動物の仔育ていろいろ #科学系ポッドキャストの日
ひよっこ研究者のさばいばる日記というポッドキャストを運営しています、はちです。二人の女性研究者でのリアルな会話をお届けしています。二人とも、本業は生物分野(動物)の研究者です。
今月も参加しています、
科学系ポットキャストの日!
今回のテーマは「子供」です。
久しぶりにサイエンスの話をしようと思いまして、動物の子育てについて紹介してみます。
いつもはポッドキャストの台本をnoteにあげていますが、今回は予習して、まとめたものを公開します。
音声ではもう少しかいつまんで話していると思います。
音声で聴きたい方はこちらから↓
引用文献のリンクを全部つけれてません、すいません…
(多すぎてpaperpileで文献リスト作りました)
生物学の中で子育てとは?
Q1. そもそも子育てってなぜするの?
A1. Animals have evolved to improve the survival of their offspring (Royle et al. 2012)
子育ては親がコストを払うことが多い。いま子育てをせず、将来の繁殖にかけるのか?コストを払ってでも、今の仔の生存をあげるために何かするのか?さまざまな要素が絡む (parent-offspring conflict - Trivers 1974)
Parental careの定義
こそだては、論文上ではParental careという用語
親から子へ渡される非遺伝的なもの (nongametic contributions by parents)
親の行動を示すこともあれば、広義には子への生理学的・形態学的なインプットを指すこともある (Royle et al. 2012)
これまでの研究
哺乳類 (e.g., Gubernick and Klopfer 1981; Rilling and Young 2014; Wu et al. 2014)や鳥類 (see Stahlschmidt 2011)での研究が先行していた
哺乳類
ー主に maternal care, 妊娠(gestation)、授乳(lactation)、身体的な保護鳥類
ー主にbiparental care, including nest building, thermal brooding, and food provisioning
他の分類群でも仔育てはある (Schulte et al 2020)
昆虫 (Fetherston et al. 1990; Gilbert and Manica 2010; crustaceans, Dick et al. 1998; Thiel 2007)
クモやサソリの仲間 (arachnids) (Simpson 1995; Yip and Rayor 2014)
魚類 (Goodwin et al. 1998; Steinhart et al. 2008; Buckley et al. 2010)
両生類 (Crump 1996, 2015; Gomes et al. 2012; Kupfer et al. 2016)
爬虫類 (O’Connor and Shine 2004; Vergne et al. 2009)
両生類の仔育て
水の中で卵や幼生は、激しい捕食リスクにさらされている
→ 非水棲(陸生)への進化=新しいニッチの獲得(陸生への適応コストは、新しいニッチの獲得の利点を上回っていた)
陸上への進出と、親の仔育ては共進化 (Furness et al. 2022, Vági et al. 2019)
陸は陸で両生類にとって厳しい環境であり、さまざまな仔育てが。
The Tadpole Dilemma
陸上に進出した両生類でも、おたまじゃくし(幼体)のステージでは水が必要。激しい捕食リスクにさらされる、
水棲のおたまじゃくしフェーズをなくした例
卵の中で幼虫を直接発生(Gomez-Mestre et al. 2012)
胎生 viviparity (Velo-Antón et al. 2007)
仔育ては一部の種で
ほとんどの両生類は、仔育てをしない
10–20%の種で仔育てが見つかっている (Balshine 2012, Schulte et al. 2020)
サンショウオの場合(Vági et al. 2022)
181 種中 83 種が仔育てなし
5.5% (10種)がオスが世話、48.5% (88種)がメスが世話
Who cares?
両生類では、母、父、両親のケアが見つかっている。
メスによる世話:
主に体内受精種で(e.g., 有尾目(サンショウウオ))
オスによる世話:
ほとんど体外受精種でしか起こらず、ケアなしから何度も進化(Furness & Capellini 2019)
水棲動物ー
メスは卵を水中に産み、オスはそのあとに精子を放出し、受精という体外受精種が多い
脱線:魚の例
多くの魚種はオスが仔育て(卵の保護)をする (reviwed in Kokko & Jennions 2008)
オス間の交尾を巡る争いがない
仔育てをしているオスのほうが"モテる"(Reynolds & Jones, 1999; Hale & St Mary, 2007)
仔育てをすることで、父性の確信?(the certainty of paternity)にも繋がる(Ah-King et al., 2005; Kvarnemo, 2006)
仔育ての機能
1. Protection
卵や幼体を、乾燥、酸素不足、捕食から守る
近くで見守るという物理的なものから、卵を葉っぱで隠したり泡を作って覆ったり….
2. Transport
長期的:体の上に乗せたり、体の中で仔を保持する。(=保護とも言える)
有袋類のカエル:卵を入れておく袋があるカエル (Hemiphractidae)
short video instagram ←結構すごい映像なので、自己責任でクリックしてください
ダーウィンカエル:オスカエルの声帯の中で育つ
短期的:仔にとって適した環境へ移動させる
Poison frog:葉の上に卵を産む。孵化後に葉ごと水辺へ移動 +栄養卵も与える(O'Connell 2020)
3. Nutrition
卵を産むときに、栄養となるyolk (卵黄)を渡す
それ以外にも、さまざまなかたちでの栄養を仔に与える例がある
ユニークな仔育て
ダーウィンカエル:オスカエルの声帯の中で栄養も与えられる? (Goicoechea et al. 1986). おたまじゃくしになるまで父カエルは、餌を食べない。
皮膚摂食 (Skin feeding or dermatotrophy)
親のfatty skin tissueを仔が食べる (Kupfer et al. 2016)
無足目に属するアシナシイモリ (Caecilians)
栄養だけでなく、microbesの伝播でもある。仔の歯はこの皮膚を食べるために特殊化も。体液も仔に与えるが、栄養価など機能は不明。
仔に毒を盛る母カエル?
Egg feeding
未受精卵を餌として与えるケースは、結構ある
その中でも、ヤドクカエル (Oophaga pumilio)は、この卵にアルカロイドが含まれている。
アルカロイドは、一般的に毒。
アルカロイドを体に含むことで化学的防御をしている。(成体では、500μL/individual くらい検出、幼体の7倍くらい)
ヤドクカエルは餌からアルカロイドを摂取(a diet of alkaloid-containing mites, ants, millipedes, and beetles (reviewed in Saporito et al. 2012)
変態の直前にアルカロイドを貯蔵する腺(cutaneous granular glands) が発達
小さい時のおたまじゃくしはアルカロイドを保持していないが、20個以上の卵を食べる頃になると、アルカロイドが検出され始める。
卵の場合、0.8 μg のアルカロイドで昆虫に対して防御効果が確認 (Dussourd et al. 1988)。少ない量でもアルカロイドを含んでいることは防御に寄与していると考えられる。
仔育てと対捕食者戦略
親にとって仔育ては、大きなコストを支払う行為
大きな捕食リスクは子育て中増加しており、仔育て中の対捕食者に対する防御も進化してきたと考えられている
目立つ体色を持たない
カモフラージュをした体色を持つ種が多い
血の色を隠すのは大変だと言われているけど、中には隠せるってカエルもいるらしい….
しかも寝ている間だけ…
ヤドクカエルは、目立つ体色(警告色)で毒を持つことを示したり、"装ったり"している。
警告色を持ったカエルは、おたまじゃくしを体に乗せて運んだりすることができる種でも、乗せるおたまの数が少なかったりする。おたまをのせることで、親の警告色の機能が落ちるからと考察(Toro-Gómez et al. 2022)
Ref.
Balshine, S. (2012) ‘Patterns of parental care in vertebrates’, in The Evolution of Parental Care. Oxford University Press, pp. 62–80.
Furness, A.I. and Capellini, I. (2019) ‘The evolution of parental care diversity in amphibians’, Nature communications, 10(1), p. 4709.
Furness, A.I., Venditti, C. and Capellini, I. (2022) ‘Terrestrial reproduction and parental care drive rapid evolution in the trade-off between offspring size and number across amphibians’, PLoS biology, 20(1), p. e3001495.
Gomez-Mestre, I., Pyron, R.A. and Wiens, J.J. (2012) ‘PHYLOGENETIC ANALYSES REVEAL UNEXPECTED PATTERNS IN THE EVOLUTION OF REPRODUCTIVE MODES IN FROGS’, Evolution, 66(12), pp. 3687–3700.
Kokko, H. and Jennions, M.D. (2008) ‘Parental investment, sexual selection and sex ratios’, Journal of evolutionary biology, 21(4), pp. 919–948.
Kupfer, Alexander, et al. “The Evolution of Parental Investment in Caecilian Amphibians: A Comparative Approach.” Biological Journal of the Linnean Society. Linnean Society of London, vol. 119, no. 1, Sept. 2016, pp. 4–14.
O’Connell, L.A. (2020) ‘Frank Beach Award Winner: Lessons from poison frogs on ecological drivers of behavioral diversification’, Hormones and behavior, 126(104869), p. 104869.
Parental Care in Mammals (no date) Google Books. Available at: https://books.google.com/books/about/Parental_Care_in_Mammals.html?hl=ja&id=ipjhBwAAQBAJ (Accessed: 5 January 2025).
Ringler, E. et al. (2023) ‘What amphibians can teach us about the evolution of parental care’, Annual review of ecology, evolution, and systematics, 54(1), pp. 43–62.
Royle NJ, Smiseth PT, Kölliker M. 2012. The Evolution of Parental Care. Oxford, UK: Oxford Univ. Press https://doi.org/10.1093/acprof:oso/9780199692576.001.0001
Stahlschmidt, Z.R. (2011) ‘Taxonomic chauvinism revisited: insight from parental care research’, PloS one, 6(8), p. e24192.
Stynoski, J.L. et al. (2014) ‘Evidence of maternal provisioning of alkaloid-based chemical defenses in the strawberry poison frog Oophaga pumilio’, Ecology, 95(3), pp. 587–593.
Vági, B. et al. (2022) ‘The evolution of parental care in salamanders’, Scientific reports, 12(1), p. 16655.
Velo-Antón, G. et al. (2007) ‘The evolution of viviparity in holocene islands: ecological adaptation versus phylogenetic descent along the transition from aquatic to terrestrial environments’, Zeitschrift für zoologische Systematik und Evolutionsforschung [Journal of zoological systematics and evolutionary research], 45(4), pp. 345–352.
文責 はち