小さなヒーロー
母は切なそうな困ったような笑顔をしていた。
「そうやなあ…」
母は何か言うべきか言わないべきか悩んでいるように見えて、母が兄と姉に私の出自を言うことを恐れて、私は先に言った。
「…大叔母ちゃんは私のことが嫌いなんや」
大叔母は兄と姉には、嫌われたくない気持ちがあるらしく、兄と姉がいるところで私のことを褒めることもないが、悪く言うこともなかった。
後から知ったが、兄と姉の精神衛生を保つため、
一族の世間体を保つため、一族間の暗黙の了解で私の出自については話してはいけないことになっていたらしい。
まあ、この話を好んでしてくる人もいるのだが。
「なんでひつじは嫌われてるん?なんかしたんか?」
「…なんもしてへんもん。」
私は堪えきれず涙が出てしまった。
なんもしてないわけがない、産まれてきてしまったのだから。
母もそんな私をみて、涙をこらえていた。
兄は悪いことを聞いてしまったのかと思ったのだろう、よしよしと頭を撫でて抱きしめてくれた。
「ひつじ。」
泣き止んだくらいに兄は言った。
「大丈夫や、何にもしてんのやったら、また仲良く出来る。兄ちゃんがどうにかしたる。」
(いや、無理なんやで、兄ちゃん。)
そう思いつつも兄の優しさが嬉しくて、コクコクを頷いた。
それから2~3年後、ちょっとした出来事があった。
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