入念に下調べをすると、旅行がつまらなくなる?

 今年は久しぶりにコロナの行動制限のない夏休み、帰省や旅行に出かける方も多いことでしょう。この機会に、旅行について私が感じることを書いてみます。

旅行の下調べと、その代償


 子連れ旅行には、入念な下調べが必要です。電車やバスの乗車時間や乗り継ぎ、子連れで入れる食事処はあるか、子供向けメニューやキッズチェアはあるか、宿の設備や子連れ向けサービス、観光スケジュールは無理のないものかなど、検討事項は多岐にわたります。宿や観光地のHPや、子連れ旅行経験者のブログを読み漁って旅程を検討することになります。

 子連れ旅行でなくても、心配性な人の海外旅行も、似たようなものかもしれません。現地であたふたしないように、ネットやガイドブックで下調べします。今の時代You Tubeなどで旅行リポート動画があがっているので、十分にイメトレすることができます。切符の買い方、食事の場所や価格相場、クレジットカードの使用可否、日本語店員のいるお土産物屋さん、など。行きあたりばったりの旅も楽しいですが、海外旅行にはリスクがあるため、安全のためにもある程度の下調べはしたほうがよいでしょう。

 こうして努力の結晶のような旅行プランができあがり、このプランの通りに旅をします。入念に準備がきているので、当日あたふたしたり焦ったりすることが少なく、スムーズな旅ができます。 

 ただし、それと引き換えに、驚きや感動が減ってしまっているのです。ネットで既に見た期待通りの景色、食事、宿。「予習通り、素晴らしいね」と、旅行がある意味確認作業になってしまうのです。

昔から旅行の計画を立てるのが好きだった私

 私は昔から旅の計画をたてるのが大好きでした。空き時間さえあればネットやガイドブックを読み漁って行きたい場所を絞り、飛行機の時間や宿の費用を調べ、タイムスケジュールを組んだものです。スマホのメモ帳に「グランドキャニオン」「上高地」「チベット」など、どんどん架空の旅程表が増えていきました。休みがとれると、その中から1つ選びます。旅程は大体できあがっているので、楽です。
 子どもが生まれてからはなかなか自由な遠出はできませんが、子連れで楽しめそうな観光地を徹底的に調べ、冒頭のように綿密な計画を立てるようになりました。

 ただ、旅行の計画を立てている時が一番楽しくて、旅行そのものに没頭できていないと感じることがあります。ひどい時は、旅行中にもう次の旅行計画を立てはじめてしまっています。
 理由を考えた時に1つ浮かんだのは、旅行計画を綿密にたてすぎて、旅行で目にするものが既知のものになってしまっているからではないか、ということです。ロールプレイングゲームのように、ここに行って、それが終わったら次はこれをして、と次々に目的をこなし、ノルマのように記念写真を撮って帰る…まるで作業のようになってしまっているのではないか、と思うのです。
 もう1つは、期待値が高まりすぎてしまうことかもしれません。ガイドブックなどで目にする風景は、ベストシーズンの天気の良い日に撮影されたものであることが多いです。実際に現地に行って目にする風景が、それと比べて見栄えが良くない場合だってありえるのです。

1つの解決策

 これに対する1つの解決策は、自分以外の人にもプランを立ててもらうことかと思います。旅行同伴者である友人や家族にプランをたててもらう、1日現地ツアーに参加する、などです。現地ツアーだと、現地ガイドさんおすすめスポットがアタリだったりします。自分の知らなかった体験や発見、驚き、感動を得ることができます。

 10年近く前にトルコのカッパドキアを旅行した時を思い出します。1番の目的だった奇岩の絶景を見た感想は、「ガイドブックで見た通り、日本にない素晴らしい景色!」というものでした。意外にもそれより思い出に残っているのは、現地ツアーで隙間時間に連れて行ってもらった名前も知らない森林でのハイキングです。森の中を流れる小川に沿って歩くハイキングは、とても気持ちよくて楽しかったです。

 旅行というのは、日常を抜け出して新しい体験をすること、だと私は思います。下調べしすぎて結局新しい体験にならない…というのは悲しいので、ほどよいやり方を見つけて楽しく旅をしたいと思います。