クルマ好きにゴミ扱いされるトヨタ・ルーミーが、なぜこんなに大衆にバカ売れするのか
トヨタ・ゴーミーというありがたくない渾名
それでもなぜか売れているルーミー
トヨタにルーミーというミニバンがありまして、それが大変に売れているそうです。2022年4月は、ホンダのN-BOXに続き2位。普通車ではナンバーワンだそうです。
いっぽうで、この車はいわゆる「車好き」からは否定されることが多く、とくに動力性能や質感が不足していると言われるようです。
それでもなお、コレだけの販売台数を誇るのはなぜなのでしょうか。新車の納期が長期化する中、比較的納期が短いから売れているだけなのでしょうか?それ以外にもきっと理由があるのでは?というのを考えてみました。
走行性能が低いのになぜ売れるのか
ルーミーは「高速の合流とか追い越しで不安を感じ」るレベルで動力性能が低い、という意見が結構ありました。個人の主観や感覚もあると思うので、データで検証してみましょう。
車の動力性能の一つの指標として、パワーウェイトレシオ(車の重量をエンジンの馬力で割ったもの:略称PWR)があります。
コレを見てみると、ルーミーの2駆NAのパワーウェイトレシオは15.507kg/PSなんだそうです
(※2駆=前後の車輪のどちらかだけに駆動力が伝わるもの。4駆=4WDは前後に駆動力が伝わる。雪国などで重用されるが、重いし燃費が悪化する傾向があります)
(※NA=ターボというパワーを上げる装置がついてないもの、安価で燃費が良い傾向があります)
これと近しい数値の車を例に上げると
あたりになるようです。
たしかにN-BOXのターボ2駆であればPWR14.531kg/PSと、ルーミーよりも少しは勝るようですが…大差ないように感じます。
そもそもユーザーが自分の満足する動力性能のモデルを選べば済む話ですね。ルーミーにもターボモデルがありますし(PWR:11.224kg/PS)
トヨタ・ルーミーが動力性能として「高速の合流とか追い越しで不安を感じ」る人は、いまの新車の軽自動車や、ネオクラと呼ばれる平成のファミリーカーにも同じように不安を感じるのでしょうか…?
どちらかというと、
あまりにも販売台数が多くてよく見かける
リテラシーが最底辺なレンタカーやカーシェアが多い&そもそもターゲットユーザーのリテラシーがそこまで高くないので追い越し車線に居座ったりするのを見かけることが多い
からの
「ルーミーのせいで渋滞が発生してる!!!」
「あんな背が高いミニバンなのに1000ccでターボがないなんて!絶対に遅い!!!」
という認知バイアス・思い込みが多いのかもしれません。
そもそもリテラシーが高いユーザーは乗ってる車の動力性能を理解して運転するのでむやみに追い越し車線に出て来ないし、リテラシーが高くないユーザーは動力性能に関係なく追い越し車線を塞いでしまうでしょう。
そもそも、こういうルーミーのようなクルマを買うファミリー層からすれば、走行性能よりも車内で子供を着替えさせたりおむつを替えたり、キャンプ道具をいっぱい積めたり、足腰の弱い両親をお墓参りへ快適に送迎できる方が格段に価値があるのではないか、と思います。
軽トールワゴンやスズキのソリオもあるのに、なぜ売れるのか
よくある批判として、動力性能が求められないトールワゴンなら軽自動車でいいのでは?というものです。たしかに軽トールワゴンであるN-BOXは普通車も含めた販売台数でもナンバーワンですね。
そして、ライバル車である「普通車の」トールワゴン、スズキのソリオの方が走行性能や質感が高いと評価されることも多いようです。
これについては、やはり軽自動車やスズキを「メインの車」として所有したときの、町内会や同級生の親たち、親戚など「世間」からの目があるのではないかと思います。
ルーミーが3気筒エンジンで振動が多い、走りの質感がスズキよりも劣ったとしても、世間は「ちゃんとトヨタの普通車に乗ってる人」としてみてくれるわけです(これはパッソが爆発的に売れたのと構造はにているかもしれませんね)
世間の目、恥という目線も含めないと「ユーザーが購入する理由」は見えてこないかもしれませんが、そういったもの普段からが欠落しているオタク・玄人は多いのかもしれませんね…
リアシートが(3人乗るのには)狭いのになぜ売れるのか
コレもよくある批判なのですが、ルーミーのリアシートについてです。
横に大人が3人乗るには狭すぎる、とくに中央席はシートベルトの位置的に実用性は皆無、というものです。
またリアシートの座面が固すぎるという指摘もあるようです。
コレに関して言えば、ほとんどのユーザーにとって
というのが実情なのではないか?と思います。
メーカーもそれを見越して、割り切るところは割り切っているだけでしょう。
なお、ルーミーがスズキのソリオの対抗馬として短期間に設計された「パクリ車」「煮詰め不足」という指摘もありますが…
もともと超トールワゴンは(トヨタの子会社であり、ルーミーの製造元でもある)ダイハツが出したタントが源流だと思います。
また、短い設計期間も「トヨタブランドの『ソリオ』が欲しい」というユーザーに真摯に応えたもの、と自分は評価したいです。
「ゴミ」なのはルーミーなのか?それとも…
ルーミーが売れる理由、まとめ
このように、できるだけユーザー目線で考えつつ、きっとメーカーはユーザー目線でものづくりをし、それが評価されているのでたくさん売れているのだろう、という前提のもとで「ルーミーはなぜ売れているのか」を考えてみました。
結果として、少なくとも「ゴーミー」などと揶揄できるクルマではなく、ユーザー目線で求められるものとそうでないものを分析し、適切に取捨選択して作られたクルマだと自分は感じました。
ルーミーが売れる理由を考えず「ゴミ」という車好きこそが…
結局のところ、ルーミーを否定するというのは「自分乗ってる車のほうが出来が良いし、そんな車に乗ってる自分の方が格が上」と信じたい人たちの願望によるものなのでは?と思ったりします。
僕も車好きの一人ではあるのですが、世間の「普通」から外れていることを忘れずに考えて行動しないとなー、と最近良く自省します。
たしかに高速道路の追い越し車線をチンタラ走って渋滞の原因になるルーミーのようなファミリーカーにイラつくこともあるものの、彼らは車好きではなく、家族と帰省したり買い物に行くために「仕方なく運転している」わけで、高いリテラシーを求めるのは酷かなと思います。
しかしそんな彼らも、きちんと新車を買って、結婚してお子さんを儲けられて、少子化対策に貢献して、経済を回してきっちり納税もしているのでしょう。
多少車の知識や運転のリテラシーがあったところで、中古車しか買わない独身の私は彼らと比べて「社会に貢献している」と断言はできないし、まして見下したりすることは出来無いな、と思います。
オタクや玄人は社会に寄生して生きているのでは?と言う話
自分のような「世間の『普通』から外れている」オタクが、平和に趣味を楽しめているのは、結局のところリテラシーが高いとはいえない大衆や、彼らに向けて作られた商品やサービスのおかげなのだと思います。
そういった意味で、我々オタクや玄人は(よほどの富豪でない限り)社会に寄生していると言っても過言ではないかもしれません。
中古のファミリーカーを所有して楽しめるのはもちろん、ほぼすべてのスポーツカーは「大衆車」の利益や技術がなければ生まれてこなかったでしょう。
例えば日本の道路網や道の駅が整備されているのは「頻繁に一日に何百キロも走って車中泊するような距離ガバ勢」や「一般道を攻めるオタク」ではなく、極稀におでかけする家族連れのサンデードライバーや、そもそも大衆が遠出しなくてもいいように物流を支えるトラックドライバーを「主に」ターゲットにしているのでは?と思います。
社会からゴーミー扱いされたくないね、というオチ
世間で大衆に売れているものを見下して「自分はそんなものを買わない、違いのわかる玄人だ」とほくそ笑んでいるのは自由だと思います。
ただ、そんな大衆に向けて真剣に作られた製品やサービスを「ゴミ」と嘲笑ってばかりいると、いつのまにか社会に居場所がなくなって「ゴミ」扱いされてしまうのでは?と心配になったりします。
コレはまた別の記事で書こうかなと思っているのですが「他人の目線で物事を判断できない」ことは、社会の中での生きづらさの大きな原因なのではないかと感じています。
「クルマ好きにゴミ扱いされるトヨタ・ルーミーが、なぜこんなに大衆にバカ売れするのか」というタイトルのこの記事、最後までお読みいただき感謝です。
最後まで読んだ上で、トヨタ・ルーミーのようなファミリーカーと、それを「ゴミ」と揶揄して見下す人間、どちらが社会にとって「ゴミ」なのか、改めて考えてみていただければ幸いです☺
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