波多野爽波俳句全集を読む⑤-2
前回に引き続き、「一筆」以降の作品を含む、句集に未収録であった補遺より、感銘句を引きます。
「一筆」以降の作品は、本当にどの作品もとてもよくて、気づいたら見開き全句に付箋をつけていました(笑)
波多野爽波作品の中でも、おそらく晩年の作品が一番好きかもしれません。おそらく「写生」という概念の究極が結実していたのではないかと感じています。
後半は、さらに自由度が増した作品が登場します。例えば「だから褞袍は」「たんぽぽを」「涅槃図を」あたりの句。
褞袍の句は、おそらくこのようなつぶやきを誰かがいっていて、そのまま「写生」したのではないかと少し考えました。
をどこか思い出させます。
「たんぽぽを」の句は、これもおそらく実景なのだと思うのですが、
坪内稔典さんの句のような可笑しみがあり、何じゃこらという気持ちとともにクスっという気持ちも抑えられませんでした。
こういう句の一方で、
といった、写生らしい写生の句もありました。
感銘句を並べてみたところでも、いろんな方向に飛ばしているものの、句全体として根本にあるのは「写生」なんですね。「写生」でできることがどこまでできるのか、その究極に迫っていった俳人が、波多野爽波なのだと、俳句全集を読み通して感じた次第です。
(終)