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眠いしやる気もない日|2月8日(土)堀敦詞
12時前くらいに起きる。寒波が来ているとかでさいきんすごく寒くて、たぶん一年でいちばん寒い時期なのだろうと思うから、そういうときくらいはずっと暖かくして家に居ればいいよなと思う。だから窓の外にきれいな澄んだ青空が広がっていて、外に出たら気持ちがよさそうな土曜日の午前中を布団の中で過ごしてしまったとしても、別にそんなに落ち込まない。だけど睡眠時間が延びていることは少し気になっていた。きのうは何時に寝たかというと、たぶん、1時くらい。11時間くらい寝ているかもしれず、それなのに、たぶんこのあとお昼ごはん(?)を食べたらまた眠気がくる。さいきんずっとそうだ。大丈夫なのだろうか。加齢? 加齢ってこんなに急に来るものなのかしら
食事をつくる。ごはんを炊いてラップに包んだものをAさんの家から持ち帰ってきていたので(僕の家には炊飯器がない)、米に合うものをと、大根とえのきと鶏もも肉をみりんと醤油で炒める。このごろ野菜がとても高い。白菜とか小松菜とか大根とか、定番の安い野菜たちが250円とか300円とか、大根なんて3分の1カットで150円くらいすることがある。しかし大根ははずせない。
さいきん好きなメニューができて、大根をサイコロ状に切って、タレとカラシを入れた納豆と一緒にかきまぜて、ごま油をかける。味が薄かったら醤油を足す。というやつで、それをサラダ感覚で食べている。うまい、発明だ!と食べるたびに思うのだけど、バカ舌だと僕はよく言われるので、一般的にどうなのかはわからない。
眠くなる。ごはんの間だけ…とYouTubeでラランドの下品な動画を見たりしていたら、頭がぼーっとしてきて、そのまま船を漕いでいた。
症状をググってみる。寒さのせいでは?という仮説もあるので、「冬」、「眠い」で検索する。「冬季うつ」というのがわらわらヒットした。いくら寝ても眠気がおさまらなくて、甘いものが過剰に食べたくなるという。合っている。そういえば甘いものがさいきん止まらないのだ。冬季うつということにしてしまいたい、というケチな気持ちが、とたんに湧いてくる。そうか、冬季うつだから眠いのだし、甘いものをたくさん食べてしまうのだし、何もしたくないのだ。
(でも、肝心の鬱っぽさは、あんまりない。)
夕方に少し仕事をしなくちゃいけないのだった。眠たい頭のまま、外に出る。なんか、パジャマにコートを引っ掛けたような気分で電車に乗りこむ。
来月と再来月に新しい人が一人ずつ入ってくるので、作業デスクを少し配置変えしますという話が先輩からある。僕は空間の隅っこから真ん中らへんに移動することになりそうだった。空調が効きすぎない場所だといいなと思った。いまの場所はエアコンの風が直であたるので夏も冬もつらいのだ。
2、3時間仕事をして退社する。どこかに寄って、小説を進めなければいけないと思うのだが、ここ何日かうまく進まなくなっていて、それに向き合いたくない。やる気が出ない。やる気が出ない、ということをまず、いさぎよく認める。そして実際、そういうときに無理をしてもあまりうまくいかなかったりするよな、とかぶつぶつ思う。
犬の散歩にいく。いつのまにか夜である。
寒い。いっそ雪が降らないかな。日本中で雪が降ってるらしいのだから東京でも降ってくれたらいいのにな、と思いながら歩いて帰る。去年の11月に盗まれた自転車はまだ出てこない。あれ以来、山崎まさよしの歌のような状態でそこらじゅうの自転車を無遠慮に見てしまうようになった。もしや、と思って近づいてしまうときもある。でも、そんなところにあるはずもなく、実際にない。
「きょう、めちゃくちゃあついね」
と話している二人の若い男の子とローソンの前ですれ違う。
「寒い」を「暑い」に言い換えるゲームをして寒さを紛らわしているのかな?と思ったけど、
「うん、めちゃくちゃあつかった」
と興奮気味に、しみじみと言い合っているので、きっと彼らにとって熱い出来事が何かあったのだろう。なんか、幸せそうだ。
帰って映画でも見る。難しいことは考えられそうにないので、「酔拳2」を見ようと思ったのだが、なんとU-NEXTには吹き替えがなかった。「酔拳2」を字幕で見る気はない。ジャッキー・チェンで探すと、「プロジェクトA」ならあったので、初見だけど、だらだらと見はじめる。
冒頭からべらぼうにおもしろく、笑いながら見る。「酔拳2」にはたしか、けっこう悲しい場面があった気がするから、「プロジェクトA」にして正解だったかもしれない。でも案の定、途中で寝てしまったので、まだおしまいまでは見ていない。
堀敦詞
愛知県出身。風邪を引いてしまい、現在もだらだら寝ている。
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