FGOのイベントシナリオを担当したライターamphibianさんって何者?ケムコADVって何?
FGOのイベント「虚数大海戦イマジナリ・スクランブル ~ノーチラス浮上せよ~」のライターとして発表されたamphibian氏。
かの奈須きのこ氏が大絶賛したレイジングループのライターであることは知ってる人も多いと思うが、その他の著作についてはあまり知られてないように見受けられる。
そこで本記事ではamphibian氏がライターとして担当してきたノベルゲームを中心に紹介していく。
(だいたい古参ファン面したいだけ)
略歴
現在はフリーシナリオライターとして活動しているが2020年7月にフリー宣言するまではケムコ(@KEMCO_OFFICIAL)に所属していた。
ケムコはファミコン時代のゲームメーカーとしての知名度が高いそうだが(筆者は20代半ばなので寡聞にして存じませんが)、携帯電話の普及以降は携帯電話向けのゲームアプリ、現在はスマホ向けのゲームアプリ、特にRPGを多く発売している。月に1つ新作RPGを1000円以下のロープライスで発表していてその多作振りは他社の追随を許さない。
広告付きのプレイ無料のRPGをリリースすることもあり、中高時代家庭の事情で課金できなかった筆者はINNOCENT SAGAやマシンナイトといった無料RPGを楽しんでいたが、無料とは思えないやり込み要素の多さで驚いた記憶がある(大学生になってからマシンナイトは課金購入した)
そのケムコでamphibian氏はADV、いわゆるノベルゲームのライターとして名前がクレジットされていた(RPGにも関わっていたそうだが、そちらは本名でクレジットされているそう)
作風としては人が死ぬ、デスゲームをモチーフにしたものが多く、その一方でダークな雰囲気だけではなく明るくポップなギャグシーンの描写も上手い幅広い引き出しの持ち主。
また入念に伏線を張りながら、どんでん返しを決めてプレイヤーをアッと言わせる展開がよくあり、話が終わりに近づいても気が抜けないライター。
ここからは氏の著作を一つ一つ見ていこう。
鈍色のバタフライ
2010年に発売されたケムコADVの記念すべき第一作。当時はスマホの普及率もまだ低く、ガラケーのアプリとして発売(2年後にスマホアプリとしても発売)
無料体験版あり、610円
ボイスなし、分岐もほぼなし(いくつかのバッドエンドのみ)とノベルゲームとしては簡素な作り(この点は携帯ゲームとしての容量制限が大きい)
ただ分岐がない代わりに隠しモードと呼ばれる2週目のルートがあり、主人公以外のキャラクターの心情描写や主人公以外の視点のパートが追加されている。
仲良しグループの男女9名がバタフライゲームと呼ばれるデスゲームに巻き込まれ、その内で生じる信頼と疑心暗鬼を描くデスゲームサスペンス。
バタフライゲームはだいたい人狼ゲームと同様のルールで進む
例えば共有者というお互いが村人であることがわかる役職や守護者という人狼ゲームにおける狩人と同様の能力を持つ役職などの人狼ゲームでよくある役割があり、それにバタフライゲーム特有の役職を加えた人狼ゲームを少しアレンジしたようなゲーム内容。
実際に命がかかっているがゆえに人狼ゲームのセオリーは通用せず、キャラクターたちの感情的な選択で状況が大きく左右される。
全年齢対象にしては過激な描写が多く、賛否両論だったそう(鈍色のバタフライwebスペシャルコンテンツより)。非日常的な場に置かれた彼らの狂気を楽しめるかどうかで合う合わないが分かれるゲーム。
デスゲームものとして粗削りな面も大きいが、キャラクターの狂気の描き方には後の作品の片鱗が見える。
大介(主人公)の最後の選択が個人的には強く印象に残ってるかな。
好きなキャラを挙げるとしたらちょっと悩むけどやはりメインヒロインの鷹瀬レイ。
失語症で、常に抱えているスケッチブックで筆談することでコミュニケーションを取る少女。冷静かつ主人公への信頼が厚く、作中の癒し。
まあでもこのゲームはデスゲームものなので……彼女がどうなってしまうかはご自分の目で確かめてください
トガビトノセンリツ
2011年に携帯電話向けに発売されたケムコADV第二作(スマホ版は2012年、WiiU版は2013年に発売)
無料体験版あり・スマホ版610円・WiiU版1047円
鈍色同様ボイスなし・スチル5枚と容量抑えめだが、本編攻略後に読むことが推奨される断片集という読み物が5本あり、スマホ版では追加課金でWiiU版では初めから付いている(合計価格はほとんど変わらないはず)
このようなキャラストーリー/後日談などの追加コンテンツはこれ以降のケムコADVに常設されるようになった。
あらすじ
秋の連休を利用して、市立志加多第三高校(しかだだいさんこうこう)管弦部は、山へ課外授業に出かける。しかし何者かによって拉致され、"監獄"へと送られた。参加者の一人が"処刑"されたが、部員たちはプリズナー・ゲームへの抵抗を試みる。しかし、部員たちの隠された歪みが、ゲームによって浮き彫りになっていく。(Wikipediaより引用)
前作の鈍色のバタフライ同様、高校生の男女グループーー今回は管弦部(とは名ばかりの仲良しグループ)ーーがデスゲームに巻き込まれるといった展開は同じだが、巻き込まれた人の中に先生やたまたま遭遇した小学生女子がいたりと年齢層が上下に広がっている。メインキャラは主人公含めて11人。
またデスゲームもプリズナーゲームと呼ばれる、とある心理学実験にインスパイアされた内容のゲーム。少し説明が複雑なため詳細は本編/体験版で確認してほしいが、ざっくりと説明すると看守/囚人が5名ずつにわかれて、囚人の中に潜む「殺人鬼」という役職を見つけ出す、といったゲーム。
前作からキャラクターの数が増えたにもかかわらず、ひとりひとりの心情描写の細かさが増した。特に恋愛感情が誰から誰に向かっているのか(いい意味で)とても分かりにくく、恋愛描写については今回挙げる作品の中で一番丁寧に描かれているように思う。
一方でプリズナーゲーム自体はデスゲームとして少々破綻気味であり(これは劇中でも言及されているが)、殺人鬼が誰かという推理を楽しみたいという人には少し合わないかもしれない。
デスゲームを攻略するというよりは、デスゲームによって揺れ動く少年少女たちの「暗黒青春物語」(トガビトwebコンテンツより引用)と言ったところ。
また個人的にamphibian氏の魅力のひとつだと思っている「ドンデン返し」もトガビトがそのはしりなのではないかと感じている。
鈍色のバタフライとは異なり、10個のバッドエンドがある。そのひとつひとつに「千鶴先生の説教部屋」という読み物がついていて、裏設定や攻略のヒントをくれる(F◯teのタイ◯ー道場を想像してくれればよい)。バッドエンド以外のルート分岐はないが、前作同様2周目の隠しモードが用意されており、それを全て読むと真エンディングに辿り着ける。
個人的に一番好きなキャラクターは、部外者として巻き込まれた幼女、鳩田くるみ。
(ケムコのアドベンチャーポータルより引用)
くるみは幼女なのに一番いい女だと思う、最後の最後までやればみんな理解できるはず俺はロリコンじゃない。
D.M.L.C-デスマッチラブコメ-
2013年にスマホ向けに発売されたケムコADV第三作(2014年にWiiU版、2020年にリメイク版がPS4/Switch/Steamで発売)
旧作 無料体験版あり・スマホ版610円(別途課金で追加コンテンツ購入可)・WiiU版1100円(追加コンテンツ内蔵)
リメイク 3000円(ハード問わず)
「告白されると爆死する!?」がキャッチコピーのギャグラブコメノベルゲーム……の皮を被った良シナリオゲー。
例の如くボイスなし・スチル少なめだが、初めてオープニング動画が付いた。あと主人公のビジュアルがついたのも今作が初(前二作は輪郭か口元程度しか写らなかった)
ほぼ一本道の鈍色、分岐はあるがバッドエンドがメインのトガビトと違い、20本のバッドエンド+5ルートの分岐があり、ノベルゲームとして確立された一作。
後述するレイジングループと世界観が繋がっているが、どちらからプレイしても全く問題ないことは明記しておく。
あらすじ
高校に入学して間もない4月16日。矢木景は学校の中庭で津野るみ子と白詰乙羽から告白されるが、直後に謎の爆発が起こる。直後何故か復活し、幻覚だったと思ったが、以後二人から告白と誤解する言葉を聞くと景の身体に異常が起こることが判明する。とりあえずるみ子と乙羽が自重すると言うことで一旦は決着したように見えたが、夕方になると二人とも意識を無くしたかのように景に迫る。根本的な解決策を探すため、景は仲間たちと共に事態の解決に乗り出す。(Wikipeaiaより引用)
トガビトのキャラクター描写の深さは踏襲しつつ、世界観の作り込みが過去作と比較して格段に緻密になり、それに応じて作品の深みが明らかに増した。
物語当初は「いかにして爆死から逃れられるか」というところに重きが置かれてドタバタラブコメが繰り広げられるが、物語が進むにつれて「そもそもなんでそんな体質になったのか/どうすれば逃れられるのか」という方向に舵が切られ、そこに起因するキャラクターたちの心の闇が明かされていく……。
あまり語りすぎるとゴリゴリにネタバレになってしまうので詳細は伏せるが「ジンクス」と呼ばれる設定が秀逸で、キャラクターの性質を物語の展開に組み込むのに一役買っている(でもこの設定DMLCやレイジングループ合わせても詳細な内容はほとんど明かされていないため気になって仕方がない)
20本のバッドエンドそれぞれに「とろりんの巣」という攻略ヒントをくれる読み物パートが付随しており(F◯teのタイ◯ー(ry )、バッドエンドをひとつひとつ探していくのも楽しみのひとつ。
分岐条件が少し難しく、リメイク版ではわかりやすいチャートが追加されたが、旧作ではそれがないためかなりわかりにくく、とろりんの巣でのアドバイスはありがたかったりする。
そしてこの作品の魅力のひとつが東護美弥というキャラだ。
(ケムコのアドベンチャーポータルより引用)
サブヒロイン的な立ち位置だが、プレイヤーからは「美弥様」と呼ばれてぶっちぎりの人気を獲得している。
魅力について語ろうとするとネタバレにしかならないのでここでは口を閉じるが、私は彼女ほど有能でかっこよく、同時にポンコツで可愛いヒロインは見たことがない。あと巨乳。
みんなも美弥様を崇める沼に堕ちましょう。
レイジングループ
2015年に発売されたケムコADV第5作。FGOでも紹介されたようにこの作品がamphibian氏の代表作として挙げられることが多い。
実際amphibian氏がライターを務めた過去3作品に比べ、
・ボイスあり(スマホ版はパートボイス)
・スチル大幅増
・オープニングはボーカル曲付き
・シナリオ量も過去作の比じゃない
・システム面大幅改修
と力の入れようが明らかに違い、内容もそれに違わない出来となっている。
またスマホ版1600円、その他(完全版)3000円となっているがテキスト量に関してはフルプライス(1万円弱)のノベルゲーム並みにあり、ボリューム面で損は絶対にしないと約束できる。
レイジングループは多数のハードに移植されていて、スマホとそれ以外のハードで内容が少し異なり、スマホ版の中でもいくつか種類があるためどれを買えばいいかわからない人がいるかもしれないが、ちょうどそんな人向けに広島オタクマップさんがツイートしています(ちなみにケムコの本部(?)は広島にあるそう)
あらすじ
旅行者・房石陽明は、バイク旅行中に道に迷う。コンビニ店員の案内で集落への道を進むが、崖で転倒してしまう。そこに現れた芹沢千枝実の助けで藤良村(ふじよしむら)にある休水(やすみず)という集落に身を寄せるが、霧が発生して房石は謎の生物に殺されてしまう。しかし直後にはバイクで道に迷っているところに逆行していた。選択を変えてその場を生き延びた房石だったが、村の伝統であるおおかみ様をくくる為の「黄泉忌みの宴」に巻き込まれることになる。(Wikipediaより引用)
もう既に知っている人は多い+ホームページでも紹介されている情報なので説明するが、本作は人狼ゲーム×死に戻りモノ。
ノベルゲームらしく分岐は多々あるが、大体の場合片方は最初に選択することができず、選べる選択肢(だいたい死にそうな予感しかしない行動)を取って死んだことで得られるkeyを使い、封鎖されていた選択肢をアンロックするという形式。
ゲームシステム上、伏線が至るところに敷かれているがその伏線を回収するときは丁寧に順を追って明示してくれるので混乱することは少ないはず。
絵はいわゆる萌え絵とは違い、陰が強いキャラクター造形になっているが、読み進めていくうちにこの絵にしっくりくるようになる。
最初のルートでは助けられないキャラが他のルートでは活躍したり、人狼役がルートで違ったりと、鈍色のバタフライでできなかった人狼ゲームのさまざまなパターンを描いており、ルートを進めるにつれて秘密が明かされながらそのルートでは解決しない新たな謎が現れるなど、どこを取っても中だるみしていないストーリー。
そしてラストに待ち受ける衝撃のシーン。あそこで驚かなかった人がいたら教えて欲しい。
キャラクターたちも、余所者に冷たいおばあさんや自意識が強い名家の息子など序盤は主人公の視点ゆえに鬱陶しいと思ってしまうことがあるが、終盤になるとそれぞれの主義や立場がはっきりとわかり、むしろ感情移入してしまう。
そしてその中でも主人公、房石陽明は人を食ったようなキャラクターをしており、プレイヤー視点でも掴みどころがない。だが最後までプレイしたあなたはきっと彼のことを(むかつきながら)好きになってるでしょう。
(ケムコのアドベンチャーポータルより引用)
「いやマジでお前ほんまやりやがったな」となること間違いなし(プレイした人ならこの気持ちわかるはず)
まとめ
漫画原作:こっくりマジョ裁判やアンソロ:カルデアの事件簿など他にも著作はあるのですが、個人的にちゃんと追い切れていないので今回はケムコADVの紹介に留めておきます。
他にケムコとwaterphoenixとの共同制作であるADVゲーム「最悪なる災厄人間に捧ぐ」においてamphibian氏は監修として携わっています。こちらはシナリオとイラストをR氏が一人で担当しており、amphibian氏の著作とはまた別の魅力(主にボーイミーツガールの方向に)があるので興味のある方は是非。昔書いたレビュー記事を置いときます。
ノベルゲームのシナリオライターがどんどんラノベ作家や脚本家やソシャゲへと転身している昨今、amphibian氏は私が作品を待ち望むシナリオライターの1人です。
もしこの記事を読んで氏の作品のひとつにでも興味を持ってもらえたら記事を書いた甲斐があります。
あとamphibian氏のオリジナルADV新作、レイジングループから5年待ってるので何卒……良いものが出来上がると信じてゆっくり待ってます。
「ジンクス」の情報を見落とすまいとケムコのアドベンチャーポータル1日中眺めてた日とかあったな(遠い目)
引用
amphibian氏Twitter(@frogmonger)
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