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退職金にかかる税金

おはようございます。🐤

先日の衆議院選挙から、国民民主党の政策が注目されるようになり、○万円の壁をはじめ、減税案とか増税案(社会保障費含む)への注目が集まっています。

お金に興味をもつのはとても良いことですね、今日はこんなニュースを見ました。退職金課税の見直しです。

「どーせ増税なんでしょ?」

と思いますよね、でも結論はよくわからないんです。ただ、転職が増えてきた現代にあわせた「見直し」としか言われていません。

今日の記事では、「そもそも退職金とは」というところから、「退職金課税の何が問題になっているのか」、そして「この見直しの方向性」を考えるところまでいきます。

この機会に自分の退職金とその対策について知っておきたい方はぜひ最後までお付き合いください。


そもそも退職金とは

退職金って何か考えたことがありますか?

退職金とは、本来は会社員の給料の一部であるものを、代わりに会社が積み立ててくれているもので、退職する時にもらえます。

額はとても大きくて、大企業だと何千万円ももらえたりします。退職金、もらえる人は楽しみですよね。これぞ会社員の醍醐味。

大企業:厚生労働省(中央労働委員会)「令和3年賃金事情等総合調査」
中小企業:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」

ではなぜ会社は、わざわざ手間をかけて積み立てをしてくれているのでしょうか?

  • 会社がいい人だから?

  • 長年勤めてごくろうさまの意味?

  • それにしては多すぎない?数千万円って…

なんでかはよくわかりません。

法律で決まっているから?
いいえ、法律でも「退職金を支給すること」なんて義務はありません。

それなのに、日本の会社のほとんどは退職金制度があります。(減る傾向にあります)

R5年度 退職給付(一時金・年金)の支給実態|厚生労働省

海外の退職金事情

ちなみに、海外にはこのような退職金制度はほとんどありません。
代わりに、アメリカの「401k」を代表とする確定拠出型の個人年金積立制度があります。自分の人生は自分で考える必要があるということです。

日本人のマネーリテラシーが低いと言われる理由が少し見えた気がしますね、アメリカは特に医療保険も個人の自由ですから、日本でいう「厚生年金+国民年金」の二大社会保険が、なんと"個人の自由"で、加入しないこともできるということなんです。

🐤 それはそれでけっこう大きな社会問題になっています。日本ではたいしたことのない体調不良でも救急車を呼ぶことが社会問題になっているけど、アメリカでは救急車呼ぶのに20万円くらいかかるので、呼べなくて亡くなる人が多くて社会問題になっています。考えたら、救急車って早いしお医者さん付きだし、超贅沢ですね。(参考:アメリカの医療費が世界一高い理由 〜医療制度から見る米国の社会問題〜 - ミナトのすゝめ

アメリカは放任主義の家庭、日本は口うるさい親にあーしなさいこーしなさいといちいち強制されている過保護の家庭のようですね。

日本の事情

話を戻して、日本にはとても手厚い「厚生年金+健康保険」という制度があるのに加えて、会社から「多額の退職金」というものがもらえます。

このような特異な退職金制度がある理由は、諸説ありますが、第二次世界大戦後に「電気産業労働組合」が作った制度がもとのようです。

  • 長年会社の発展に尽力したお礼として

  • 退職後の生活の安定のため

  • 技能を身につけた従業員に長く働いてもらうため

長く勤めるほどたくさんもらえる、特に定年まで(もしくは早期退職の対象となるまで)勤めるとたくさんもらえる企業が多いです。

再掲

このように、会社と従業員の利害が一致して、いろんな会社が福利厚生としてこの制度を導入し、「退職金制度のある会社」を希望する人が多くなり、もはや「退職金の無い会社が珍しい」という日本独自の文化が育ったものと考えられます。

退職金の魅力

会社としての退職金制度は、特に大きなメリットもデメリットもないといったところでしょうか。税金面では給与も退職金も損金に計上できるので、どちらで支給してもほぼ同じです。

しかし、採用の時に「退職金制度あります」というのと「退職金制度なし」なのとでは、人気に大きな差がでるようです。

また、従業員が定年まで辞めずに続けるインセンティブにもなるので、従業員の確保では大きなメリットがあります。

従業員側としては、給料とは別のところで大きな額がドカンともらえるので、定年後の楽しみがあります。会社員のみなさんは退職金楽しみですよね。

しかし、万一会社がうまくいかなくなった場合や倒産した場合などは、最悪退職金がなくなることもあります。それに、冷静に計算すると給与として先にもらう方が時間価値を考えると絶対にお得なはずです。

なぜ日本の会社員は、この退職金制度に満足をしているか?

1つは退職金にかかる税金の安さです。

なぜ国がこの安い税金でガマンできているかわからないくらい、他の所得に比べると退職金にかかる税金はダントツで安いのです。

次の「退職金にかかる税金の計算方法」でじっくり計算してみます。そんなに難しくはないので安心してください。

もう一つは、日本は戦後、国全体が一丸となって経済と産業を発展させてきたので、計算だけではない、「家族の一員」としてのすごくウェットな部分があるのだと思います。

会社員でありさえすれば、仕事ができてもできなくても日々なんとか暮らしていけて、老後も困らないで過ごすことができる。

税金のことなんて知らなくても、老後のお金のことなんて何も考えなくても、ただ会社員でありさえすれば勝手に社会保険に加入されていて、手厚い保障が約束されている。

日本人のマネーリテラシー、というか危機意識が低いのは、このような守られた環境にあるのかもしれないなと思いました。

退職金にかかる税金の計算方法

前置きが長い…語りがうざい…ごめんなさい。

というわけで会社員が退職金に満足する最も大きなメリット、それは税金がダントツに安いことです。ほとんどの場合、退職金からは税金も社会保険料もひかれないで、ほぼ丸ごと手取りとなります。

どういうことか、理由は大きく3つあります。

  1. 分離課税である

  2. 退職所得控除が大きく、課税される部分が小さい

  3. 控除後の所得を半分にすることができる

1 分離課税である

まず、退職金は他の所得と合算されずに、別に計算されます。

所得税の計算は、収入から経費を引いた「所得」に対して次の表の税率をかけるものでした。その税率は「累進課税」といって、所得が大きくなればなるほど高い税率がかかるようになっています。

退職金は、多い人なら数千万円という単位になります。
年収600万円(各種控除後の所得300万円)くらいの人は、だいたい上の所得税の表の10%くらいの税率にあてはまっているのですが、退職金を合算するともっと税率が高くなってしまいます。

そうならないように、退職金だけは別で計算できるという「分離課税」のルールをあてはめることができる、というのが一つ目のお得なルールです。

2 所得控除が大きい

次に、最も大きいのがこの所得控除で、今回のニュースでも大きく関係するところです。

給与所得控除と同じように、退職金も所得控除をしていいルールがあります。その金額は、次のように決められます。

  • 20年以下の場合:勤続年数1年あたり40万円の控除

  • 21年以上の場合:800万円+21年目以降1年あたり70万円の控除

グラフにするとこんな感じです。21年目以降はグラフの傾きが大きくなり、より大きな控除になっていることがわかります。

つまり、長い年数働くほど、控除の額が大きくなって、課税される額が小さくなるのでお得だということです。

3 所得を半分にできる

さらに、控除後の「課税所得」を半分(1/2)にすることができます。

これにより、退職金を一億円以上もらったとしても、所得税の最大税率45%に対して、最大でもその半分の22.5%、住民税を足しても27.5%ということになります。

計算例1:20年勤務で退職金1000万円の場合

1000万円-退職所得控除800万円(40万円×20年)=200万円
200万円×1/2=100万円(課税所得)
100万円を次の表にあてはめて、100万円×5%=5万円(所得税)
100万円×10%=10万円(住民税)

退職金にかかる税金は分離課税なので、その年の所得がいくらでも退職金だけ別枠で計算します。なので、1000万円の退職金にかかる税金は所得税と住民税合わせて15万円だけです。たった1.5%、安い!

これを給料でもらっていたとしたら、所得税+住民税で20%くらいとられて、さらに社会保険で15%は取られていたはずです。それを思うとたった1.5%というのは安すぎます。

計算例2:30年勤務で退職金1500万円の場合

1500万円-退職所得控除1500万円(800万円+70万円×10年)=0円

この場合、なんと所得税も住民税もゼロ、税金はかかりません!

計算例3:40年勤務で退職金3000万円の場合

3000万円-退職所得控除2200万円(800万円+70万円×20年)=800万円
800万円×1/2=400万円(課税所得)
400万円×20%-42.75万円=37.25万円(所得税)
400万円×10%=40万円(住民税)

合計77.25万円、なんと収入のたった2.6%、安い!

このように、退職金にかかる税金はとても優遇されていて安いのです。
他の税金に比べて桁外れに安いということは…嫌な予感

今回のニュースの内容(推測)

というわけで、退職金課税の見直しと言われると、まっさきに増税が思い浮かんでしまいます。

言われている噂としては、21年目以降の控除(1年あたり70万円)を、20年目までと同じ額(1年あたり40万円)にすることです。

この噂のとおりだと、21年以上務めた勤勉な会社員だけが増税となります。

なんか方向性としてはおかしいですよね。なのであまりにも批判が大きくて昨年度は検討すること自体なくなってしまいました。

社会の流れとして、成長分野に転職しやすいようにしよう、リスキリングしようという流れがあるので、「同じ会社に長く勤めるほど控除が大きいしくみ」が問題視されています。

そういう目的なのであれば、私は単にこの「同じ会社に」という部分をとっぱらう改正だけでいいのではないかなと考えます。みなさんはどう思いますか?

しかし、そもそも国は増税をしたいのです。なんとかかんとか正しいっぽい理由をつけて増税をしたい(というか他の税金に少しでも税率を近づけたい)ので、何か別の案を考えてくるのかもしれません。

退職金制度の悪用と改正の歴史

退職金がとても安いのには、会社と従業員の利害が一致し、国もそれに従わざるを得なかったという経緯があります。

しかし、この制度を悪用する人が現れます。

例えば、給与に比べて退職金の割合を高めることで、税率を低くすることができます。(退職金は分離課税+所得を1/2にできるルール)

これを防ぐために2021年に改正が行われました。税金の複雑なルールは、抜け道を使ってズルをしようとする人と国とのいたちごっこなのです。

まとめ

  • 退職金にかかる税金の計算の仕方は「退職金−所得控除」に「1/2」をかけてから税率をかけて算出

  • 退職所得控除は、20年以下の部分は1年あたり40万円、21年以上の部分は1年あたり70万円で計算する

  • 一つの会社に長く勤めるほどお得なルールだが、これは転職を阻害するとして問題になっている

  • 国としてはなんとか増税したい

ということでした、退職金と合わせて考える必要があるのは、一社の縛りを無くして転職をしやすくすること、退職金の低い税率を悪用したズルを防ぐことなどです。

あと、iDeCoとのからみもあるので、ここを大きく増税するのは国民の反発をめちゃくちゃに食らうでしょうね。iDeCoはじめ企業型のDC、DBなどの社会保険枠は増税の対象外にするなど考える必要があると思います。

だから、ヒヨコロの考える今後の方向性としては

  • 退職所得控除:21年目以降も40万円に統一(増税)

  • しかし、社会保険枠(iDeCoなど)はこれまでどおり、さらに5年、19年ルールも撤廃(希望)

  • 転職しやすいよう、一社縛りを撤廃(希望)

  • 退職金制度自体は徐々に縮小(グローバルに合わせる)

そういう方向ではないかと私は推測してます、今後の議論の方向に注目です。

それではまた〜(@^^)/~~~

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