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悔し涙の先へ スマイルジャパンのステップバイステップ

女子アイスホッケー日本代表「スマイルジャパン」の北京オリンピックが終わりました。決勝トーナメントに進出し、ベスト8。2014年のソチオリンピックで1勝もできなかったことを思えば、18年平昌のオリンピックでの初勝利、そして今回、準々決勝まで進めたことは、選手やスタッフの努力以外の何ものでもないし、飛躍は必然の出来事だったと思う。

平昌後に世界ランキングを6位まで上げ、着々とステップを踏んできたことを、いちファンとして誇らしく思う一方、準々決勝で世界ランキング3位のフィンランドに1-7と完敗してしまった。これは、トップにまた一歩近付いたからこその苦悩がスマイルジャパンに生まれた瞬間でもあったと思います。

テクニックは磨くとしても、この先、日本は欧米の選手との体格差をどうやって埋めていくのか?という問いです。

4年前、スマイルジャパンは、2勝3敗で平昌大会を終えました。オリンピック初勝利など、成長を感じられた大会であったものの、5試合で8得点しか奪えず、全試合を終えた選手とスタッフの誰もが「攻撃力不足」を口にしていました。とは言え、実はスマイルジャパン、平昌の時点で世界トップを争うアメリカを超える、フィジカルの数値に到達。2010年のバンクーバーオリンピックの代表の値と少し古いものでしたが、体格は及ばなくとも筋力や敏捷性は世界に肉薄できるという証明にもなりました。

だからこそ、現地で取材をした時の選手、スタッフから受けた印象は、今は及ばないけれども伸びしろはあるという「前向きさ」も込められていたように感じていました。当時格上だったスイスやスウェーデンに善戦したこともあり、日本はもっと強くなれるという確信がありました。

そして、4年を経た今回。こんな報道もありました。

フィンランド代表の平昌五輪時の体力測定データを入手。垂直跳び、5段跳びなどの数値を比較しながら、肉体を世界基準に鍛え上げた。懸垂は、日本の方が平均値を上回り、多くの選手が30回をこなせるまでになった。

2022年2月13日スポーツ報知


前回よりも、確実に攻撃力もフィジカルも成長して迎えた北京大会。準々決勝フィンランド戦を終えた、大沢ちほ選手は珍しくリンクで泣いていました。「このメンバーでもう1回試合がしたかった」。ソチでは今出せる力を出したと自信をつけ、平昌では悔しさを感じつつも前を見たキャプテンが見せた涙。それは、アメリカ、カナダ、フィンランドの世界3強に食い込むことがどれだけ難しいのか。そして、迫る世代交代。メンバーの半数はソチ五輪以降、高め合ってきたメンバーで絆も強く、涙にはいろんな思いが詰まっているようにも見えました。

ただ、この悲しみも痛みも1勝もできなかったソチから8年を経て、世界ランキング6位の実力をつけたからこそ感じられたもの。努力は無駄ではないし、ここからが日本女子アイスホッケーの本当の勝負なのだと思います。

では、日本はどうすべきなのか。

フィジカルやテクニックの強化はもちろんですが、欧米に対抗するためには、身長が高く体格の良い「ギフト」を持って生まれた選手の存在は欠かせません。ただ、人口が減少しているアイスホッケーで、恵まれた選手を集めるのは簡単ではなく…。バスケットボールでも、第2の八村塁を出すためには?という話がよくトピックに上がりますが、バスケ同様に身体能力、体格を兼ね備えた有望な子供にいかにアイスホッケーをしてもらうか、そして、若いうちから有望選手をキャンプで強化し、日本よりレベルの高い海外で経験を積む道を作れるかというのがポイントになるのだと思います。

現在のスマイルジャパンは、世代別代表の時から飯塚監督をはじめとしたスタッフが大切に育ててきた選手たちが主力です。高校生の頃から世界で戦ってきた選手たちが30代に近づき、世代交代のタイミングがついにきました。長年エースであり続けた、久保英恵選手もインタビューで「集大成」と口にし、次回の五輪では顔ぶれもガラッと変わることが予想されます。

大沢選手の世代以降、女子は国際大会直前の半年から1年は月1回の代表合宿を行うなど、強化に力を入れてきました。代表に入れなかった選手にも有望な選手はいますが、さらに飛躍するためには、日本アイスホッケー連盟を中心とした組織的な底上げが必要不可欠。4年後、そしてさらにその先を見据えた育成が、スマイルジャパンを悔し涙のその先へ、連れて行ってくれるのだと思います。

女子代表は、アイスホッケーの素晴らしさを結果をもって体現し続けてきました。着実に階段を登ってきたひたむきさ、互いに高あう雰囲気を残したまま世代交代をして、いつか日本にメダルをもたらしてほしい。そう願うばかりです。





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