桜花賞の追切メモ

・アスコリピチェーノ

 最終追切を見た時の第一印象は阪神JFの時に比べると迫力に欠ける。
 動きの質は非常に高く、動きは柔らか。直線で加速する際もストライド大きく体全体を使いながら伸びることが出来ており、非常に完成度が高く、横の比較でも上位だと思える走りが出来ている。
 ただ、追切を見て本命を決めた阪神JFと比べると一つ物足りない印象はぬぐえず、栗東滞在で調整、一週前に同厩舎のルージュエヴァイユと併せるなど、調整過程も悪くなく、ここでも十分勝ち負けできる状態に仕上げられているが、絶対にここだけを勝ちたいというよりは先も見据えて若干の余裕を残しているように映る。
 その余裕を残している分、気持ち的な部分もG1に向けて仕上がり切っていないんじゃないかな?という感じ。
 非常に抽象的なことしか書けていないけれど、追切からあえて本命を打ちたいと思えるタイミングではないかなと。

・イフェイオン

 前走時は坂路で55.3から12.6-13.1の失速ラップということで、時計だけ見るととても買えない内容で勝利している。あまり調教と結果が直結しないタイプなのかなとは思うが、今回も時計は目立たない。坂路で55.1から13.0-12.5の加速ラップ。一週前のCWと同様に手前替えをするタイミングで内に流れてしまっており、走りに幼さが目立つ。
 単に追切だけの比較だと上位にはとりづらいが、縦の比較で言えば前走よりは格段に良い。間隔開けた分の上積みは望めそうであり、あとは本番でどこまで走れるか。

・エトヴプレ

 前走は最終追切はCWでかなり緩めの時計からスパッと切れる終い重点の内容だったが今回は全体時計をまとめながら終い11.4-11.8と失速。
 前に馬を置いて追走する形から直線は促して躱す予定だったように見える動きだが、並びかけることが出来ずにずるずると失速して大きく併せ遅れ。
 流石に想定していたとおりの内容には映らず、前走が掬いどころで今回はおつりに期待できないかなというところ。

・キャットファイト

 一週前は併せた馬がかなり動いていたとはいえ、鞭を入れられていっぱいに追われた上で終いは11.4まで伸ばせたがやや遅れ。悪くは無いが本番に向けてはもう一段上積みが欲しいところ。
 そこから最終追切は坂路で単走。手前替えのタイミングがやや早かったところは気になるが、テンポ良くいいリズムで走ることが出来ており、活気十分の迫力ある動き。全体時計が55.2とゆったり目だった分もあってか終いは12.8-12.2といい加速ラップながら余裕が感じられる。
 過去の重賞挑戦時よりいい状態で迎えることが出来そうではあるが、相手強化でどこまでやれるか。

・クイーンズウォーク

 前走は坂路仕上げだったところから切り替えてのCW仕上げ。
 変わってはいるが、一週前CW終い早め、日曜坂路好ラップからの最終CWで併せ馬の終い重点自体は厩舎の定番かつ好成績パターン。
 動きは軽快でスケール感あり。直線では併せた馬がいっぱいに追いながら伸ばしている内側で持ったままじっくり併せ、遅れてはいるもののかなり質の高い内容。
 クイーンCの時も思ったが、かなり完成度の高い走りであり、その分横の比較でも上位と言える。桜花賞よりオークス向き、これは確かにそうだと思うが、ベストがオークスなだけで桜花賞がダメというわけではない。
 ここでも勝ち負けできる素質はある。

・コラソンビート

 前走時は最終坂路で早い時計を出してきていたので、今回も坂路で仕上げてくるのかなと思っていたが一週前から引き続きのCWで仕上げ。
 京王杯2歳、阪神JFの時はどちらも最終追切CWだったので、実績のある過程でありマイナスは無い。
 一週前は併せ馬でシンエンペラーが外からかなり強めに追っても楽な感じで走りながらも抜かせない好内容。そこから日曜に坂路で56.0を挟みながら最終はCWで6F79.2と好時計から終い11.5-11.6と時計だけ見ても目立つ。
 馬場の中ほどを楽に走って最後まで馬なりで楽な感じ。これまでは幼さもありながら溢れんばかりの脚力が伺える感じのキレのある追切という印象だったが、ここにきてグッと前後のバランスが良くなり完成度が跳ね上がった。
 ここを勝ちたいという気迫が伝わる追切内容であり、ここに来て状態はピーク。好評価せざるを得ない。

・スウィープフィート

 前走時点で6戦目、昨年から休みなくコンスタントに使われてきているのでもう流石に上積みは無いかな……と思って映像を見て驚き。前走から更に上げてきました。
 最終追切は坂路で52.7から終い12.3-12.0、時計は文句なし。これまでは抑えて首を振りながら直線を向いてというのが多かったが、今回は折り合って非常に安定感のある走り。
 それでいて大人しいという感じではなく、気迫が伝わる活気ある走り。手前替えもスムーズでスピードロスもなし、最後まで余裕をもって加速出来ているように状態はこれまで以上にある。ここへの勝負気配はかなり高そう。
 今できるベストな状態に仕上げられているとは思うが当日にピークを維持して迎えられるかは微妙なところ。ピンかパー、ピンかパーですね。

・ステレンボッシュ

 休み明けの一戦ではあるが一週前はCWで全体時計緩めから終い12.1と平凡な時計から、日曜にも坂路緩め、最終はCW併せ馬の内側で全体時計まずまずから終い11.7-11.7と悪くないものの目立たない。
 動き自体は悪くなく、コーナリングからの加速はスムーズで勢いある。直線でもじっくり併せて鞍上の仕掛けにも反応よく、コントロールが効いたいい動きが出来ているが、ここへの勝負度合いという視点ではどこまでか。
 悪くないが、特に推す要素も見当たらないという感じ。

・セキトバイースト

 前走からは異なる調整過程。
 前走時は一週前にCWでまずまずの時計、そこから日曜に坂路で57.9から終い12.3の加速ラップを挟んで最終はCW4F追いで50.9から11.5-11.4とまとめる内容。溜めてキレる足というよりは長く早い足を使って前から押し切ることを想定したような時計の出し方でレース内容にもそれがあらわれていた。
 一方今回は一週前からCWで6F80.4と好時計。併せ馬の内側で強く追って抜け出して先着。かなりハードな内容で負荷をかけた。そこから日曜の坂路は前走よりも緩んで59.9と遅めから終いだけ12.8と加速。最終は同じく4F追いだが52.6から終い11.8-11.2と鋭く加速させた。単走で抑えながらコーナーを回って直線で一気に解放、前走までと比べて四肢の捌き鋭くキレのある走りが出来ている。一週前の時点でかなり負荷をかけた分最終は既に仕上がっているので終い重点で本番の末脚比べを意識して仕上げましたという内容、前走とは違う形ではあるが好状態で本番に臨むことが出来そう。
 今回も追切内容がそのままレースに直結するのであれば逃げずに前に馬を置きながらの競馬を選択する可能性は濃厚。個人的にはこれが欲しかったんだという感じの追切内容であり、非常に好感。

・セシリエプラージュ

 前走の最終追切が坂路で53.8から12.8-13.0の失速ラップだったところから、今回は大きく時計を縮めて51.4から12.1-12.1の好時計。
 非常に軽快な登坂でスピード感ある。時計の出し方を見るに14.5-12.7-12.1-12.1なので終い失速してもいいから全体時計をとにかく早くして負荷をかけるというパターンで考えていたが、馬の状態の良さで失速しなかったという風に映る。映像でも直線を向いてから特に抑えずに走らせているので、これはそうとう好状態に出来ている。
 前走が内容的にもローテ的にもかなりハマった感じはあるので、ここでどこまでやれるかというところだとは思うが、状態面では上積みをもって望めそう。

・チェルヴィニア

 先週のジオグリフに続きこちらも栗東滞在でも盤石の木村厩舎パターン。
 一週前CWから日曜には坂路で53.6、12.4-12.3の加速ラップと最終追切と言ってもいいレベルの好時計、そこから最終は三頭併せ馬の真ん中で負荷をかけながら終いのキレを強化。全体時計がそこまでということも合ってか直線を向いての手ごたえはかなり良く、簡単に抜け出さないように抑えて抑えての11.6。
 前進気勢もうかがえる好気配で、久々でも十分戦える状態に仕上げられていると思うが、やはりローテ的にも時計の攻め方的にも次を見据えた余裕は残っている。強い馬が揃ったハイレベル世代でこのローテからどこまでやれるか。強いとは思うが、ここに入って抜けて目立つほどではない。

・テウメッサ

 こちらも栗東滞在。
 一週前はかなり目立つ動き。CWで単走、時計はそこまで早くないが弾むような走りで推進力高く、直線でも一歩ごとに加速するような走りでここからもう一段上昇があればかなり面白そう。
 そこから最終は再度CWで単走。外ラチ沿いを走りながら全体時計は緩めで一週前と内容的にはあまり変わらない。抑え気味に楽に走らせて一週前同様に推進力の高い走りではあるが、期待していたほど上積みは感じられず、時計的にも大一番に向けて攻め切れていない印象。
 ちょっとここでは拾いづらいか。

・ハワイアンティアレ

 前走キャリア3戦目で優先出走権を獲得しての挑戦ということで、余裕を持ったローテ。ということもあってか一週前から攻めた時計を出しており坂路で52.8から12.5-12.3の加速ラップ。小柄な分線は細く映るが前走タフな場で時計も早い競馬をこなした影響か、使った上積みが感じられ、体に芯が入ってきた印象。
 最終追切はCWで併せ馬。全体時計6F81.7と早い時計でまとめた。前に馬を置いて追走、直線を向いての加速は勢いよく並びかける間もなくあっという間に抜き去っての迫力ある内容。
 前走から上積みがかなり大きそうだが、どうしても馬格が足りない分純粋なスピード勝負になってしまうと苦しいかもしれない。雨が欲しいが…

・マスクオールウィン

 前走同様坂路なしCWのみでの仕上げ。
 最終追切はCWで単走、坦々としながらテンポのいい走り。背中に力があり安定感が高い。一週前に併せ馬で早い時計を出して負荷をかけた分最終はあっさりではあるが、質の高い動きが出来ており、ここに入っても素質的な面では見劣りしない。
 ただ、前傾気味の走りで舞台適性的には直線が長いコースよりは前走のような小回りの方が向いていそうという印象。前走はローテ、展開がハマった感も強い分、今回は中々厳しいとは思うが、休んだ分フレッシュないい状態で迎えることが出来そう。

・ライトバック

 こちらも前走から引き続き坂路なしのCW仕上げ。
 一週前から目立つ動き、CWで6F80.6の好時計。3頭併せ馬で前に2頭を置きながらその間を割って伸ばすような実戦意識の内容。加速して前に出るときの勢いが良く、一週前時点で体にメリハリがあり非常に状態よさそう。
 最終は全体時計抑えながら同様に3頭併せの真ん中を抜けさせる内容。一週前でかなり仕上がっているように見えた分、大きな上昇は感じられないが一週前からいい意味でキープ。
 前走の動きと見比べるとかなり動きが変化しており、前走は前の出がやや窮屈でストライドもコンパクトで回転数高く加速していたが、今回は余裕ある大きなストライドで後肢の推進力がそのままスピードにつながっており、スケール感ある走りで、前後のバランスも良くなった。
 元から素質を感じさせていたが、ここに来てグッと伸びてきた印象であり、横の比較でも全く見劣りしない。面白いですね。

・ワイドラトゥール

 これまで坂路好時計で仕上げられてきたが今回は一変してCWでの仕上げ。時計としても非常に軽く、終いだけ伸ばす形で動きを確認する程度。実質単走で4F追いという感じ、映像を見ても直線でなかなか手前替わらず馬なりでもあまり加速して行かない。ラストだけ悪くない動きが出来ていたが攻めたりない。
 こういう仕上げ方で重賞を勝った馬というのは記憶になく、ちょっと手が出ない。

・シカゴスティング

 一週前は前走と同じ感じ、坂路で前に馬を置きながら溜めて終いを伸ばす内容。終い11.9の加速ラップであり、普段から坂路では時計が出るタイプではあるが順調に状態をあげてきている。
 そこから最終は前に馬を置かずに並走しての併せ馬。52.6から終い12.6-12.3の好ラップで阪神JFの時に近い。
 体の動きも軽快で、スピード感もある。併せ馬と接触しながらも全く引かずに前進気勢の強さがうかがえるので、内目の枠を引いた今回、改めて逃げて一発を狙うような形になる気もする。
 馬単体で見れば登り調子とは思うが、横の比較では見劣り感否めない。

・ショウナンマヌエラ

 一週前は坂路で単走。左右にふらふらとしてあまり芯が入っていない印象、力強さに欠け、最終追切で上げてこなければちょっと手が出ない内容。
 そこから日曜に坂路で57.4から終い12.6の加速とまずまずの時計を挟んで最終も全体緩めの坂路。56.7から終いのみ12秒台で12.5の加速ラップ。抑えて抑えて終いだけのばす形だが高野厩舎としては珍しくないパターン、時計が地味で侮られても好走することが多く穴目では狙いたくなる調整過程。記憶に新しいところだと昨年のマイルCSのナミュールなどが似た時計の出し方で結果を出している。
 動き自体も溜めた分しっかり終いはいい動きが出来ており、前走は控えて自分の形にならなかったところから、前に行くことが出来ての一変というのはあり得ない話ではない。いい状態で本番に向かうことが出来そう。

【まとめ】

 出走馬が全頭揃っても個人的にはやはり調教から気になるのはコラソンビート、前走よりもかなり体のバランスが良くなったなと思ったが調教後馬体重は前走からかなり増やしての+16㎏ということで滞在効果があっての良化にはかなり期待が持てる。
 そんな中で穴目で気になるのはやはりセキトバイースト。元から注目していた分の贔屓目もあるかもしれないが、前走が逃げるないし前から押し切るための時計の出し方にも見えるところから今回溜めて終いも使うことを前提とした内容に切り替えてきたのはなんとも興味深い。最終追切も藤岡騎手騎乗で、厩舎と連携しながら意図して馬を作ってきているように思えてならない。重賞勝ちのエトヴプレよりもこっちを選んだ理由がここにあるんじゃないかと思う。
 そしてここに来てグッと良くなっているように見えるライトバック。勢いのある坂井騎手の継続騎乗ということもあり侮れない存在。
 あとはハワイアンティアレ、セシリエプラージュの出走権組も状態更に上げてきていそうであり、枠と展開次第では穴目の台頭があっても良いのではないかと思わされる。
 枠並びも決まりましたが、前に行ける馬が内外に散って最も早いエトヴプレが外枠で展開はどうなるのか、しっかり考えて結論を導きたいと思います。楽しみだ。

【阪神牝馬SとNZT】

 阪神牝馬Sはマスクトディーヴァは動きの質高いものの時計の出し方的にもここに向けて特に勝負気配高く仕上げられている訳ではない。ドゥアイズは特に割り引くような点無く質の高い仕上げがなされているが、人気の一角ウンブライルは木村厩舎の3頭併せ馬の内側、チェルヴィニアと併せておっても並べずということでちょっと疑わしい。
 ライラックは昨年の秋でやはり馬が変わっており、今回も非常に良い動き。穴目ならばゴールドエクリプスがかなり面白そう一週前に坂路で好時計を出してから最終はCW単走で6F80.0の好時計。馬体のハリ艶も目立ち、望来騎手に手が戻るこのタイミングで状態をあげてきているのは非常によい。前に行けそうな枠並びならば狙いたい。

 NZTは人気サイドだとキャプテンシー、エコロブルームあたりは良い動きが出来ており、追切からは特に割り引く点なし。特にエコロブルームは前走の最終が輸送も踏まえてか緩めの時計だったところから今回は関東での競馬ということで坂路でビシッと仕上げられており上積み見込める。
 人気のルージュスエルテは中山への舞台替わりはやや疑問。ボンドガールも出れるならば阪神の適性的にも望ましいだろう。
 穴目で面白いのはエンヤラヴフェイスとクリーンエア。どちらも重賞の経験が豊富でこれまで戦ってきた相手が強いということもあり、ここに入ると一つ上の動きが出来ているように映る。特にクリーンエアは近走低めのクッション値で結果が出ていないリアルインパクト産駒ということもあり、今週末中山のクッション値が上がってくれるならばかなり面白い存在になるのではないかと思う。

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