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イブのおばちゃん

「まあひつじちゃん、自分できらはったん?!」
「そうなんです…。もう少しきれいに直してもらうことは出来ますか…??」

母と近所の美容室に来ていた。
イブのおばちゃんと呼ばれているオーナーが経営しているこの美容室は母が嫁いできてからよく来ている場所らしい。
もともとは大叔母の紹介で行き始めた美容室なので、私はあまりいい気がしなかったし、なんならこのざっくばらんに切られた髪の毛のままでよかった。
けれど、母があんまりにも悲しそうにするので仕方なくやってきたのだ。

「なぁ、ひつじちゃん?おばちゃん、もうちょっと可愛くしてもええ?」

イブのおばちゃんは私の顔を覗き込みにこやかに言った。

「…」
(話したくもない…切るならはよ切って…)
無言の空間にストーブに乗せられたやかんからチュンチュンチュンと湯が沸いている音が響く。

「ごめんなさい、緊張してるんだと思います!」

母が代わりに謝ってくれた。
幼心にも申し訳ない態度をとったことをわかっていたけど、どうしても大叔母の姿がチラついて素直になれなかった。

「ふふふ、大丈夫やで!」

イブのおばちゃんはからからと笑って言う。
反して私は睨むように見ていたと思う。

「ひつじちゃん、じっとして待っとき。
おばちゃん可愛い可愛いしたるでな!」

(なんなんこのおばちゃん、なんで私にこんな小さい子に話しかけるような言葉で…腹立つ…)
と思いつつ、こくんと頷いてじっとしていた。

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