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MTのない新型フィットから見る、「ホンダはどこへ向かうのか」という話。
結局MTのない新型フィット
現行フィットにRSが追加されたけど、MTの設定は相変わらずなかったという話。
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— Honda 本田技研工業(株) (@HondaJP) August 5, 2022
2022年秋発売予定
「FIT」改良モデルを先行公開
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今回のマイナーモデルチェンジでは、スポーティーで精悍なグリルなど、デザインに磨きをかけた「RS」タイプを新設定!
走りの質にもこだわっています。
よりパワフルに進化したe:HEVなど、多彩な魅力は👉https://t.co/gyQH8ccdTD pic.twitter.com/tdhHDIrUoI
現行フィットがマイナーチェンジを受けて、スポーツグレードのRSを復活させたのですが、MT(マニュアルトランスミッション)の設定はなさそうです。
先代まではMTの設定があったので、一部から「MTを何故設定しないのか!?」という上がっているようです。
ただしこれは至極まっとうで、先代フィットで設定されていたMTのモデルは販売比率でいうと2%前後なんだそうです。そんな売れないものをお金かけて開発する意味がないわけですね…
フィットRSにMTが無いことにリプと引用でお気持ち表明してる人達に、何度でもこの数字見せてやりたい pic.twitter.com/vPGlnc2FOb
— コメート✩CR-V (@Detective_CRV1) August 5, 2022
そもそも現行フィット自体、少なくともこれまでのフィットのような「スポーティー」さを併せ持ったモデルというよりも、親しみやすさやリビング感を押し出したモデルのように思います。
そして個人的にとても残念ではありますが、ほかライバル車と比べて、強い商品力を持っているか?というとやや疑問に感じます。実際に、売上も(かつて新車販売台数トップを誇ったのが嘘のように)伸びていません。
2021年には軽自動車を除いた販売台数でもTOP10にも入っていなかったですね…フィットは。
— ひわいさん🐳 (@hiwai_rs) August 6, 2022
2022年7月の販売台数では(軽自動車を含んだランキングで)TOP10に入ってますね。
おそらく人気車種の納車待ち期間が長すぎて、不人気ですぐ手に入るフィットに客が流れてるのかもな、と思ったりしています。 pic.twitter.com/qmPTFBLZ6y
フィットのMTを新車で買う人間が存在するのか?という話
「普通のハッチバックじゃリアの居住性と積載性が足りない!フィットのMTは必要!!」という方もいるようですが、ほかにもいっぱいMTで居住性と積載性ある新車のラインナップがありますので…
— ひわいさん🐳 (@hiwai_rs) August 7, 2022
(ほかにマツダ6とかワゴンRとかもあるよ☺) https://t.co/ponCoL8vrx pic.twitter.com/XqRYQKevyq
そもそもスポーティー推しではなく、「人気車」とも言えないモデルに、MTモデルを追加したとしてメーカーの利益になるほど売れるとは思えないのです。
もし車を買うとして「MTで走りが楽しいコンパクト」を買うならヤリス、スイスポ、デミオ2がすでにあるわけです。
「MTで走りが楽しい、積載性も居住性もたっぷりほしい」というわがままな人もごく僅かにいるでしょうが、おそらくカングー、N-VAN、CX-5などのSUV、カローラツーリングやマツダ6のようなステーションワゴンを選べばいいでしょう。
「どうしてもフィットじゃなきゃいやだ!!」という人が日本に何人いるかわかりませんが、おそらく中古のフィットRSで十分カバーできるのではないでしょうか。
ホンダはどこへ向かうのか。
「モータースポーツで大活躍する、クリエイティブな自動車メーカー」はもはやホンダではない、という話。
手頃なスポーツカーとかMTで楽しいコンパクトカー、ぶっ飛んだ新ジャンルの車とかデザイン凝ったのも販売してる。
— ひわいさん🐳 (@hiwai_rs) August 7, 2022
世界中のモータースポーツで活躍している、でも環境に優しい車も出してる...
そんな超エンスーな自動車メーカー。
かつてのホンダの話でしょうか?いいえ、今のトヨタです。
かつて、世界中を探しても、ホンダほどモータースポーツで輝かしい活躍をして、クリエイティブで独創的なクルマを作る自動車メーカーはなかったかもしれません。一方でトヨタは「クルマに興味のない人向けの退屈な車を作る、熱意のないメーカー」のように言われていたように思います。
2022年現在、その立場は完全に入れ替わってしまったように思います。
いままで定評があった高い品質や耐久性はもちろん、超低燃費なハイブリッドシステムや消費者(≠オタク)の心を掴むデザイン・商品企画の商品を多数用意してガッチリ儲けつつ、おそらく世界一クルマ好きな社長のもとで幅広くスポーツカーなど趣味性の高い商品も用意し、世界中のモータースポーツでしっかり活躍している、世界的にも稀有なメーカー。それが今のトヨタだと思います。
魅力的な車を作るにはしっかり稼ぐ力が必要、という話。
散々トヨタは「儲かる車作るだけ、こだわりがない!」ってバカにされてきたけど、結局「こだわりの強い車」を作るには、きちんと儲かる車を作ることが何より大事だったわけですよ…市場調査と商品企画と生産性、稼ぐ力の強さが。
— ひわいさん🐳 (@hiwai_rs) August 7, 2022
魅力的なクルマを作るためには、稼ぐ力が何より重要なのだ、ということをトヨタを見ていて痛感します。魅力的なクルマとは、数値的な性能を達成する技術力に加えて、ユーザーの求めるものはなにか考える企画力も必要だと思います。
トヨタは両方の力をしっかりと強化して、ごく普通の一般ユーザーからマニアまで、幅広い層を満足させる商品をつくれる企業へ進化したのだと思います。
稼ぐ力と魅力的な商品を作る力、それぞれが車輪の両輪として「強い企業」に必要なのだと思いますが、今のホンダの場合はどちらも弱いように感じています。
その最たる例が今のフィットなのでは?と個人的に思います。果たしてどんなユーザーに、どんな体験をさせようとして企画・設計されたのでしょうか。
S660やNSXといったスポーツカーも作ってはいたけれども、これもユーザー層や体験づくりの幅広さがトヨタの作る商品と比べて足りていなかったのでは?と思います。
例えばトヨタ86は、若者のデートカーやスポーツカーへの憧れが捨てきれなかったおじさんの愛車としても成立しつつ、モータースポーツでもサーキットからラリーまで幅広く活用できました。中古市場でも豊富なタマがあり、社外部品や中古部品も多数入手できます。
一種の「社会現象」と言えるほど大きな市場を開拓し、利益も出しつつトヨタのブランドイメージの向上までもたらしたと思います。
S660やNSXにそこまでの商品力があったでしょうか。愚直に「かつてのビートやNSXを現代の技術で復活させよう」という単純な商品企画のもと作られたようにしか感じられません。
ダイハツ・タントをパクって参考に「もっとファミリーが喜ぶ軽トールワゴンを作ろう」というわかりやすい目標があればN-BOXのような魅力的で高い商品力を持つ車種を開発できるのが今のホンダですが、一方で自分から新しい商品ジャンル・市場を開拓するほどの企画力はないのでは?と感じています(かつてのホンダが得意としていた領域のはずなのに…)
「高級車にFFトーションビームなんてw」「他のメーカーのエンジン使うスポーツカーなんてw」「悪路走れないSUVなんてw」「3気筒のスポーツモデルとかw」
— ひわいさん🐳 (@hiwai_rs) August 7, 2022
みたいな批判もあったけども…そういう「こだわりが強い」けど金にならない人たちは黙殺しないと、会社が傾きかねないんだな…というお気持ち。
トヨタは一部のマニアからは「コスト最優先で手抜き」というような揶揄を受けてきましたが、その結果しっかりと稼いで魅力的な商品をどんどん出してモータースポーツで活躍しているわけです。
マニアが喜ぶような「こだわり」も、フタを開ければ「無駄なコスト」でしかなく会社が傾いてしまった…というのはいくつもの自動車メーカーで見られてきたことです。
「負け犬」からどう脱却するか、という話。
今の自動車メーカーを見渡すと、コンパクトからセダン・ミニバンはてはスポーツカーからピックアップトラックまで、あらゆる車種を展開する――いわゆる「フルラインナップ」が出来ている元気なメーカーはトヨタだけでしょう。
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ほかメーカーは得意分野に注力し、ほかは他社のOEMでまかなう傾向です。
ダイハツとスズキは軽とコンパクトの専業に、マツダは美しいデザインと走りの良いSUV中心のメーカーになっています。スバルは高い安全性とこだわりのAWDを推していくのでしょうか。
一時期は悲惨な状況だった日産・三菱も、前者はePowerやEVのコンパクトとSUVに注力し、三菱もPHEVやディーゼルのSUV&デリカ屋さんになっています。
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アリアの発表から、日産は一時期の低迷から完全に脱却したように感じます。
かつては「フルラインナップ」することこそが一流自動車メーカーの証…と言うなイメージがあった時代もあったかもしれません。
そんな変なこだわりやプライドを捨てて「選択と集中」をすることが、傾いた経営状況=「負け犬」からの脱却に絶対に必要な条件なのでは?と個人的に思います。
もはやどの自動車メーカーも生き残りをかけて真剣に危機感を持って取り組んでいます。一部の「こだわりの強いマニア」の署名運動や株主総会での戯言に耳を貸す余裕はなさそうです。
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もはや自社製品だけでここまで手広くやっているのは稀有な存在です。
考えてみれば、世界的に見ても「フルラインナップ」ができているメーカーはごく一部。他社と提携して、自社のラインナップを補完する方が「普通」なわけです。
まだまだ「100%自社製品」で幅広くラインナップしているホンダも、得意分野に注力して「稼ぐ力と魅力的な商品を作る力」を強化する時期なのでしょう。新しいステップワゴンやシビックを見ると、きっとその時期が始まったのではないか、と大いに期待できそうです。
もしかすると「MTのフィット」どころか「フィット」そのものが無くなる日が来るかもしれませんが、それは決して悪いこととは言い切れないのかもしれませんね。