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日本、2050年ネットゼロへ本格始動!脱炭素化への道筋を明示

日本政府(環境省)は、2050年カーボンニュートラル実現に向けた具体的なロードマップ策定のため、専門家や関係機関による検討会(中央環境審議会地球環境部会2050年ネットゼロ実現に向けた気候変動対策検討小委員会・産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会中長期地球温暖化対策検討WG 合同会合 以下検討会)を令和6年6月28日から令和6年12月24日の期間、計9回開催した。
検討会では、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、目標設定の在り方やカーボンクレジット、エネルギーなど多様な脱炭素に向けた選択肢が議論され、日本は2050年ネットゼロの実現に向けた直線的な経路と整合的で野心的な目標として2035年度、2040年度に2013年度比でそれぞれ60%、73%温室効果ガス削減を目指す案が明らかになった。

検討会では日本の目標設定に関して、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比較し1.5℃に抑える目標との整合性を保ちながら、2030年の46%削減、2050年のカーボンニュートラルを確実に達成するための道筋を示し続ける必要性が再確認された。
特に、「現実的な目標設定」と「野心的な目標設定」の間で意見が分かれる中、委員たちはより脱炭素に関する行動を積極的に起こし、企業や国民を巻き込んだ取り組みを進めていく方向性に意見を固めた。

野心的目標を実現するためには、脱炭素と経済成長の同時達成が鍵となる。委員たちは、脱炭素化が経済に与える影響を最小限に抑えつつ、GX(グリーントランスフォーメーション)製品の高付加価値化を進め、企業が取り組みやすい環境を整備することが必要だと指摘した。
特に、エネルギー政策の重要性は強調され、省エネルギーや再生可能エネルギーの拡大や原子力発電の利用について第1回から6回の検討会で議論された。エネルギーコストの上昇や国民の理解を得られるかが焦点となっており、安定的かつ低コストのエネルギー供給の実現には課題が山積している。特に中小企業の脱炭素化が大きな課題であり、企業のノウハウ不足やエネルギーコストの増加が障害となっている。検討会では、企業に対する適切な支援と、革新的な技術革新を促進するための投資強化が必要だという意見も多数みられた。これにより、脱炭素化に向けた技術革新と市場の発展を促進し、経済成長にも貢献することを狙う。

国民の行動変容も欠かせない。気候変動対策の成否を左右するのは、国民の理解と行動変容だとの認識が特に第1,3,5,6回の検討会で強調された。目標達成のためには、温室効果ガスを可視化させ交通や日常生活に伴う電力消費を含めたライフサイクルでの温室効果ガス削減や消費者への意識向上を目指すことが不可欠だとされ、報道機関等を巻き込み国民に対し環境価値を理解してもらうための説明責任や教育、啓発活動が今後重要な施策となる。

また、弊社(株式会社Jizoku)が従来から取り組んでいる「農業系カーボンクレジット」に関しても議論が行われた。令和6年9月20日第4回目の会議では、農林水産分野から日本全体の温室効果ガスが4.2%排出されていることを挙げ、稲作メタンを始めとして、温室効果ガスの排出量が少なくないという状況が指摘された。委員からはJクレジットの方法論が充実してきていることを念頭に、水稲栽培のおける中干し期間の延長が増加していることが示された。一方で、中干し延長実施に伴う収量の影響や生物多様性への影響を疑問視する意見があり、複雑なクレジット認証過程の見直しや政府や自治体の後押し、カーボンクレジット創出と農業課題解決の両立が必要であるとの意見がでた。農業系クレジット以外に関しても、国土の特徴を生かしブルーカーボンや森林吸収を促進させていくことが重要であるとの認識が示された。

これら計9回の検討会を通して、経路1として2035年度60%減、2040年度73%減を達成し2050年ゼロに向かう目標、経路2として2035年度66%減以上と経路1(直線)よりも急速な目標、経路3として経路1(直線)よりも緩やかな目標の3つの目標が示された。その中でも最終的に、「日本は2050年ネットゼロの実現に向けた直線的な経路と整合的で野心的な目標として2035年度、2040年度に2013年度比でそれぞれ60%、73%削減することを目指す」案が発表された。企業や国民に行動変容を促し、日本は先進国としてJCM二国間クレジット等で途上国と連携を強化し、世界全体として2050年カーボニュートラルを達成する必要がある。今後、気候変動対策の実行には、国や企業、国民の協力が欠かせない。

日本の温室効果ガス排出削減目標案


今回の検討会で提示された野心的な目標の達成には、企業や関係機関を含めた国民の意識改革が必要である。私たち一人ひとりの行動変容は、今後の脱炭素社会への移行にとって重要な転換点となるのではないだろうか。
ちなみに、1/26までこの削減目標に関するパブリックコメントを受付中なので、パブコメを書くことから始めてみるのはどうだろうか。

文責:株式会社Jizoku富山支部代表 関本有太郎

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