法人税における役員給与(2023年9月基礎編 問31)
おはようございます。🐤
今日は法人税における役員給与の問題です。これは得意な人多いんじゃないでしょうか。だって定期同額は損金算入、超えると超えた分だけ不算入、そして事前確定届出給与はめちゃくちゃ厳しくて、1円でもずれたら全額不算入ということ、だけでしょ?
えっ違う?
法人税における役員給与
ビジテキはp323、税金分野の「損金」のところです。
退職金を除く役員給与は、次の3つの決まりを守れば損金に算入されます。つまり適切な給与には税金がかかりません。
定期同額給与
支給が1カ月以内の一定の期間ごとに支払われる給与で、支給額または手取り額が同額のもの。事前確定届出給与
事前に給与の額と時期を決めておくものです、ある程度自由に金額と時期を設定できる代わりに、1円でも金額がずれたり、日がずれたりすると全額が損金不算入となります。厳しくて使いにくいことでおなじみです。業績連動給与
会社の利益を表す指標などに連動して給与の額を変えられるものです。基本的には同族会社以外が採用できますが、同族会社でも子会社にあたる場合は採用できます。
これらから透けて見えるルールの目的は、「ズルしちゃだめよ」ということです。要するに給与は損金にできるから、利益が多かった時期は給与を増やして節税しようというズルをさせないためのルールです。
もうちょっと細かくいきます。定期同額給与のルールを採用すると、その役員はずっと同じ給与しかもらえないでしょうか。いえ、次のようなタイミングで改定すると、全額が損金算入されたまま改定ができます。
事業年度開始から3カ月までの改定
役員の職務や地位が大きく変わった時(臨時改定事由)
経営状況がすごく悪くなった時の減額改定
これ以外の場合は、事業年度のうち少ない額が基準で、それより多い額は損金不算入となります。つまり税金がかかります。
例えば、ある役員がめちゃくちゃ業績が良くて、社長が喜んでボーナスはずんじゃった時などは、増額分は損金不算入になります。そうそう、役員にボーナスを出すとその分は損金不算入になります。ここは従業員とは違うところです。
しかし、一定のルールにのっとったボーナスは非課税にすることができます。これが「事前確定届出給与」です。
時期と額を定めた株主総会等の決議の日から1カ月以内
その役員が働き始めて1カ月以内
その事業年度開始の日から4カ月以内
このうち一番早い日です。4カ月以内というのは緩く思えるかもしれませんが、これは株主総会が決算から3カ月以内にしないといけないルールがあるので、要するに4月開始の会社は7月末で、総会の決議から1カ月と同じことです。(なお、設立したての法人の場合は、設立の日から2カ月以内と少しだけ猶予が長いです)
ついでに役員退職金
勢いで役員の退職金もいっちゃいます。これも国のお情けで損金算入してくれるのですが、気まぐれでやられると節税に使われてしまうので、一定のルールがあります。
功績倍率方式(最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率)
この「功績倍率」はあらかじめ規定で定めておく必要があり、類似業種の平均が適切であり最大でも3倍と言われます。
他にも「1年あたり平均額法」というものがあるらしいのですが、私は知りません。たぶん試験には功績倍率方式だけで事足りると思います。
ちょろいですね。😊
2023年9月基礎編 問31
一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級学科試験より
⭕️:文章のとおりです。全額が損金に算入されます。
❌:2カ月というのは耳慣れません。正しくは1カ月です。決議から1カ月以内に届出書を提出します。例えば株主総会が6月末にあったとすると、7月末までに届出書を提出すれば、ボーナスを6月にもらってもOKなのです。
❌:事前確定届出給与は、その決めた金額より1円多くても少なくても、全額が損金不算入となります。厳しすぎません?1円くらい良くない? 実際、あまり使い勝手がよくないので、ボーナスというぜひともあげたい/もらいたいものなのにも関わらず、この制度が使われることは多くないそうです。
さっきの問題とあわせての裏技なのですが、4月から6月までの様子を見て、事前確定届出給与を決めるのは上手い技です。利益があがりそうな時は、見込額をボーナスとして事前確定届出給与として提出しておくと、計算どおり利益がでたときは節税になる一方で、計算どおり利益がでなかった時はボーナスを配布しなければいいのです。そうするとボーナス分が届出とは違う額なので、課税されることになるのですが、そもそも額がゼロなので課税はされません。ボーナス以外の定期同額給与とは別枠なので、そちらも影響は受けません。ルールのうまい活用方法です。
❌:基本は同族会社は業績連動給与は採用できません。同族会社の役員は要するに親や子なので、どうしてもズルが起こりやすくなるからです。ただ、親会社に支配されている子会社など、自分の意思が全てではない会社の場合はOKになります。その制限を緩くしても、ズルが起こりにくいという考えです。
過去の関連問題
問31 内国法人に係る法人税における役員給与 2021年5月学科試験|FP1級ドットコム (fp1-siken.com)
問32 内国法人に係る法人税における役員給与 2019年5月学科試験|FP1級ドットコム (fp1-siken.com)
まとめ
役員給与の損金算入/不算入について学びました。
定期同額給与と認められて、全額が損金算入されるための改定の時期は、次のようなルールです。
事業年度開始から3カ月までの改定
役員の職務や地位が大きく変わった時(臨時改定事由)
経営状況がすごく悪くなった時の減額改定
そして、ボーナスなどの目的で、定期同額以外の枠で給与を与えたい時は「事前確定届出給与」を使うと、その全額が損金算入されます。
時期と額を定めた株主総会等の決議の日から1カ月以内
その役員が働き始めて1カ月以内
その事業年度開始の日から4カ月以内
事業年度が4月開始の会社の場合、定期同額給与は6月末までに改定、事前確定届出給与はその届を7月末までに提出と感覚的になんとなく身につけるといいのかなと思います。
というわけで今日はここまで、みなさんのお役にたてたら嬉しいです。
それではまた、FP~(@^^)/~~~