次男の母子分離不安
この4月に特別支援学校高等部に入学した次男は、重度知的障害を伴う自閉症である。
この学校には、小学部1年の頃からお世話になっている。
今まで担任に恵まれていたのか、ルーティンとして学校に行くことが身についていたのか、学校に行き渋ることはなかったのだが、今年(令和4年)になってからは登校を渋るようになってきた。
原因として思い当たるのは、家族の変化。
この4月から長男は進学のため家を出たのだが、去年の12月頃からずっと、受験やその準備、入学手続き、引っ越し等でバタバタしていた。
小さい子どもは家族や環境の変化に敏感だ。
発達年齢3歳程度の次男も、言葉には表せないが「にーちゃんの様子がおかしい」「にーちゃんがいなくなった。なぜだ?」ということを感じていたのかもしれない。
朝、次男に学校へ行こうと声をかけて制服を着せようとすると「イヤ!」と言って着たがらなかったり、制服は袋に入れて持って行き体育着で登校したり、制服も体育着も「イヤ!」と言って着ず、「家から一歩も出ない!」と粘りに粘って時間がたち、諦めて学校を休んだこともある。
「もう学校はいいから、おでかけしよう」と次男を騙して車に乗せ、大急ぎでリュックに必要なものを詰めて学校に連れて行ったこともある。
学校に着いたから安心というわけでもない。
車から降りないこともあるのだ。
呼びかけてもダメ。担任の先生が来てもダメ。私だけ先に校舎に向かい、危険なことがないよう見守って車から降りるのを待ってもダメ。
…で、結局学校の敷地内にいながら学校を欠席してしまうことも何度かあった。
学校側でもいろいろ対策を考えてくれて、あの手この手で次男を学校に連れていくことに力を尽くしてくださった。
何故こんな風になってしまったのか?
私と学校、放課後等デイサービス、支援相談員とを交えてケース会議が行われた。
次男の様子を情報共有し、次男に関する困りごとをどうしたら改善できるか話し合う場だ。
次男の今の状態は「母子分離不安」といえるようだ。
「母子分離不安」は原因にストレスがあるが、考えてみれば高等部に入って教室が(位置も向きも)変わり、先生が変わり、給食を食べる場所が変わった。(中学部までは食堂に集まって全体で食べていたが、高等部はそれぞれの教室になった)
それに加え、長男が家にいない。
次男にとってはかなりのストレスだと考えられる。
この母子分離不安を少しずつ軽くするために、親子登校をしている。
次男だけでなく私も校舎に入って、授業の様子を見守る。
慣れてきたら、少しずつ私が離れている時間を増やす。
離れて、次男から姿が見えないようにする時間を増やす。
私が側にいなくても大丈夫な時間を増やす。
次男の限界がきたら、下校する。
いまのところ、11時過ぎが限界のようだ。
次男の体調や気分によっては、長い間離れられるときもあれば、短い時間で「かーちゃんはどこ?」と落ち着きなく探し回るときもある。
3歩進んで2歩下がる。
土日を挟んで振出しに戻る。
機嫌よく1週間通えたと思えば、次の週は月曜から水曜まで学校の敷地内にいたのに欠席になった。
障害児を育てるのは根気がいる。焦っちゃいけない。
…とはいえ、親としてはあまりのんきにもしていられないと思う。
今年の2月に、私は急な体調不良で救急搬送された。
それ以降、定期的な診察と服薬を必要としている。
あと少しで、処方された薬がなくなる。
できればその前に長い時間(私が診察を受けて処方薬を受け取るまでの時間)離れていられるようになって欲しい。
私が再び倒れるようなことのないように。
次男が私のことで不安にならないように。
学校では、次男が落ち着いて見通しを持って活動できるように次男独自の時間割を作ってくださった。
次男がイレギュラーなものを苦手とする特性を持っていることを理解した上での配慮だ。
母子分離不安が解消され、次男が安心して学校で過ごせるようになるまでの間、これは続けられる。
次男が学校に私なしで最後までいられるようになるのは、いつになるだろうか。