スプリンターズSを考える

【枠が非常に重要なレース】

 基本的には非常に内枠が優勢なレース。
 ここ10年の好走馬を見ても6~8枠から好走したのは
・レシステンシア(2021年 6枠12番 2着)
・アウィルアウェイ(2020年 8枠16番 3着)
・レッドファルクス(2016年 7枠13番 1着)
・ミッキーアイル(2016年 8枠15番 2着)
 と4頭のみ。
 この内ミッキーアイルは8枠からハナを叩いて粘り込み。アウィルアウェイはグランアレグリアが差し切った年で、ややインがタフになっていた&モズスーパーフレアがつくったハイペースで差が決まり、外から追い込んできたのがハマった。レシステンシアはスタートから好位につけて上手く立ち回ってとこの3頭は展開や立ち回りで上手く枠の不利をなくしての好走。
 レッドファルクスは少し特殊で、終始枠なりに中団後方で外々を回すレース、最後すごい勢いで伸びてきてはいるものの例年ならば届き切らないような展開。有名な「ビッグアーサーは前が壁!」の年でありイン前で苦しくなった先行勢が渋滞したのが大きく、内から伸びてくる馬がいなかった。レッドファルクスが外から差し切ったのは強かったが、2.3着は逃げと番手からそのまま残った。
 ここでややこしいのが”内枠有利”=”イン前有利”という訳でもない。レース映像を見返してみると、内枠を取った馬が内枠を活かしてそのままインを器用に回して勝ったという年はそこまで多くなく、内枠の馬が内を回しながら足を溜めて、直線では外に持ち出して差し切るというパターンのほうがむしろ多い。
 じゃあ何でそうなることが多いのかというところから考えていきたい。

【中山1200の独特なコースレイアウトが内有利を招く】

 春のスプリントG1である高松宮記念が行われる中京1200とはかなり異なるコースである中山1200。
 特徴的なところとしてまず思い浮かぶのは最後の急坂ではあるが、それと同じくらい意識しなければならないのが”スタート後2Fが結構傾斜のある下り”というところかと思う。
 中京の場合はスタート少しだけ上った後長く緩い下りが続いて直線の入りで坂を上った後直線を粘り込むような、ハイスピードを維持してそのまま行き切る”高いスピード能力”が重視されるコース。
 その一方で中山は向こう正面の坂の頂点からスタートするので、最初の2F、コーナーの入りまでで4m近くの高低差を下るので勢いがつきやすく、中京以上にハイペースになりやすい。
 早い逃げ馬がいると簡単に前半3Fが32秒台になるので、高い追走力が求められる上に、ラストの直線で止まらない”馬力のある末脚”を求められる。
 この2つが合わさることで極端な枠の有利不利が生まれる、ハイペースをこなしながら足を溜める必要があり、単純なポジション取りよりも直線で如何に末脚を伸ばしてゴール前まで高いスピードを維持するかが重要なレース質であり、求められる立ち回りは同じく枠順で極端な有利不利があるアイビスSDに近い。
 アイビスSDだと極端な外有利で、スタートから無理なく好位につけて前に馬を置きながら早い流れに乗り、上手く息を作った馬がラスト2Fで前から伸びきるor馬郡を捌いて伸びてくるというパターンで勝つことが多い。
 それと似たような感じでスプリンターズSでも内枠からラチに近いところでコースロスなく、後方過ぎないポジションで脚を溜めて、最後馬郡を捌くか外に持ち出して末脚を伸ばした馬が非常に恵まれやすい。その一方で外枠からだと、外々を回す時点でそもそも脚を溜め辛く、強引にロスの無い内に入ろうとするとポジション取りに足を使う必要があるため、どうしてもロスなく内を回しながら足を溜めた馬に伸び負けやすい。
 ここから分かるスプリンターズSを勝つために求められる能力は
・内の先行~中団にポジションを取るレースセンス
・ハイペースの追走をこなしながらも馬郡で脚を溜められる気性と操縦性
・そして最後直線で坂をハイスピードで上り切る末脚の伸び
 テン良し、中良し、終い良しと高松宮記念以上にスプリンターとしての総合力が求められるレースと考えて良いかと思う。

【今年のメンバー構成と血統傾向】

 明確な逃げ馬がピューロマジックと高松宮記念に続き香港から参戦するビクターザウィナーの2頭。どちらもテンのスピードがかなり速いのでハナ争いで譲らなかった場合はこの2頭のハナ争いだけでもかなりペースは流れそう。
 ピューロマジックが典さんへの乗り替わりでどういった立ち回りをするかが読みづらいところではありますが、基本的に馬のリズムを重視するので、ピューロマジックが出たなりにいつものように前に行くならば無理に抑えることはせず普通に逃げるんじゃないかなと思っているんですがどうですかね?普通に下りスタートの中山でこの2頭がハナ争いになれば32秒後半、争わずにどちらかが単騎で行っても33秒フラットくらいのスピードはでそうなので、一昨年くらいのハイペース想定で良いんじゃないかなと。
 この2頭の後ろにつけそうなのがウイングレイテスト、サトノレーヴ、マッドクール、ママコチャ、モズメイメイ、ルガルあたりかなと思うのですが、ここに人気サイドというか、能力の高い馬が多くいるので、どんなに前が飛ばしたとしても、馬郡から離した逃げで有利な展開を作るのは難しそうで、馬郡全体が早い逃げ馬に引っ張られる形でハイペースへのスプリンターズSらしい、ハイペースへの対応が求められそう。
 最近で前半3Fが33.0以下だったのは4年間ですが、その年の好走馬は
・2022
 1着 ジャンダルム (2枠2番 先行 父Kitten’sJoy)
 2着 ウインマーベル (4枠7番 先行差 父アイルハヴアナザー)
 3着 ナランフレグ (3枠6番 追込 父ゴールドアリュール)
・2020
 1着 グランアレグリア (5枠10番 追込 父ディープインパクト)
 2着 ダノンスマッシュ (2枠3番 先行 父ロードカナロア)
 3着 アウィルアウェイ (8枠16番 追込 父ジャスタウェイ)
・2019
 1着 タワーオブロンドン (4枠8番 差 父Raven’sPass)
 2着 モズスーパーフレア (4枠7番 逃 父Speightstown)
 3着 ダノンスマッシュ (1枠2番 差 父ロードカナロア)
・2018
 1着 ファインニードル (4枠8番 差 父アドマイヤムーン)
 2着 ラブカンプー (5枠9番 先行 父ショウナンカンプ)
 3着 ラインスピリット (1枠1番 先行 父スウェプトオーヴァーボード)
 ぱっと見で結構目立つのがミスプロ系を持っていること。2019年はミスプロ系の父3頭で決着。2018年は人気薄で来たラブカンプーは母父がマイネルラヴでミスプロ系持ちで1.3着は父ミスプロ系。2020年は3着のアウィルアウェイは母父がキングカメハメハということでミスプロ系。馬券内12頭中9頭が父か母父にミスプロ系を持っているのは結構な偏り。
 ややインがタフになっており、早いペースに対応しながらのスタミナも求められた2022年と2020年ではサンデー系を持っている馬が6頭中5頭というのも露骨。
 今年のメンバー構成でいうと父ミスプロ系が
・ウインマーベル
・サトノレーヴ
・ダノンスコーピオン
・ルガル
 母父にミスプロ持ちが
・ママコチャ
・ヴェントヴォーチェ
(除外想定2頭を除く)
 サンデー系持ちが
・ウインマーベル
・エイシンスポッター
・オオバンブルマイ
・トウシンマカオ
・ナムラクレア
・ピューロマジック
・モズメイメイ
 の5頭、やはり一度ハイペースのスプリンターズSで連帯しているウインマーベルは良さそう。サトノレーヴ、ママコチャはどちらも人気ではあるが持ち前の器用さを活かせる枠を引くことが出来れば。今回中穴くらいの扱いになりそうですが、ドゥラメンテ産駒のルガルが脚質的にも面白いかもという感じですかね。
 そんな感じの前提を置きながら、各馬の考察をしていきたいと思います。

【全頭評価】


【まとめ】

 全頭評価はスライドの形にしましたが、週頭時点ではウインマーベルとトウシンマカオ5歳牡馬2頭の悲願のG1制覇に期待という感じですね。人気どころだと川田騎手に手が戻るママコチャは驚異ですし2走前に函館SSで斤量差がありながらサトノレーヴと差の無い競馬をしているウイングレイテストはかなり魅力。休み明けが嫌われるならばルガルもかなり買いたい。
 サトノレーヴは無理に嫌うべきではないかなとも思いつつちょっと逆らってみたい気持ちの方が大きいかなという感じですね。
 ちょっと週末の天気予報も見るたびに変わる感じで、日曜に降るのか、土曜に降って日曜は曇りなのか、それともどっちも小雨程度で馬場には影響なしなのか、それによっても結構変わってくるので調教ももちろんですが、天気予報にも注目の一週間になりそうですね。
 いずれにせよ秋のG1一発目、いいスタートを切りたいですね。


いいなと思ったら応援しよう!