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西村麒麟句集「鷗」を読む

句集「鷗」は、俳句結社「麒麟」主宰の西村麒麟さんの第三句集。結社創設前の句と創設後の句によって、編まれています。

心に残った20句選

いつまでも二人きりなる豆雛
烏瓜兆しの如く咲きにけり
どうしても何匹か死ぬ金魚かな
赤を着てよき秀吉や船祭
足もとに山鳩のゐる良夜かな
虫売の細字すずむしくさひばり
インバネス死後も時々浅草へ
電話ありクリスマスにも少し触れ
煤掃や仏をそつと握りしめ
湯ざめして空気の多き箱根かな
虫売やすぐ死ぬ虫の説明も
桜菓子愚痴の日記に筆が乗り
夏シャツの嬉しさうなる影を連れ
灯涼し夜と名付けてベタを飼ひ
枝豆やあつという間に馴染む人
洋梨や夜がどんどんこの部屋に
牡蠣フライ言葉がふつと軽くなり
春かもめ一句光つて来たりけり
佐保姫の触つて行きし猫の顎
花の宿風が二階へ三階へ

西村麒麟「鷗」

今回の句集は、タイトルとなる「鷗」の句が多数収録されていたほか、「へうたん」「虫売」といった西村麒麟さんらしい季語の句も多数収録されていました。句集全体に、ひょうひょうとした感覚が、音にも文字にもあって、ほっこりとする句集だと感じました。


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