わたしがNEWSを推すわけ
11月17日にリリースされたNEWSの新曲「未来へ」を聞いた瞬間、「これぞNEWS!!」という思いがまず沸いてきた。メンバーの脱退で3人で再スタートして半年。それでも「俺たちはへこたれない。前に進むんだ」という決意表明とも言える強いメッセージにグッと。未来へは、合唱と力強いフレーズが気持ちを前向きにしてくれる「応援ソング」だが、実はこれNEWSの十八番。メジャーデビュー曲「希望〜Yell〜」「weeeek」「フルスイング」「U R not alone」、そして「未来へ」。結成から今年で18年。順風満帆ではない「でこぼこ道」だったからこそ、NEWSの「応援ソング」には圧倒的なリアリティがある。
■いちごのないショートケーキを乗り越えて
「現在」のNEWSは、小山慶一郎、増田貴久、加藤シゲアキの3人だが、デビュー当時は9人。4度もメンバーの脱退を経験している稀有なグループだ。2003年にデビュー当時は、山下智久をセンターに、錦戸亮、内博貴、草野博紀、森内貴寛、手越祐也、増田、小山、加藤の9人だった。
しかし、デビューまもなくして森内(現「ONE OK ROCK」のタカ)が学業を理由に脱退してしまう。06年にはスキャンダルをきっかけに内、草野も抜け、連帯責任で活動休止まで味わった。メンバーは早くも6人に減り、11年にはさらに山下がソロ活動、錦戸が関ジャニ∞のとそれぞれの活動に専念するためにグループを抜けた。
グループ内でも写真の立ち位置からメインメンバーを「前列」、その他を「後列」と言ったりするが、この時点で山下、錦戸という絶対的前列が揃って抜けてしまい、残ったのは、後列の小山、増田、手越、加藤の4人。エースを失ったグループは「いちごのないショートケーキ」と揶揄された。高い歌唱力とテゴマスのユニット活動で注目される、増田、手越の一方で、立ち位置がわからず「お荷物」と感じていた、小山、加藤の悩みは一層深まった。
2015年1月8日放送「櫻井有吉のアブナイ夜会」に出演した時に加藤と小山は、4人になった時の不安を吐露している。
いちごのないショートケーキ、具のないおでん、◯◯と愉快な仲間たちの“愉快な仲間”だけしか残ってないー。
そんな心ない言葉やメンバーの脱退が小山、加藤の心に火をつけた。
■開花した個性 1人でも3人ならなお美味しい
「スポンジケーキもうめえから!最高のスポンンジケーキ、生クリームになってやる」(加藤)
「お荷物」じゃなくなるために。加藤が選んだのは小説を書くことだった。山下、錦戸脱退直後に書き上げたのがデビュー作「ピンクとグレー」。芸能界の光と闇に翻弄されながらも、歩みを進める2人の青年の物語は映画化もされて、注目を浴びた。その後の加藤の活躍は言うまでもない。今年1月には高校生の青春を描いた小説「オルタネート」が直木賞にノミネートされ、吉川英治新人賞を受賞。もはや、作家がアイドルをしている様相を呈している。それでも本人は、吉川英治新人賞の授賞式で「加藤シゲアキ、作家やっていいんだよと慰めていただいた感覚もあります」と話し、謙虚なのも尊い。小山はニュースキャスターやバラエティ番組でしゃべりを磨き、コンサートのMCも滑らかだ。東日本大震災の時は東北に足を運び、現地のの声を拾った。
「俺に火をつけてくれたメンバーに感謝している」と加藤が言えば、小山は「悔しがらせたいじゃん?なんで抜けちゃったんだろって」。メンバーの脱退があってよかったとは言えないが、苦い思い出があったからこそ、今の
NEWSがある。
「NEWSを守る」選択
しかし、困難はこれでは終わらない。20年、手越が方向性の違いを理由に脱退、事務所を辞めた。コロナ禍の最中、NEWSの前に再び「解散」の2文字がチラついた。
当初の3分の1まで減ったNEWS。それでも3人は、このグループを守ると歩み続ける決心を固めた。こんな辛い目にあってもなぜ、NEWSを解散しないのか。
その答えは今年11月7日放送の「おかべろ」で増田が語っていたことにあるように思える。
小山と加藤に聞く前に俺は1人でもやるからと言っていた」
NEWSが好きで長年応援してくれた「ファンの期待に応えたい」という思いが背中を押してくれたという。
■困難を糧にさらなる高みへ
メインボーカルを担っていた手越祐也が脱退した後も、3人はそれをカバーしても有り余る成長を見せてる。
困難をへて、メンバーの結束は今までで一番高まっているように見える。もはやデビュー当時9人で、今は3人という事実をネタにトークを盛り上げすらする逞しさ。
今年春には、コロナ禍のなか万全の対策をとって2年ぶりとなるコンサートツアー「STORY」を満を辞して開催した。久しぶりに聞いた3人の歌声に驚いたファンも多かったはず。小山の声は安定感が増し、加藤はハイトーンに磨きをかけた。ミュージカルで主演するほどの歌唱力を持つ増田は、持ち味の柔らかな歌声だけでなく、パワフルな歌声も披露し、表現の幅を広げていた。
本来ならば20年に手越を含め4人で20年に回るはずだった、NEVERLAND、WORLDISTA、EPCOTIA、そしてSTORYというNEWSの頭文字を取った4部作を締め括るツアーは、コロナ禍で中止になっていた。その後、同年12月にウェブ配信での開催が決まっていたが、加藤、小山が直前に新型コロナウイルスに感染したことで、これもまた中止になったという…どこまで神様はNEWSに試練を与えるのかと言いたくなるが、それは一方でグループが紡ぐ物語にさらなる深みを与えたとも言える。
そんな経験があるからこそ、NEWSは「応援ソング」が似合うのだ。今回リリースされた「未来へ」にはこんなフレーズがある。
まさにNEWSそのもの。歌詞と歌声に感情移入しないほうが難しい。
30代半ばに差し掛かった今も、思わず「可愛い」と言ってしまう磨かれたビジュアルと個性で、愛嬌だけではない唯一無二のアイドルに。もう、いちごのないショートケーキではない。逞しくなっていく3人を見つめられる幸せが、いまのファンにはある。困難を乗り越えた経験は決して無駄ではない「未来で共に笑おう」。日常生活で疲れた時、困難にぶつかった時。説得力ある言葉で、ファンの背中をそっと押して元気をくれる存在、それがNEWSなのだ。