ひよこのコンサート曲目紹介 その⑤
Wind Quintet No.1 / Jean Françaix
作曲者のジャン・フランセは音楽一家の子として1912年に生まれ、弱冠6歳にして作曲を始めた。
彼の作品はどの曲に至っても生気に満ち溢れ、多方面の音楽ジャンルを取り入れた、多彩で様々な質感の音楽が同席している。
この木管五重奏第一番も例外ではなく、全編を通して予想もつかない展開が演奏されていく。
第1楽章の序奏はファゴットとクラリネットのひょうきんな伴奏とともに、ホルンのゆったりとしたフレーズで始まる。序奏が終わったかと思うと、突如としてホルン連打が始まり、その様は暴走機関車が目の前を通り過ぎていくようである。おもちゃ箱をひっくり返したかのように異なる形状のモティーフが入り乱れ、超絶技巧として光る。特に後半のフルートとクラリネットには是非ご注目いただきたい。人間離れの凄技をやってのけている。
第2楽章はジャズの空気を感じる内容になっており、全編を通して3拍子で記譜されているものの、強拍が揺れ動くために、複雑なリズムとして響く。
風向きが変わって少しゆったりとした時間が流れるが、強烈な切り込みや半音階のモチーフを揶揄するかのように駆け巡った後に、この楽章は終わりを迎える。
第3楽章は変奏曲として構成されている。
オーボエによる主題が提示された後に、5つの形に変奏されていく。
第1変奏 高音楽器による主題の変奏が繰り広げられる。
第2変奏 クラリネットによって、寂寞とした変奏が奏でられる。
第3変奏 先程より遅く、フルートによって変奏される。クラリネットの16分に乗せて音楽が進行していく。
第4変奏 オーボエをきっかけに、躍動感溢れる変奏。
第5変奏 ゆったりとした変奏。ファゴットの3連符に支えれて音楽が進行していく。主題に戻って、音楽が完結する。
第4楽章は行進曲になっている。ファゴットを根幹にして、オーボエとホルンがメロディーを、フルートとクラリネットが分散和音を超絶技巧的に凄まじい勢いで演奏する。
洒落た要素がこの楽章は特に色濃く、要所要所その要素が散りばめられている。
最後はホルンによる強烈なフレーズをきっかけにして、終わりを迎える。(田邉)
今回で曲目紹介も最終回。
いよいよ全ての曲が出揃います。
最終回を飾る、プログラムのトリは、フランセの木管五重奏曲第一番です。
私の大宿敵!フランセ...!(コラ!)
みんなよくやるなぁ...!
クラリネットを吹いていると、レベルの高いコンクールに挑戦する為に、フランセの曲は誰も避けては通れず、一度はフランセと対戦しなくてはならない時が来るんです。私も試験で「主題と変奏」を挑んで撃沈、今は協奏曲と対戦中です。他にも、木管五重奏曲の第二番や、木管十重奏曲の「7つの踊り」も取り組みました...。
フランセの書く曲は、本当に吹き手にとってどれもこれも難解な曲が多く、一度聴いただけでは口ずさむことはできないし、楽譜を見ても音の並びが一発で入って来ないし、合わせをしても合ってるのかどうか不安だらけなんです。(いかに私のソルフェージュ能力が及んでいないかバレてしまいますね、お恥ずかしい。)
フランセの楽譜を読んでる時は、フランス人が話すフランス語を何の知識もない状態で聞き取る時みたいな感覚。フランス語って、モシャモシャっとした音がふわっと過ぎ去っていく感じがしません...?そういう感じ。
伝わるかな、ぜひ一度フランス人が話している動画など見て欲しいです。(笑)
と、ここまでは演者側の感想で、恐らく、聴く側にとっては、フランス語が無理に聞き取ろうとせず聞き流せば耳障りの良い音であるように、フランセの音楽も深く考えず、目の前に広がっているものを受け入れて楽しめば気分の上がる良い曲ばかりなんです。
それは、難解なジグソーパズルみたいにみえる曲でも、ピース1つ1つには作曲者の意図と遊び心が詰め込まれていているので、完成された大きな一つの絵としてみた時も、どこかを切り取ってみた時も、どんな見方をしても何通りもの楽しみ方があるからなんだろうと思っています。
大学2年生のみんなが、こよ大きくて難しいパズルに挑戦する姿に注目しつつ、皆さまの1番喜びを感じられる視点と感覚で、自由に、フランセの考え尽くされ、作り込まれた音楽をお楽しみください。