る舞い、少しでも日本人の良さを伝えることのできる行動をしていきたいと本気で思った。

最後に

緊張しながらも、散々良くしてもらった今回のお話。
実はオチがあって、

マメ吉は彼の名前を知らない。
知らないというより、名前だけはクエート語で言われたので、全く聞き取れなかった。何回聞いても聞き取れず、最後は諦めてしまった。

だから今は、彼のことを「マスタングマン」と呼んでいる。


さて、ラーメンでも食べに行こうかな。

ひよこマメ吉

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