循環茶インタビュー(HAHAHAUS×京都ぎょくろのごえん茶×ひと旅のごちそう)
第一弾として販売がはじまった「循環茶-jyunnkannchi-」。商品が生まれた背景にはどのようなストーリーがあったのでしょうか。商品開発に携わった「HAHAHAUS」薬膳家の中西暁子さんと「京都ぎょくろのごえん茶(以下、ごえん茶)」の松田明大さんにお話を伺いました。一度口にすれば思わず旅に出たくなる、ごちそうのつづきをお楽しみください。
(文・並河杏奈)
-- おふたりは今回、どのような経緯で商品開発に携わることになったのですか?
藤本:中西さんとは学生時代からのつき合いになります。中西さんの薬膳の取り組みとも親和性が高そうな「入江豊三郎本店(以下、入江保命酒)」を訪れられたらと、「ひと旅のごちそう」の構想が生まれる前に鞆の浦を案内させてもらいました。
中西:そうですね。入江保命酒さんを案内していただいたときに、保命酒に入っている生薬の種類を伺って、なんとなくお茶になりそうなイメージが湧いていたんです。だから、商品開発の相談をもらったときはとても嬉しくてワクワクしました。身体を整える食事「食薬(しょくやく)」で口にされているものを中心に、薬膳や生薬に関心の高い方だけではなく、たくさんの方に飲んでいただけるお茶にしたいと思いました。
松田:僕と弊社の柴田には中西さんのような前触れはなく(笑)、「自分の名刺代わりになるようなお茶がつくりたいんだよね」と相談がありました。いつものカジュアルなトーンだったので、当初はどんな商品を考えているのかわからなかったのですが、商品化にあたって必要な手順をお伝えさせていただいたときに、藤本さんが思いのほか真面目に受け取っていることが伝わってきて。僕たちも生薬を使ったお茶をつくる経験がなかったので、最初のミーティングを終えたあとに鞆の浦を訪ねることにしました。
藤本:そもそも、お茶にしようと思ったのは「ともに、鞆の浦。」で僕自身が見つけたい地域との関わりを可視化でき、入江保命酒さんの魅力を一緒に発信できる何かをつくりたいと思ったことがきっかけです。実は、初回の「ともに、鞆の浦。」のあと、社長に30ページに渡る資料を持ってプレゼンしに行ったんですけど、そのときは残念ながら商品化が叶わなくて。保命酒の魅力を考えたときに、おふたりの仕事との親和性が高いと感じ、一緒に何かできるかもしれない!と思って声をかけさせていただきました。
松田:商品販売ひとつをとっても、製造や加工、販売元はどうするのか、販路はどう開拓していく予定なのか、一つひとつ話を伺っていきました。柴田からも「一体いくらで販売するつもりなの?」と度々つっこまれていましたよね(笑)。
中西:そういえば、一度ごえん茶さんに集まりましたね!保命酒を漬け込んだあとの生薬はどんな楽しみ方ができるのか、みんなで試作をした記憶があります。
松田:最終的に商品化には至らなかったけど、初期の頃は漬け込んだあとの生薬をどうにか再利用したいねって話していました。煮出してシロップっぽくしてみたり、苦肉の策でバスボムのようにしてみたり。香りも味もパンチがあるおもしろい素材だったものの、取り扱いが難しかったのを覚えています。本当に実験的だったから、中西さんが来てくれてようやく商品化のイメージができました。
藤本:確かに!最初は商品開発ありきではなく、入江保命酒から送っていただいた使用後の生薬でなにができそうか、とにかくみんなでやってみようというトーンだったね(笑)。
中西:そのときにイベントをやることが決まって。フードメニューはいろいろとアイデアが出ていた気がします。私は「薬膳参鶏湯」は商品化できそうだなと思いました。
松田:そうでしたね。保命酒さんが販売されている味醂や濃縮タイプのお吸いものを使ってフード・ドリンクメニューを考えて、鞆の浦をPRするポップアップイベントをやりました。
藤本:薬膳参鶏湯は本当にいいアイデアでしたよね!入江保命酒さんとしても課題に感じられているフードロスの観点から、漬け込んだあとの生薬や残り汁を使った新商品アイデアは、引き続き個人的にも考えてみたいと思っています。
-- 藤本さんと鞆の浦を訪れたときの印象はいかがでしたでしょうか。
中西:実は私、坂本龍馬がすごく好きで、鞆の浦は2回目の訪問だったんです。はじめて訪れたときは本当に坂本龍馬の印象しかなくて(笑)。藤本くんに案内してもらったときに、その土地をよく知る人に案内してもらえる楽しさを知りました。観光で訪れるだけでは感じられなかった、生活の温度というか匂いのようなもの。地元の方々とお話をしたり、入江保命酒の杜氏さんに蔵を案内してもらったり、小さいけれど温かい場所だと感じました。
藤本:入江保命酒さんだけ事前に約束をさせてもらって、それ以外はカフェ&ギャラリーSHIONを訪れたり、まちをのんびり歩いたりしましたね。
中西:それから、日頃薬膳をベースに活動している身としては、入江保命酒さんの歴史の深さや文化性にすごく惹かれました。昔からつくられてきた薬酒が、こうして現代に受け継がれていることをもっと多くの方に伝えたいと素直に思ったんです。「推しを応援したい!」みたいな純粋な気持ちで、京都に帰ってからも入江保命酒さんの商品を知人にプレゼントしていました。保命酒の香りがすると、鞆の浦で出会った人たちやまちの温度が鮮明に思い出されます。
松田:僕は2021年12月にはじめて鞆の浦を訪れて、お宿と集いの場「燧冶(ひうちや)」さんに泊めていただきました。お昼ごはんを食べに行った「お食事処おてび」では、小魚定食をいただいたのですが、カウンターでは藤本さんがすでに瓶ビールを開けていて(笑)。
松田:でも、一番印象に残っているのは、行きのバスで出会った老夫婦とおてびで再会できたことかな。ご夫婦が鞆の浦に向かっていることを知り、藤本さんがすかさずマップを渡したんです。マップを持って鞆の浦を歩き、おてびに来てくれたんだと思うと、なんだか僕も嬉しくなりました。訪れる先々で「あのマップはもうないの?配り切ってしまったよ」と声をかけられていて、藤本さんがすごく嬉しそうで(笑)。僕たちも普段、小売業をやっているけど、実際にお客さまが手にしてくれたり、飲んでくれたりするシーンを見かけることはほとんどありません。その風景そのものが、純粋にうらやましい光景でした。あとは、たくさんのおじいちゃん、おばあちゃんがまちを元気に歩いていることが印象的でした。
-- 「循環茶-jyunnkannchi-」をつくる際に心がけていたことはありますか?
中西:正直なところ、一般的には「薬膳」ってまだまだハードルが高いと思うんです。私は常にその間口を広げたいと思っていて、お茶はまさに入り口となる商品だと感じました。おいしく飲んでいたら「身体にもいいものだったんだ!」とあとから薬膳の存在に気づいてもらえたらいいなって。なので、飲みやすさはいちばん心がけましたね。香りが強く、複雑な味をもつ生薬を扱うからこそ、慎重に組み合わせや配分を考えました。お茶も、素材とあわせて身体を温める効果のあるものを選びました。
松田:味であわせていくのではなく、性質や効果を考えてブレンドするお茶を提案することは僕たちにとっても新しいチャレンジになりました。また、僕たちは普段から、ブレンドティーやパッケージデザインなど、お茶に関するオリジナル商品の開発も行っています。ですが、大体は納期が短いプロジェクトが多く、限られた予算やスケジュールのなかで僕たちが主体となり、できる限りの提案をします。今回は「藤本さんがどうしたいのか?」ということにとことん向き合うことができたのがよかったです。
藤本:先日、完成したお茶を入江保命酒の社長にプレゼントしたらとても喜んでくれました。さっそく店頭にも並べていただけて嬉しいです。お酒が好きな僕が薬膳のお茶を売るのは不思議かもしれないけど、本当にいいなと思えるものをこうやって誰かに届けていくのは楽しいですね。
松田:僕たちは、藤本さんがこれからお茶の事業で生計を立てると聞いているので(笑)、頑張ってほしいです。それは冗談で、こうやって地域ならではのお茶ができることで、お茶を身近に感じてもらえる機会が増えることは、僕たちにとっても嬉しいことなんです。藤本さんが旅をして、訪れた先々で新しいブレンドティーを提案してくれたら楽しいだろうなと思います。
中西:これまでプライベートでの関わりが多かったので、商品開発を通して藤本くんの考えや大切にしている価値観、鞆の浦への思いを知ることができたのもよかったです。
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「京都ぎょくろのごえん茶(京都)」、「入江保命酒(福山・鞆の浦)」にて、「循環茶」店舗販売してます。
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