住まいと幸せの関係について
住まいは生きていく上でなくてはならないものですが、
その方にとって、どんな住まいが必要なのかは、それぞれの置かれている状況によって変わります。
住宅の設計営業を生業としている自分は、どのような住まいがお客様に必要なのかを、日々お客様と一緒に考えています。
相談に来て頂く方は、新築、建て替え、リフォームと形は様々ですが、どの方も、より良い暮らし(幸せ)を叶えるために新しい住まいを求めていらっしゃいます。
しかし、中には、たくさんの検討の末に、住まいは今のままで良いという結論に達する方もいます。
その場合、社員としての私の成果は0どころか、実働分のマイナスになってしまいますが、「より良い暮らし(幸せ)を実現させる」という目的が達成されるならば、その選択も正しいと思うので、建築士としての私としては、良い仕事が出来たかなと思う部分もあります。
このことは、この記事の読み手の立場によって、捉え方は賛否あると思います。私も、その結論を聞かされた時には、費やしてきた時間と労力が活かされず、正直大変ショックでしたし、そのお客様のために何も出来なかったなという無力感にも襲われましたが、しばらく経ってから、そのお客様がどうしてその結論に至ったかを考え直してみたとき、「まぁ、これもありだよな。」と、妙に清々しく結果が受け入れることができました。
なぜなら、そのお客様が幸せを実現するために必要なことは、新しい住まいでは無く、家族と過ごす時間だったと分かったからです。
少し状況を補足しますと、そのお客様は、病気を患っている父親の看護や介護のため、親の家を2世帯住宅に建て替え、今よりもっとサポートがしやすい環境を整えようと考えられました。そして、やがて片親になった時も新しい家なら、安心して快適な生活が送れると考えておられました。しかし、具体的に検討を進めていくうちに、建て替え費用を捻出するためには夫婦がフルタイムで働かざるを得なくなり、父親の看護や介護のサポートの時間が十分に取れなくなってしまうということに気が付かれました。
住まいは幸せを実現させるための一つの手段です。
あらためて、大事なこと気付かせて頂きました。