順化
ある場所まで、ほぼ毎日車で通っていた
毎日毎日、おおよそ同じ時間に同じ場所を通って通っていた
毎日毎日、同じ風景を見ていた。特にかわり映えもしない
1日が始まり
1日が終わる
私は決意して車を手放した。
私は車種にこだわりはない。順調に動けばなんでも良い。
車を運転するのは好きだ。どこでも自由に行ける。
でも、私は手放した。
車が手元からなくなると、その不便さを目の当たりにする。
いつも数分で行っていた、あの店まで徒歩20分。
また、あっちの店まで徒歩35分。買い物に行った時には、それはリュックが重くて、早く着かないかと亀の首を伸ばすように、ひたすら歩く。
でも、何十回と回数を重ねると
今日は、こっちの道から。あれ?ここにも道がある。
今日は、ここの横道に入ってどこに行くか探検してみよう。
歩いて移動することに楽しみを見つけながら。
新しい発見を探しながら歩く。今まで目を向けなかったことに。
目を向けられなかったこと、と言っていいのではないか?
これは不便でもありながら、不自由でもありながら
一種の新しい世界の突入なのだ
私は、車を手放したこの生活に順化してきた自分に気づく。新しい価値観の誕生だろう。
そこで「はっ」と、今の生活・世界に引戻される。
あっちの世界とこっちの世界。イッタリキタリスル。