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【ともに、鞆の浦(前編)】まちと出会い、関わりを見つけて“また行く理由 ”をつくる旅|広島県福山市

「ともに、鞆の浦。」は、鞆の浦と関わりを見つけたい藤本和志(ふじもと かずし)さんが案内人となり、クリエイターとともに旅をしながら、地域に対する想いや考え・地域との関係性を可視化するためのアウトプットをつくる試みです。
今回は、カメラマン、デザイナー、ライターの3名とともに滞在し、それぞれ映像、まち歩きマップ、記事を制作。noteでは2回にわけて、鞆の浦の魅力とインタビューを通して見えてきた藤本さんのまなざしをお届けします。
(文・並河杏奈 写真と映像・橋野貴洋)


さまざまな物語の舞台として描かれてきた鞆の浦

JR福山駅から鞆鉄バスにゆられることおおよそ30分。「鞆の浦(とものうら)」は、広島県福山市、沼隈(ぬまくま)半島の南端に位置する港町です。

周辺の島々や独特の地形によって海流が穏やかな鞆の入り江は、古くから「潮待ちの港」として栄えてきました。2017年には、国の「重要伝統的建造物群保存地区」の指定と「ユネスコ記憶遺産」の登録を受け、2018年には「日本遺産」に認定。鞆の浦から船で5分のところには、“仙人も酔ってしまうほど美しい”という由来から名付けられた「仙酔島(せんすいじま)」があり、こちらも瀬戸内国立公園に指定されています。

ほかにも、海事裁判の先駆けといわれる坂本龍馬の「いろは丸事件」、TVドラマ「流星ワゴン」やアニメーション映画「崖のうえのポニョ」のロケ地にも選ばれるなど、現在に至るまでさまざまな物語の舞台になってきた場所です。

案内人・藤本和志(通称:ふじもん)と滞在したクリエイター

広島県福山市出身。高校卒業までを地元で過ごし、大学で京都へ就職を機に東京へ移り、転勤で京都へ戻り、30歳の時に(株)ツナグムへ合流。「京都移住計画」など、生き方・働き方の選択肢を広げる事業コーディネートを行いながら、都市と地方をつなぐ推進役として、ローカルをフィールドに日々企画や事業づくりを行う。
旅が好きで日本各地を巡り、さまざまな地域と関係を築いたあと「深く関わるなら鞆の浦がいい!」と勝手に運命を感じ、ゆるやかに活動をはじめる。
多拠点・複数のなりわい・遊ぶような働き方など、自分らしい生き方を実験中。
Instagram:https://www.instagram.com/hitotabinogochisou/

⚫︎ともに滞在した参加クリエイター

橋野貴洋(右)/ カメラマン
フリーランスとして、人や組織のありのままを切り取る、写真や動画の撮影編集を行う。人がその人らしくいられるようなコーチングや対話の場作りも実施。
川浪ひかり(中・左)/ デザイナー
大切な想いをかたちにすることを軸に、グラフィックデザインを中心に制作している。福岡のまち、箱崎と門司港の2拠点生活中。自分なりの視点でまちを味わい気づくことが好き。
並河杏奈(中・右)/ ライター
京都移住のお手伝いと、時々ライティングの仕事などをしています。アイスランドとバスケとさば寿司が好きです。

「ともに、鞆の浦。」プロジェクト紹介映像&MAP!

滞在中に出会ったまちの魅力と、「ともに、鞆の浦。」のプロジェクトから藤本さんが広げていきたい “再び訪れる” 旅のかたちを、映像を通してご紹介します。

風景、気候、コミュニティ、いくつもの心地よさが重なるまち

--日本各地を訪れた藤本さんが感じている「鞆の浦」の良さを教えてください。

藤本:瀬戸内ならではの、おだやかな空気感、海に浮かぶ島々の風景、地域の人たちの人柄や暮らしぶり、まち並みのコンパクトさ、ふらっと訪ねたくなる距離感、もうすべてがいいよね。うまく言語化できないのがもどかしくもあり、だからこそいいとも思っていたり。訪れるたびに気持ちが穏やかになるし、鞆の浦に着くと肩の力が抜けていくというか。

▲地元の方に愛される「山好商店」のお母さん。鮮魚、てんぷら、惣菜、がす天などを販売しています。

--駅から30分のアクセスとは思えないほど時間の流れが穏やかです。

藤本:観光地でもあるけど、観光地化されすぎていないのも魅力だよね。飲食店や宿泊施設をされている方も、自分たちの暮らしの延長で仕事をしている印象があって。歴史も古いし、地域ならではの生活文化もある。港町だから昔から人の行き来もあっただろうし、小さいまちなんだけど閉塞感はない気がするな。気候や地形は人柄にも現れていて、陽気な人というか、明るい人が多い。

▲明治時代から続く保命酒の酒蔵「入江豊三郎本店」。

--年にどのくらいの頻度で訪れていますか?藤本さんが「鞆の浦に行きたい!」と思うのは、どんなタイミングなのでしょう。

藤本:1年に4,5回は来てるんじゃないかな。福山市街の実家に帰省する際に立ち寄ることもあれば、鞆の浦を目がけて来ることもある。行きたくなるタイミングは・・・そうだね、銭湯に入ってるときに一番思うかもしれない(笑)。日頃から、友人たちにも鞆の浦の話をしているので、訪れるときはできるだけまわりに声をかけるようにしていて。

▲今回宿泊させていただいたやさしいお宿「鍛冶屋(ひうちや)」を運営する羽田さん。

--どうして「鞆の浦」と関わりを見つけたいと思われたのでしょうか。

藤本:単純にこのまちが好きなんだろうね。僕自身もまた来たいと思っているし、友人たちにも知ってほしいと思っていて。全国各地を旅するなかで、地元であることに加えて、まちの規模や流れる空気など、いくつか “いいなあ” と感じる要素が重なったんだと思う。深く関われるなら、やっぱり鞆の浦がいいなって。

▲「カフェ&ギャラリーSHION(潮音)」を営む、佐藤さん。

-- いつ頃からそう思うようになったんですか?

藤本:人のご縁がつながりはじめてからかな。特に、鍛冶屋(ひうちや)の羽田さんやSHIONの佐藤さんなど、地域で事業をしている方々と深く話していくうちにだんだんと。それに、地域に関わる人たちや地元の方々と出会いながら、僕自身も鞆の浦のことをもっと好きになる機会を増やしていきたいなと思って。

だれが案内するかで、まちの見え方が変わっていく

▲「鞆の浦 a cafe・鞆一商店」を運営するオーナー。

--藤本さんは、単なる観光だけじゃない滞在のスタイルを好まれていますよね。

藤本:基本的に旅が好きだしね。訪れた先でたまたま出会った人との会話を楽しむこともあるけれど、移住関係の仕事をはじめてからは滞在の仕方が変わってきたと思う。地域に縁のある人に案内してもらう機会が以前よりも増えたよね。自分ひとりで地域を巡るよりも、だれかに案内してもらうとまちの印象が全然ちがって見えてくる。

--地域の「人」に出会うことも旅の目的になっていく。

藤本:地域への訪れ方や目的がもっと多様になるといいなと思う。観光だけではない滞在の仕方を提案していきたいし、僕自身がこうして実践していくことで「こんな楽しみ方があるんだ!」と、次に来るだれかの参考になったらうれしい。僕たちと興味感心が近しい方だったら、鞆の浦のみんなとも自然と会話が深くなるだろうし、お互いにとって学びや気づきにつながるかもしれない。そういう旅先での出会いって、心の豊かさにもつながると思うんだよね。

▲2021年4月にオープンした「NIPPONIA 鞆 港町」を運営する鳥井さん。

--私自身も今回が初の滞在でしたが、地域のみなさんと出会うなかで、すでに「また来たい!」と思いはじめています。

藤本:人を紹介したり、案内したり、あるいは交流の機会をつくったり。僕自身がやっていること自体は、京都にいるときと変わらないんだけど、鞆の浦は物理的な距離があるから、何かしらの目的や動機が必要になると思っていて。都市部とここを行き来するなかで、両者をつなぐ仕掛けをつくっていけるといいよね。

--まちとの接点やコミュニケーションのきっかけがあると訪れやすくなりますね。

藤本:今回コーディネートさせてもらったみたいに、地域の人と出会いながら関わりの入り口を見つける滞在を促していきたい。そういうきっかけがあると、訪れた人たち自身が“もう一度ここに来る理由”を見つけられるような気がするから。

▲前方には「仙酔島」が見えます。

藤本:僕自身も、まちの外から人を連れて来るような役割ができたらうれしいし、こうやって案内した人たちと何か一緒に新しいプロジェクトが生まれたら最高だと思う。もちろん、それ自体を目的にしすぎてしまうのは違うと思っているけれど、外から来た人とまちの人がゆるやかにつながって、経験やスキルをシェアできたらいいなって。

▲鞆の浦のまちを巡る移動販売車。

藤本:この土地に住んでいない自分ができることは限られてしまうけど、鞆の浦が好きで、訪れながらできることがないかずっと考えてる。観光客が来ている一方で、日帰りや短時間で帰る人も多いから。地域への想いをもったすてきな人たちがこれだけいるのに、それを知らずに帰っちゃうのはもったいないよね。だからこそ、まずは自分が出会ってきた人や場所、関わりしろを可視化していきたい。

--藤本さんご自身の関わり方や役割も探しつつ。

藤本:僕はどちらかといえば旅人気質だし、仕事では企画や広報などコーディネーター的な働きかけをするポジションになることが多くて。地域でお店をしたい!宿をしたい!というような、具体的な目標があるわけではないので、鞆の浦にとっても、僕にとってもいい関わり方を探しているところ。地域のファンになって何度も足を運んだり、地域の課題を知って一緒に考えたりするような、外から地域と関わりたい人のための接点をつくる役割が担えたらいいな。

(後編へつづきます)

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