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小泉和貴子句集「あやとり」を読む
小泉和貴子(こいずみ・わきこ)さんは、1990年に「青」に入会、1991年「青」終刊の後、ブランクを経て、2020年「秋草」に入会、現在に至っています。序文と帯は山口明男主宰によって書かれています。
この句集には、パートナーの鍬田和見さんによる挿絵が多く差し込まれていて、普段の句集とは違う、ハートウォーミングな一冊となっています。
心に残った20句選
つつかけで出て台風の来る準備
これがまた明日の朝には煮凝りて
どこを見るでもなき人の嚔かな
男物上着はおりて夜の長き
葱坊主堂々空へ立つてゐる
背表紙の色とりどりに五月雨
来年もこの独楽打つと言うて去り
八重桜空で毬つきできさうな
欲も無く争ひもなく心太
星月夜ト音記号を先づ書き
草の花震へる文字で来る葉書
芍薬に顔半分を埋めをり
秋の蜂首すつぽりと蕊の中
短日や猫はいつもの塀を行く
縄跳のもはや縄とはいへぬ音
天牛のややさびついてゐるやうな
どの角を曲がれどそこの虫時雨
いちはつを子規の目で見る日の来たる
一口のゼリーほのほの溶けてゆく
出会ひより五十年レモンソーダ水
この度は、沢山の思いのつまった句集を、まだ結社に入会してから、日の浅い私にもご恵贈いただきまして、本当にありがとうございます。