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【薬剤師監修】円形脱毛症の治療薬をガイドラインに則って紹介!推奨度が高いものを厳選
円形脱毛症にはさまざまな治療薬がありますが、大事なのは「科学的な根拠とエビデンス」です。
それらが乏しければ、時間やお金を無駄にしてしまうことになりかねません。
この記事では、科学的な根拠とエビデンスに基づいた円形脱毛症の治療薬に着いて解説します。
「円形脱毛症診療ガイドライン2017」について
円形脱毛症診療を治療するには、「円形脱毛症診療ガイドライン」に則った方法がおすすめです。
「円形脱毛症診療ガイドライン」は日本皮膚科学会と毛髪科学研究会が共同で編纂したもので、円形脱毛症治療を科学的な根拠とエビデンスを用いて解説してくれています。
個人のブログやYouTuberが発信する情報を鵜呑みにしてしまうと、改善しているような気になるだけでなんの解決にもなりません。
また、円形脱毛症とAGA(男性型脱毛症)は似ているようで原因などが異なるため、治療方法も大きく違います。
以下のような症状が見られた場合、円形脱毛症ではなくAGAの可能性が高いので注意してください
年々徐々に髪の量が減ってきている
抜け毛が小さく細い
生え際の後退が見られる
AGAの治療法に関しては、こちらの記事をご覧ください。
参考
円形脱毛症で推奨されている治療薬:外用
「円形脱毛症診療ガイドライン2017」では、治療の推奨度が5段階で分類されています。
A:行うよう強く勧める
B:行うよう勧める
C1:行ってもよい
C2:行わないほうがよい
D:行うべきではない
「A」とされている治療薬はありません。
ここではB、もしくはC1の治療薬を紹介します。
ステロイド外用
ステロイドの外用は「円形脱毛症ガイドライン2017」において「B:行うよう勧める」と定められており、このように推奨されています。
単発型から融合傾向のない多発型の円形脱毛症に対しては,1日1~2回の strong,very strong,strongest クラスのステロイド外用療法を行うよう勧める
「strong」「very strong」「strongest」というのは、ステロイドの強さを示します。
ステロイドは非常に作用が強い治療薬であるため、効果によって5つのランクに分けられているのです。
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「Weak」〜「Strong」は市販で購入できますが、ステロイドは副作用のリスクもあるため、使用する際はかならず医療機関を受診してください。
カルプロニウム塩化物
カルプロニウム塩化物の推奨度は「C1:行ってもよい」で、推奨文がこちらです。
単発型および多発型の症例に併用療法の一つとして行ってもよい.
カルプロニウム塩化物は「フロジン外用液」などといった製品名で処方されている治療薬で、血管を拡張し血流促進を促す効果があります。
ただ、臨床試験データなどを見てみても、円形脱毛症の治療薬として十分な効果は現れていません。
「円形脱毛症ガイドライン」で「C1:行ってもよい」とされているのは、保険適応と高い安全性が理由です。
以上のように,カルプロニウム塩化物の有益性は,現段階では十分に実証されていない.しかし,保険適応があることや本邦における膨大な診療実績により安全性が担保されていることも考慮し,単発型および多発型の症例に併用療法の一つとして行ってもよい.
円形脱毛症で推奨されている治療薬:内服
円形脱毛症の治療では内服薬が用いられることもあります。
ただし、「円形脱毛症ガイドライン」ではすべてが「C1:行ってもよい」であり、あまりおすすめはされていません。
ステロイド内服
ステロイド内服の推奨文がこちらです。
ステロイドの内服療法は,発症後 6 カ月以内で,急速に進行している S2 以上の成人症例に使用期間を限定して行ってもよい.休薬後の再発率が高いことより,ステロイドの外用・注射などの他標準的治療に抵抗する症例に検討する.
注意すべき点は再発率の高さです。
短期間では効果があるものの、長期的な回復を期待できるエビデンスはない、と報告されているので注意してください。
抗ヒスタミン薬
抗ヒスタミン薬の推奨文がこちらです。
単発型および多発型の症例に併用療法の一つとして行ってもよい.
抗ヒスタミン薬には2種類あります。
第一世代抗ヒスタミン薬
第二世代抗ヒスタミン薬
このうち、「AGAガイドライン」において根拠を認められているのは「第二世代抗ヒスタミン薬」です。
ただ、円形脱毛症に対する保険適用がないので注意してください。
セファランチン内服
セファランチン内服の推奨文がこちらです。
単発型および多発型の症例に併用療法の一つとして行ってもよい.
こちらは「弱い根拠」と紹介されています。
ただ、保険適応があることから推奨度は「C1:行ってもよい」です。
グリチルリチン,グリシン,メチオニン配合錠
グリチルリチン,グリシン,メチオニン配合錠の推奨文がこちらです。
単発型および多発型の症例に併用療法の一つとして行ってもよい.
こちらは臨床試験のデータが少ないものの、「セファランチン内服」と同じで、保険適応や安全性の面で「C1:行ってもよい」となっています。
円形脱毛症の治療薬投与以外の治療法
「円形脱毛症ガイドライン」では、治療薬投与以外の治療法も推奨されています。
こちらは「B:行うよう勧める」「C1:行ってもよい」に分かれています。
ステロイド局所注射療法
ステロイド局所注射療法は「B:行うよう勧める」で、推奨文がこちらです。
S1以下の単発型および多発型の成人症例に行うよう勧める
推奨度は「高い」とするものの、「いくつかの報告において有害事象として局注部位に萎縮や疼痛,血管拡張が報告されており,十分な注意が必要である.」とも解説しています。
つまり、効果は高いものの、注射した部分がへこんでしまったり痛みを伴ったりしてしまう恐れもあるのです。
また、効果が見られるのは「注射したポイント」だけで、広範囲になる場合には向いていないと考えられています。(参考:日本皮膚科学会)
局所免疫療法
局所免疫療法も「B:行うよう勧める」で、推奨文がこちらです。
年齢を問わず,S2 以上の多発型,全頭型や汎発型の症例に第一選択肢として行うよう勧める.
円形脱毛症治療において「現在最も有効な円形脱毛症の治療法」とされているのが局所免疫療法です。(参考:日本皮膚科学会)
「有効率は60%以上」と高い効果がある一方で、保険適応が認められていない点に注意してください。
また、人によっては以下の副作用を引き起こす恐れがあります。
接触皮膚炎症候群
局所のリンパ節腫脹
頭痛
倦怠感
蕁麻疹
色素沈着
色素脱失
冷却療法
冷却療法は「C1:行ってもよい」で、推奨文がこちらです。
単発型および多発型の症例に併用療法の一つとして行ってもよい.
「冷却療法」はドライアイスなど液体窒素を患部に押し当てる治療法です。
広範囲を治療できる一方で、根拠は「低い水準」であり有用性も「十分に実証されていない」としています。
紫外線療法
紫外線療法は「C1:行ってもよい」で、推奨文がこちらです。
症状固定期の全頭型や汎発型の成人例に対して PUVA 療法を行ってもよい.また,すべての病型の患者に対してエキシマライトまたは narrow-bandUVB 療法を行ってもよい.
紫外線療法は「痛みがない」というのがメリットです。(参考:こころ皮ふ科クリニック)
一方で、保険適応がなく、「円形脱毛症ガイドライン」においては「現段階では十分に実証されていない」「弱い根拠」とされているので気を付けてください。