底
1964年11月3日(辰)、その少年は産まれて来た、
幼少期の彼は誰からも愛される少し身体の小さな少年で、名は篤(とく)と言う、
この少年には少し変わった所があり
眼には見えない何かを感じる感覚を持っていた
住処と言えばバラック小屋のようなトタン屋根にコーリタールで塗ったトタン壁
風呂も水道も無く、井戸水と、風呂は時々行ける銭湯だ
彼が家の前の土間で這いつくばって遊んでいると、
目の前に一匹の子猫が、
篤が指を差し出すとその子猫は篤の人差し指をペロリと舐めた
篤はびっくりする事も無くその子猫に手を差し伸べるとその子猫は地べたに寝っこがった、
それがおかしくて篤は笑い始めた、
ただ、篤の横にひとつ下の従兄弟がいたのだが、
その子には二人の光景は見えては無かった
篤は辰年生まれ、龍の落とし子と言われていた
眼に見える生き物達も篤の前ではおとなしくひとつ下の従兄弟の子は何時も篤の側にいた、
何かから守っているかの様に
そんな時ある異変が、
篤の周りに色んな動物が集まりはじめた
猫の不思議な行動、すり寄ってきたり
背中を逆撫でしながら威嚇してきたり
しかし篤の前では寝っ転がって甘える
人と違って他の生き物達は色んな情報を
持っている、特に猫達は猫ばた会議なる
猫の集会をしていると言う
だから、色んな情報を得て篤に持って来る
それは闇である、陽射しの影にある闇
人には見えなくても他の生き物達には見えて感じている、闇"
自然発生的な闇なのか、意図的にできた闇なのかは定かではないが
心の闇、暗闇、、、、
篤の眼にはある力が
俗に言う眼力 いぬ 猫 鳥 、、、
篤が彼らの眼を観ると不思議に静かになる
あたかも仔犬が親犬に服従するかの様に
しかし篤は従えるのでは無く寄り添う
だから自然と生き物達は篤の周りに集う
しかしその周りには、、闇も
闇 光の影には闇が付き纏う
薄暗い闇から、底の見えない程の闇
人が持つ心の闇
普段は気にしなければさほど気にならないのだが
一度その闇に触れてしまうと、、、
人には言えぬ何かが、、、