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常原拓句集「王国の名」を読む

常原拓(つねはら・たく)さんは、1979年神戸生まれ。2016年「秋草」に入会。2023年に第7回俳人協会新鋭俳句賞受賞をされています。

句集「王国の名」は、2016年から2023年の句より、編まれています。序には、秋草の山口昭男主宰が文を寄せています。

心に残った句20選

無花果や退屈の色滲ませて
狡猾をマーガレットに隠しけり
罫線を無視して使ふ猫の恋
仙人掌に花あり胸に黒子あり
七種を王国の名にして遊ぶ
猫の仔になりたいやさしくなりたい
数式をきれいを思ふ緑夜かな
秋蝶のかげのぬるりとしてをりぬ
春愁のとてもきれいなふくらはぎ
俳諧の夜のくらさの屏風かな
夏に入るこつんと触れて膝と膝
車座に天文学者ゐて涼し
しぐれては月の光を浸らしむ
蚊遣火のやがて愉快となりにけり
子規の忌の大きな音のする電話
吐く息の白さを讃へあひにけり
鯉幟布に戻つてゐる時間
嘘ひとつ打ち明けてをる洗ひ髪
爽やかにロンドン橋の落ちにけり
蜩の不服な顔をしてをりぬ

常原拓「王国の名」(青磁社)

この句集では、ダリ、カント、ガリレオ…といった多くの著名人物がでてくるのですが、その合間合間にある日常のふとしたシーンの切り取りのような句に惹かれました。何かの取り合わせよりも、その事物を見つめることによって、内面的な部分も表出していくような感覚にとても共感をもちました。(そして、これらの句があることで、人物句にまた戻っていく感覚もあり。)

先にいただいた結社誌に「特集「王国の名」を読む」があり、先にそちらを読んでいました。先日句会で拓さんとご一緒する機会があり、そのときに本を頂き、今回通して読むことができました。

常原拓さん、この度は句集をくださいまして、ありがとうございました。




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