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日英円滑化協定についての概説と持論


日英円滑化協定とは?

 日英部隊間協力円滑化協定とは、2023年1月12日に日本と英国の間で締結された両国の一方の国の部隊が他方の国を訪問して協力活動を行う際の手続及び同部隊の地位等を定める軍事協定のことである。日本が他国と円滑化協定を締結するのは、オーストラリアとの日豪円滑化協定に続き2例目として語られる。この協定が適用される場面は、日英両国が決定した上での部隊間の協力活動が両国間の領土・領海・領空または他国の領土・領海・領空を除いた全ての地域で行われる時である。つまり、両国間の領土・領海・領空での活動が認められるが、その他の国の領土・領海・領空での活動は別途その国の許可が必要になるということだ。英首相官邸は「1902年に締結された日英同盟以来、最も重要な日英間の防衛協定」と発表し、事実上の日英同盟復活と言われている。協定の日本国内実施のための特別法・特例法が制定されている。

内容

日英両国は、一方の部隊派遣国からの事前通報があり適当な場合は、外交上の経路を通じて派遣国に対し速やかに船舶、航空機及びそれらの構成員や文民構成員の飛行場や港へのアクセスを許可する。

上記の内容に加え、両国は事前に一方の訪問部隊の経路について協議する

訪問部隊及び公用車両は、両国間において別段の決定を行う場合を除きかつ中央政府がこれらの条件を定められる範囲に限り訪問先の国の法令に従い
船舶、航空機に適用される条件は租税、入港料、
道路使用料、手数料含め同等とする

訪問部隊の船舶は訪問先の国の法令に従い強制水先に服し、水先人を使用する場合は部隊派遣国が相当する比率で水先料を支払う
など

日英円滑化協定

 この協定が締結された背景には、2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻したことにより(2022年ロシアのウクライナ侵攻)、世界的に安全保障について注目されることとなる。例として、フィンランドスウェーデン北大西洋条約機構(NATO)加盟申請が挙げられる。
 また、日本に比較的に近距離となる朝鮮半島(韓国・北朝鮮)の情勢不安定化中華人民共和国と台湾(中華民国)間の緊張中国の南シナ海の進出による周辺諸国との対立は日米同盟(日米安保条約)を外交の基軸とする日本にとって安全保障上の懸念となった。
 これらの情勢について、2022年5月5日、ダウニング街での首脳会談中、英国のボリス・ジョンソン首相と日本の岸田文雄首相は日豪円滑化協定と類似する協定締結に向けて議論することで合意した。元の日豪円滑化協定と同様に、合同軍事演習の開催を容易にし、ある国から別の国への兵力派遣の簡素化を目的としていた。さらに、この新協定によって日本は次世代戦闘機の共同開発に参加できるようになった。日本がアメリカ以外の国と大規模な軍事プロジェクトに取り組むのはこれが初めてとなる。
 協定の第21条は、両締結国の捜査援助義務を定めるが、付属書や「討議の記録」に基づき、日本において死刑が課される可能性のある重大犯罪については、英国当局は身柄引き渡しを含む捜査援助義務を負わないこととされている。
 第27条は合同委員会の設置を規定するが、2023年に日本政府は、合同委員会議事録について、「合同委員会を通じた協議に際しての議事録の作成については規定していない」が、「両締約国間で個々の事案ごとに検討して、双方の同意があれば公表できることとすることを想定しておるところ」であるとしている。
 現在、日本国はその他に日仏円滑化協定や日比円滑化協定。英国は英韓円滑化協定を交渉しているが、韓国での尹大統領の戒厳令の一件もあるため真偽については不明瞭である。

日英伊三国が開発している次世代戦闘機について

 日本航空自衛隊英国の英空軍、イタリアのイタリア空軍の三国は2022年12月19日からグローバル戦闘航空プログラム(略称:GCAP)として第六世代ジェット戦闘機を共同開発する計画を発表し、共同開発を管理する国際機関「GIGO」(ジャイゴ)の設立条約が2023年に署名された。これは2035年までの配備を目処としている。このプログラムでは英伊のユーロファイター・タイフーンと、航空自衛隊のF-2を置き換えることを目的としている。
 英国は、2018年7月16日にファーンボロー国際航空ショーで発表した国防省の「戦闘航空戦略」において、将来戦闘航空システムの一環として、2030年代後半から退役が予定されているユーロファイター タイフーンの後継機(BAE システムズ・テンペスト)の開発を決定した。開発にはBAEシステムズ、ロールスロイス 、レオナルド S.p.A、MBDAが参加する予定で、英政府は2025年にかけて20億ポンド(約2700億円)を投じて調査研究を始めると発表した。ドイツとフランスも同様に次世代戦闘機(FCAS)の共同開発計画を予定しており、仮に一本化できなかった場合、欧州の航空機産業は限られた市場を奪い合うことが懸念される。
 BAEシステムズのナイジェル・ホワイトヘッド最高技術責任者(CTO)は、日本の航空自衛隊が運用するF-2後継機(将来戦闘機)の候補として、日本政府へ開発参加を提案中であると2018年に語っている(ユーロファイター タイフーンあるいはその改造機導入や日本による自主開発支援も含めた四案の一つ)。2019年2月20日にバンガロールで開催されたAero India 2019で英国国防省の官僚とBAEシステムズの幹部を含む英国代表団が、インド国防省とIAFの官僚に開発計画への参加を要請した。2019年7月19日に英国で開催されたロイヤル・インターナショナル・エアタトゥー「両国の将来の要求を満たす概念設計を含む、統合戦闘機の開発および取得計画」についての了解覚書に英国とスウェーデンが署名を行った。
 2019年9月10日にロンドンで開催されたDSEI2019で、英国のサイモン・ボロム防衛装備・支援局長とイタリアのニコラ・ファルサペルナ国防事務総長兼国家装備局長は、英防衛産業4社(BAEシステムズ、ロールス・ロイス、MBDA UK、レオナルドUK)とイタリア防衛産業4社(レオナルド・イタリー、エレットロニカ、アビア エアロ、MBDAイタリー)テンペストプログラムのパートナーとなり、「テンペストプログラムを含む、航空戦闘能力の強化で両国が協力して必要な技術要素を開発し、プログラムの成功を確保するために強力な産業基盤を確立するという共通の願望を確認し、国内産業に依存する意向を表明した」趣意書(SOI、statement of intent)に署名を行ったことを発表した。テンペストにイタリアが参加したことによりテンペストプログラム参加国が持つ潜在的需要は400機程となり、ドイツ、フランス、スペインのFCASと同程度になった。イギリスではさらなるコストダウンを目指し、日本など戦闘機の開発を予定する国に関係者を送り込んでいる。
 日本は、2018年12月18日に閣議決定した中期防衛力整備計画にて、26中期防に基づく統合機動防衛力の方向性を深化させつつ、宇宙・サイバー・電磁波を含むすべての領域における能力を有機的に融合し、平時から有事までの段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とする、「多次元統合防衛力の構築」を目指すとして、平成31年度以降に係る防衛計画の大綱(30大綱)とともに公開された。5年間の防衛力整備にかかる金額は27兆円程度とされており、過去最大級のものとなっている。加速する少子高齢化と人口の減少、厳しい予算等の現状に適切に対応するため、あらゆる分野において陸海空の統合を推進する。また、主に冷戦期に想定されていた大規模な陸上兵力を動員した着上陸侵攻のような侵略事態への備えについては、最小限の専門的知見や技能の維持・継承に必要な範囲に限り保持する。
 陸上自衛隊については、26中期防に引き続き作戦基本部隊の改革を推進する。従来の師団・旅団から機動力を向上させた編制に変えた「機動師団(旅団)」の新編(本中期防期間においては1個師団と2個旅団が対象)、戦車については北海道と九州に集約するとともに本州の戦車部隊が保有する74式戦車を順次廃止し16式機動戦闘車を保有する「偵察戦闘大隊」に改組する。また、各種の弾道ミサイルに対する脅威に備えるため陸上配備型イージスシステム(イージス・アショア)を秋田県と山口県に配備としていたが、安全保障環境により柔軟かつ効果的に対応していくためイージス・システム搭載艦2隻を整備することとされた。南西諸島情勢については石垣島などの防衛空白域に離島対処部隊及び地対艦・地対空誘導弾部隊を配備する予定。
 海上自衛隊については、1隻のヘリコプター搭載護衛艦と2隻のイージス・システム搭載護衛艦を中心として構成される4個群に加え、多様な任務への対応能力を向上させた新型護衛艦や掃海艦艇から構成される2個群を保持するとともに護衛艦部隊及び掃海部隊から構成される水上艦艇部隊を新編する。
 航空自衛隊については、防空態勢の充実や効率的な運用を図るため、航空警戒管制部隊の増強ほか、戦闘機部隊1個飛行隊の新編に向け、必要な措置を講ずる。また、航空総隊隷下に宇宙領域専門部隊1個隊を新編する。
 特にF-2戦闘機の後継として日本主導の戦闘機開発を決定、2020年に三菱重工が開発主体に選定されF-X計画を始動させた。2020年12月、防衛省は技術開発を支援する海外企業として、アメリカ合衆国のロッキード・マーティンを選定する方針を示したが、 2022年5月、開発支援企業を英国のBAEシステムズへ変更する意向が明らかにされた。
 開発コストを削減する手段として、両方の戦闘機プロジェクトを統合する議論は、早くも2017年から始まっていた。2022年7月19日、英国政府は日本とイタリアと次期戦闘機の開発で協力を強化すると発表。2022年8月14日、日本の複数の政府関係者も、日英の次期戦闘機開発計画を統合し共通機体を開発する方向で最終調整に入ったと明らかにした。9月には、BAEシステムズ・テンペストの開発計画で英国と協力関係にあり、F-35を運用するイタリアの参加が検討されていると報じられた。

英国のEU離脱までの日英関係史年表

1587年 英国人航海者、西領カリフォルニアにてガレオン船を拿捕し、2人の日本人を乗せるが、1592年に遭難死

1600年 オランダ船リーフデ号が大分県に到着し、英国人航海者ウィリアム・アダムスが徳川家康の外交顧問になる
1613年 ジョン・セーリスが英国王ジェームズ1世の国書を徳川家康に提出。正式な国交が始まる
1623年 アンボイナ事件勃発により英蘭関係が悪化と貿易不振により、平戸の英商館封鎖、事実上断絶
1646年 英国国教会支持派ダドリー男爵の傍系である探検家のロバート・ダドリーがイタリアのアントン・ルチーニの共著で『海軍辞典』の日本地図発表
1673年 リターン号が来航して貿易再開を求めるが、徳川幕府はかつての一方的な撤退、チャールズ2世とポルトガルのカタリナ王女との婚姻問題を理由にこれを拒否。

1808年 フェートン号事件
ナポレオン戦争中、イギリス船による長崎・出島のオランダ商館襲撃事件。幕府の対英警戒態勢の不備が明らかになる。
1813年 初の英和辞典『諳厄利亜語林大成』が長崎で完成
1825年 異国船打払令発布
1835年 尾張国出身の音吉、ロンドンに訪問し帰化
1840年 アヘン戦争
1842年 異国船打払令を撤廃
1854年 クリミア戦争→日英和親条約
1858年 アロー戦争→日英修好通商条約
英国女王が、木造スクーナー型蒸気船エンビロル号を幕府に贈呈、砲艦「蟠竜丸」と改称。
1859年 英国総領事館開設
スコットランド人のトーマス・ブレーク・グラバーが長崎へ来日、以後幕末・明治の日本の政財界と深く関わる。
1862年 ロンドン覚書調印、生麦事件
1863年 薩英戦争→以後、薩摩藩・英国の関係回復
1864年 下関戦争
1868年 明治維新
1870年 英海軍を元にした大日本帝国海軍成立
1872年 岩倉使節団、英国に来訪。
1879年 音吉の息子、日本国籍を獲得
1886年 ノルマントン号事件=日本人乗客25人死亡
→不平等条約改正要求強化
1887年 英国人弁護士フランシス・テイラー・ピゴットが来日し伊藤博文内閣の法制顧問となる
1894年 日英通商航海条約→治外法権撤廃
1896年 アイルランド人のラフカディオ・ハーン、イギリスから日本へ帰化し、小泉八雲を名乗る

1900年 夏目漱石、ロンドンへ留学。義和団の乱
1902年 日英同盟締結
1904年 日露戦争
1907年 伏見宮貞愛親王が明治天皇へのガーター勲章授与感謝のため渡英し、エドワード7世に拝謁
1908年 東京の"Peer's Club"で日英協会が初会議
→グラバーが外国人初の勲二等旭日重光章を受章
1909年 三菱合資会社三菱造船所、英国からハンマーヘッドクレーンを購入
1911年 日米通商航海条約調印。
→日本が関税自主権を回復、不平等条約を完全解消
1914年〜1918年 第一次世界大戦
1918年 シベリア出兵
1919年 パリ講和会議→先進国五大国入り
→日本、「人種差別撤廃条項」提案、濠太剌利が拒否
1921年 四カ国条約→日英同盟廃止決定
1923年 日英同盟が正式に失効
1926年 蔣介石が国民革命軍を率いて行った北伐に対して、幣原喜重郎外相は内政不干渉の方針に基づき、アメリカとともにイギリスによる派兵の要請を拒絶。英国の日本への不信の端緒となる。
1930年 ロンドン海軍軍縮会議→統帥権干犯問題
1937年 日中戦争、米英は支援しながらも中立
→日本、米英を敵視し始める
1939年 第二次世界大戦→日英関係険悪化
1940年 浅間丸事件→日本、反英感情増加
=日独伊三国同盟、日本が枢軸国に加盟する
1941年 日英通商航海条約破棄、ABCD包囲網
→太平洋戦争が開戦︰マレー戦線にて交戦
1943年 英国、カイロ会談
1945年 英国、ポツダム会談→GHQに英国参加。
1948年 ロンドンオリンピック、日本不参加
1951年 サンフランシスコ条約、日英関係正常化
1953年 明仁親王、エリザベス2世戴冠式に参列
1960年 日英文化協定締結
1964年 東京オリンピック開催
1966年 英国海外航空機空中分解事故が発生
1969年 ジョン・レノン、オノ・ヨーコと再婚
1971年 昭和天皇・香淳皇后がイギリスに行幸啓
1975年 エリザベス2世、訪日
1986年 日産自動車、英国北東部で本格稼働開始。
1990年 スカパー!がBBCのテレビ放送を開始。
1998年 外交関係樹立140周年を記念して「英国祭98」のイベントが各地で催された。
2001年 ルーシー・ブラックマン事件
2003年 イラク戦争
2005年 日本に帰化したC・W・ニコル、大英帝国勲章(MBE)を受章
2007年 リンゼイ・アン・ホーカー殺害事件
2008年 UK-JAPAN 2008→国交樹立150周年
2012年 戦略的パートナーシップの構築に関する共同声明を発表、日英防衛協力覚書を署名
2014年 日本がNSCの閣僚会合にて防衛装備移転三原則に基づき、日英共同研究を承認
2017年 日英物品役務相互提供協定
2020年 英国、EU離脱→日英EPA署名

今後の日英関係に関する持論

 日英関係はここ数年大きな進展を遂げ、これまでにない高い水準に達し、どの時代よりも緊密な関係が築かれていると強く感じている。上述の通り、英間には、非常に長い交流の歴史がある。19世紀中頃から、日本が近代の世界と対外的な関係を始める中で、最も緊密な関係を築いたのが英国であったことは間違いない。(戦時中のことを抜きにしても)それ以来約170年にわたり、日英間の交流の蓄積があって、これまでも様々な分野で、両国は幅広く、深い関係を構築してきたが、特にこの数年、その関係はさらに大きな発展を遂げたと言えると思う。
 その大きな理由の一つが、英国のEU離脱、いわゆる「BREXIT」だ。2020年1月31日を以てBREXITが実現し、その後しばらくは離脱協定に基づいてEUの法律及び制度が暫定的に適用されていたが、それも同年12月31日をもって終了し、2021年からは完全に「EUではない英国」として新しい形で国際社会に船出した。その過程において、英国は、EUとはまた別の親密なパートナーを探すようになった。その中で、交流の歴史と蓄積を有する日本が、その求めに非常に積極的に応えてきた、それが両国関係発展の一つの理由であると考える。
 更には、日英両国が、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有していること、G7メンバーとして共通の戦略的利益を有していること、そして、どちらもアメリカとの関係を特別なものとしながら国際社会での舵取りを行ってきた国である、という背景もあると思う。
 以上に加えて、もう一点付け加えるとすれば、英国の対中姿勢の変化だろう。日英両国のパートナーシップは、経済面ではかねてから強固なものだが、2010年から2016年のキャメロン政権の下では、いわゆる「英中黄金時代」が唱えられ、中国からの資金や技術を通じて英国経済を再活性化させる方針がとられた。そのような中では、どうしても日英間のパートナーシップは経済面に限られ、戦略的なものとなることが難しかった。
 しかし、2016年に成立したメイ政権、その後のジョンソン政権、トラス政権、直近のスナク政権という一連の保守党政権の下で、英国自身の対中認識が大きく変わり、英国は、欧州諸国の中で最も厳しい対中認識、そして対中姿勢を持つ国になった。こうした中で、日英両国のパートナーシップは経済面からより幅広い分野へと拡大し、特に安全保障・防衛面での協力が大きく進展し、真に戦略的な関係となることが出来た。
 以上のような背景の下で、ここ数年急速に進展して来た両国関係の一つの目に見える到達点が、2023年5月に広島で開催されたG7サミットの機会に、当時の岸田総理とスナク首相が発表した「広島アコード」だ。正式には、「強化された日英のグローバルな戦略的パートナーシップに関する広島アコード」と言うが、この中に非常に具体的に示された諸点は、広島アコードの発表後も、しっかりとフォローアップされている。
 そして、もう一つ目に見える象徴的な到達点が、令和6年6月に行われた天皇・皇后両陛下の国賓としての英国御訪問だ。両陛下の国賓としての英国御訪問は26年ぶりとなったが、日英関係が発展する中で、まさしく両国関係の緊密化を象徴する、歴史的な出来事となった。
 このように日英関係が高い水準に達した中で、私自身も当地で英国の有識者とお会いすると、日英は「もはや同盟国同士の関係と言って良い」とか、「1902年の日英同盟以来の関係になった」等、様々な言われ方がなされるのを耳にする。これらは全て、まさに現在の両国関係の水準の高さを示しているものであり、私自身大変嬉しく受け止めている。
 英国では、今年7月に4年半ぶりとなる総選挙が行われ、それまで野党第一党であった労働党が圧勝し、14年ぶりに、労働党の下でのスターマー党首を首班とする政権が生まれた。逆に、それまで政権与党であった保守党は議席を3分の1に減らすという惨敗を喫し、政権の座から降りました。
 こうした新しい英国の国内政治情勢の下で、新政権を担うスターマー首相は、まずはこれまで保守党政権、とりわけジョンソン政権及びトラス政権の期間にぎくしゃくしていたEUとの関係改善に乗り出している。今後、英国とEUの間でこれまで見られていた難しい関係が改善に向けて動いていくことは、間違いないだろう
 しかし、その関係がどこまで進展するのか、どのような形になっていくかについては、まだ現時点で具体的な形では見通せない。現在より関係が緊密になり、協力分野が増したり共通のルールを取り入れたりすることは間違いないが、新政権が英国とEUの間でBREXITの際に決めた離脱協定あるいは貿易協力協定、そして離脱協定の一部をなす北アイルランド議定書に関する「ウィンザー・フレームワーク」の修正にまで及ぶのか、更には、英国とEUの関係をもっと抜本的に改め、例えば関税同盟のような関係に向けて近づいていく意図まで有しているのかについては、現時点ではまだ分からない。

 ただ、重要なことは、今回の総選挙の結果を見ると、労働党を支持し、同党に投票した人が、2016年のEU離脱に関する国民投票において離脱を支持した人と残留を支持した人の双方から構成されることがはっきりとうかがえるということだ。したがって、スターマー政権としては、EU離脱の是非について表立って述べることは政治的に得策ではなく、その問題に踏み込むことは困難だろう。更に、EU再加盟を進めるということも、政治的には容易には触れることができないだろう。
 7月に成立したスターマー政権は、EUとの関係改善に取り組むとともに、国際社会の喫緊の課題であるウクライナ情勢と中東情勢の問題に多くのエネルギーを割いている。このため、我が国を含むインド太平洋との関係の緊密化には、まだ本格的には動き出せていない
 一方、日本では、10月に就任した石破総理の下、新内閣が成立し、衆議院選挙が行われたところです。こうした中で、これからの課題として、日本とスターマー政権が、双方の新しい指導者の下で、両国間のパートナーシップを維持発展させさらに緊密なものとしていくこと、特にインド太平洋地域での英国との協力を不可逆的なものにしていくことが求められている
 国際情勢が厳しさを増す中で、日英がそのパートナーシップをより強固なものとし、国際社会の様々な局面で協力しながら対応していくことは、両国にとって、必然的な選択である。これは、今後も変わることはなく、むしろその必要性は高まっていくことになるだろう
 そのためには様々な協力分野があり、外交・政治、安全保障・防衛、経済・ビジネスという分野はもちろんのこと、これに加えて、学術、教育、文化、スポーツ、観光といった多岐に渡る分野で両国関係を一層前進させていくことが必要だ。
 ..............英語も、なくなると不便ですしな。



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