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黒岩徳将句集「渦」を読む

日頃からとてもお世話になっている俳人のひとりである、黒岩徳将さんの第一句集。
まず最初に飛び込んでくる装丁。こちらがとても凝っていて、かっこいい。銀色の紙に、銀の渦が箔押し加工。句集の表紙で、ここまで加工をしている作品はなかなかなく、店頭でもぱっと目に入るなと思いました。今回の第一句集を出版する想いがなみなみならぬものであったことを感じました。
またこちらの句集は、すでに多くの俳人さんからも言及されており、改めて俳句界における黒岩さんの大きさを感じました。

感銘を受けた句を、以下に挙げます。

耳打ちの蛇左右から「マチュピチュ」と
この蔦を越ゆれば変はる学区かな
爽やかや綿飴越しに目が合つて
口笛となるまでの息冬桜
呼鈴を軒の氷柱に触れてから
掃き寄せて花屑らしくなりにけり
左大文字も入れて撮りにけり
倍速で聴く盆梅の育て方
括られし風船柔く打ち合へる
台灣夜市火蛾も漢字も溢れをり
賀正書く番地の途中からは見て
渦潮に集ふあらゆる目の力
歯が眩しスイートピーと言ふ人の
きらら虫脚注を引きかへしたる
欠伸より大きな柿を貰ひけり
ポインセチア四方に逢ひたき人の居り
心臓もみんみんも膨らんでくる
赫赫とねぶたと回る地銀の名
秋燕や科挙に詩作のありしこと
セーターやまんばうの口半開き
追伸に雪だよと書き投函す

一読して、句材のバラエティの豊んでいるなと。いろんな句材がいろんな角度から読み込まれていて、楽しくなります。実景の切り取り方の確かさのほか、どこかそうだよねと想像させる余地のある句もあって、一定の句としてのリズムを保ちながら、様々な句が飛び込んでくると思いました。

いつも句会などでお世話になっている黒岩さんの句では、今回の句集とは又違う句も拝見しているので、そんな句が並んだ句集が今後でるのではないかと、ちょっと期待しています。




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