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秋草2024年11月号を読む

秋草2024年11月号を読んでいきます。

印象に残った15句選

叱られて金木犀の香りかな 山口昭男
饒舌の三人かかし運びをり 山口遼也
向日葵の面罵の如く咲いてをり 渡辺一二三
大きすぎたかと西瓜を切つてくる 高橋真美
秋風や絵本に仲のよき鼠 常原拓
八月の水が光になるところ 舘野まひろ
夏の蝶詩集に真つ白な頁 加藤綾那
いつのまに咲いていつまで百日紅 小泉和貴子
たれよりも静かなる子の花火かな 小鳥遊五月
汗のもの石のごとくに丸めあり 対中いずみ
蓑虫の顔を忘れてしまひけり 橋本小たか
喪の家のカレーのにほひ天の川 三輪小春
あたらしく人老いてゆく里祭 野名紅里
のうぜんの飛び出し坊やとはしづか 田邉大学
おほげさにへたを残してメロン獲る 東野礼豊

秋草2024年11月号

印象に残った15句選の一句鑑賞

叱られて金木犀の香りかな 山口昭男

なにかの理由で叱られて、金木犀の香りを感じたという句。感情が高まっている時は逆にあれこれ感じやすいと思っていて、実感のある一句でした。
金木犀の香りは、豊かに香るので、その匂いが好きという人もいれば、トイレの芳香剤を思い出して、嫌いという人もいる香り。前者なら、慰めてくれる匂いとして、後者なら、さらに追い打ちを掛けていく匂いとして(もしかしたら、トイレ逃げ込んでいる可能性も)機能していて、「金木犀」の現代性もみえてくると感じました。
この句は、句会で特選でいただいてたので、このように今月の主宰作品に入っていて、嬉しくなりました。

印象に残った特集

句会漫遊記

秋草で行われるすべての句会を回った上川拓真さんによる句会リポート。同じ結社の句会でも、場所が違えば、人も違う。それぞれの句会で雰囲気が異なる様子が伝わってきて、読んでいて楽しい。同じ句でも、この句会では取られるけど、あの句会では取られない、みたいなことはよくある。自分自身の作品を多面的に見つめるという意味でも、同じ結社にかぎらず、いろんな句会に出たほうが個人的には勉強になるなと感じてます。
先日、藤井寺の「ひなげし句会」に参加したときも、普段の「あさがほ句会」とは違う雰囲気だったので、また自分の予定にあわせて、違う結社の句会に参加してきたいなと改めて思いました。

来年1月からは、山口で「つゆくさ句会」が新たに始まる予定。山口の句会がどのような雰囲気になるのかも楽しみです。

掲載句

舟虫が地層のしるきところより
ゆかに子の仰けぞつてゐる大文字
新涼や弦ほどかれし弓に反り
ぽつかりと星の生まれてくる花野

今月は7句のうち4句掲載でした。今回、主宰選はなかったので、句会で点が入った句や後援会(主宰との一対一句会のようなもの)で「一考」といただいていた句を中心に、措辞を見直して提出。特に動詞と形容詞は説明的になるので、なるべく省くことに専念しました。

一句目は先日の横須賀での吟行句だったのですが、推敲前は

舟虫や地層に沿つて逃げてをり

という形にしていました。推敲していくなかで、動詞がなくても表現できるのではないかと思い、今回のかたちに。
今回残念ながら落ちてしまった句も、気になる措辞ではあるので、何らかのかたちで結実させたいなと思っています。昭男先生、ご多忙のところ、選句していただき、ありがとうございます。


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