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夏が急に殺された件について
夏が急に殺された。
あれほど世間を阿鼻叫喚に陥れ、"この世をば我が世とぞ思う云々"と言いたいばかりに、でんと居座った今年の夏が、あっけなく殺された。
9月20日 金曜日。
夜明けに訪れた豪雨が、夏を綺麗さっぱり洗い流してしまった。
それ以来、肌を焦がすような日差しは刃を潜めた。夕方に外に出れば、昼間の温かな空気は一切存在しておらず、ただただ身を震わせたくなる涼しさである。
夏よ。あまりにあっけなくはないか。
先週はまだ真夏日だったではないか。
初めて日比谷野音でライブをするバンド。そのグッズを買いに炎天下の中、3時間も並び、「全然、暑いじゃん!」とキレ散らかしていた私はなんだったのだ。
あれから、1週間も経たぬうちになんだ。何があった。どうして消えた。急すぎる。
それゆえ、殺されたという突然な表現を使っているのだ。
夏は殺された。次なる季節に殺されたのだ。
じわじわと安楽死するのではなく、一気に喉元を刺されてしまった。
もしも、昔のようになだらかに季節が変わっていくのなら、夏の終わりに別れを惜しむこともできたのに。急に爆発して、急に消えるだなんて、線香花火のようであまりにあっけなくはないか。
はっきり言う。私は夏があまり好きではない。
だが、こうも急にいなくなられてみろ。今は少し名残惜しいばかりである。