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「海・山・街」の魅力と出会うワーケーション|福山関係づくりレポート

すてきな風景を眺めながら働いたり、リラックスタイムに美味しい地域の恵みをいただいたりと、「ワーケーション」の楽しみ方は人それぞれにあります。

バケーションのつづきにあるリモートワークやテレワークもひとつのかたちではありますが、その土地ならではの魅力的なプロジェクトや人との出会いから、何度も訪れる理由を見つけ、新しい関わりやプロジェクトの種を見つけていくような「ワーケーション」もまた、体験や滞在の幅を広げてくれるのではないでしょうか。

本レポートでは、福山出身で「ひと旅のごちそう(※)」を主宰する、藤本和志さん(一般社団法人 カベうち)にアテンドいただきながら、「食(味わう)」「場(出会う)」「旅(訪れる)」の3つをキーワードに、山側から海側まで福山の魅力的な方々と出会ってきた体験をつづっていきたいと思います。訪問先については記事の最後に一覧にしていますので、ぜひ、福山市でワーケーションを行う際の参考にしていただけたら嬉しいです。
(執筆・並河杏奈 / 写真・橋野貴洋)

※「ひと旅のごちそう」とは・・・日本各地の人と食のつながりを味わうプロジェクト。「つくる・出会う・味わう・訪れる」食べれば思わず旅に出たくなる、ごちそうのつづきをお届けします。
プロジェクトの詳細はこちら

「海・山・街・食」の魅力と出会うワーケーション参加メンバー

橋野貴洋(右)/ カメラマン / 大阪から参加
フリーランスとして、人や組織のありのままを切り取る、写真や動画の撮影編集を行う。人がその人らしくいられるようなコーチングや対話の場づくりも実施。
川浪ひかり(中・右)/ デザイナー / 福岡から参加
想いをかたちにすることを軸に、グラフィックデザインを中心に制作している。福岡県最北の港まち・門司港に移住して2年目。自分なりの視点でまちを味わうことが好き。
藤本和志(中)/ コーディネーター/ 京都・福岡から参加
広島県福山市出身。大学で京都、就職で東京、その後京都に戻りツナグム(京都移住計画)へ合流。地元福山と各地をつなげる活動として「ともに鞆の浦」「ひと旅のごちそう」を立ち上げる。
荒木祐美(中・左)/ コミュニティワーカー / 京都から参加
京都市左京区出身。暮らしや観光をデザインの視点で紹介するライフスタイルショップの運営、共創型シェアードオフィスのコミュニティマネージャーなどを経て、約10年ぶりに京都へUターン。
並河杏奈(左)/ ライター / 京都から参加
京都府亀岡市出身。地元での地域観光プロジェクトと、時々ライティングの仕事などを行う。アイスランドとバスケとさば寿司が好き。

明治時代からつづく「入江保命酒」の伝統的な薬酒づくり

2017年に伝統的建造群保存地区に指定されている鞆の浦でまず訪れたのは、1886年創業の「入江豊三郎本店(以下、入江保命酒)」。代表取締役社長の入江里彩(いりえりさ)さんにご案内いただき、​​2021年11月に改装オープンされた本店と蔵を訪問しました。

作業時の様子を実演してくださる入江さん。

保命酒は、もち米、麹(こうじ)、アルコール度40%の焼酎を原料に、お店ごとに異なるレシピで和漢の生薬を漬け込み、熟成させて完成となります。入江保命酒では16種類の薬味を使用。砂糖や人工甘味料を使っておらず、寒い時期には体を温め、暑い夏には夏バテの防止にもなる身体のためにいただきたい滋味深いお酒です。

リニューアルされた店内の様子。
店頭には、入江保命酒さんと藤本さんとのコラボレーション商品「循環茶 -jyunnkannchi-」が並びます。

入江保命酒を訪れたあとは、鞆の浦の街を散策。観光名所「常夜灯」や「医王寺」をはじめ、古くから「潮待ちの港」として栄えてきた景観やゆったりとした時間を楽しみました。

左上から順に、医王寺・常夜灯・展望カフェ&ギャラリーSHION・みなと夢ごこち。
「循環茶」は水出しでもおいしくいただけます。

ワーケーションの拠点として滞在させていただいたゲストハウス「燧治(ひうちや)」には共同キッチンがあり、地域の食材や保命酒で食卓を飾りました。近くには日帰り温泉が楽しめる欧風邸があり、心身ともにリラックスさせていただく滞在となりました。

“その土地ならでは”を大切にした「藍屋テロワール」のものづくり

つづいて訪問させていただいたのは、山野町にて藍の栽培から染料となる蒅(すくも)づくり、藍染までを一貫して行う「藍屋テロワール」。2023年に始動したオリジナルブランド〈terroir〉のジーンズやパーカー、靴下などの製品は、備後デニムをはじめそれぞれの産地とコラボレーションしながらつくりあげていきます。

大阪の大学を卒業後、広告会社で働いたのちに藍染の世界へ。

代表の藤井健太(ふじい けんた)さんは、古くから日本に伝わる「天然灰汁(あく)発酵建て」と呼ばれる伝統的な染め方を徳島県で学び、ジーンズの産地として発展した福山市にUターン。2019年に自身の工房を構えました。

耕作放棄地となっていた土地を耕し、藍を育てるための土づくりからスタート。3月に種を撒いた藍を初夏に収穫し、乾燥させ、冬のあいだに約18週間かけて蒅を仕込みます。
藍屋テロワールでは、手ぬぐいやハンカチ、トートバックなどを染める藍染体験も実施されています。藤井さんの情熱あふれるお話とともに、美しい藍色で旅の思い出をつくってみてはいかがでしょうか。

左から順に、展望デッキからの眺望、森林珈琲、詩吟クラブのみなさん。

山野町をはじめ、山側のエリアは車で巡ることをおすすめします。旧森林組合の土間のある建物をリノベーションした「森林珈琲」や、福山市内が一望できる展望デッキ、藤本さんの実家で地元の方々が取り組む詩吟文化など、地域の温かい風景と出会うことができました。

全国一の生産量を誇るくわいを代々育てる「喜多村ファーム」

福山市の特産物「青くわい」は、全国一の生産量を誇っており、「福山のくわい」として2020年に地理的表示(GI)保護制度にも登録されています。今回訪問した喜多村ファーム代表の喜多村眞次(きたむら しんじ)さんは、代々つづいているくわい農家です。

もともとは沼地に自生していたものを、1902年頃福山城の堀に植えたのが栽培のはじまりなのだとか。
瀬戸内の温暖な気候に加えて、江戸時代に福山藩が新田開発を行った際、芦田川(あしだがわ)の水を送るために網目状の用水路を増設したことから、多量の水を確保することができる環境にあったことも、くわい栽培が盛んになった一因だと言われています。

くわいの種。

実から芽が伸びるそのかたちから、くわいは「食べると芽が出る」=「目(芽)出たい」縁起物として、正月料理やお祝いの席で親しまれてきました。ホクホクとした甘みのある食感と特有のほろ苦さがあり、素揚げで食べてもおいしいです。

藤本さんとのコラボレーション商品「旅するごちそう缶」は、福山のくわいと保命酒、丹後の鹿肉、瀬戸内のレモン、糸島の塩を使ってアヒージョ風に仕上げられています。

福山くわい出荷組合では、冬場に迎える収穫のタイミングで人手を募集されているので、ご興味のある方はぜひ連絡をしてみてください。

山・海から街中まで、たっぷりと魅力に触れた3日間

最後に参加メンバーのみなさんから、それぞれ印象に残った写真1枚と感想をいただきました。

●橋野貴洋 / カメラマン
今回ツアーをご一緒するなかで感じたのは、食・場・旅が、「人」という軸で全て混ざり合っているということ。景色や食べ物だけでもその土地の魅力を楽しめるけれど、人を巡ることで、そのエリアを深く知ることができ、少しだけ「関係者」になれた気がしています。藤本さんが様々な人を巡ることで”媒介者”となり、これまで繋がらなかっただろう人やプロジェクトが繋がっている様子にも巡り会えて、とても面白い体験でした!
●川浪ひかり / デザイナー
2回目の福山ツアー、海から山から街まで巡るぜいたくな時間でした!藤本さんのアテンドで出会った皆さんは自分の手で仕事に真摯に向き合っている方々で、直接お会いして触れた姿勢や笑顔に刺激をいただいたなあ、と日常に帰った後も仕事をしている中で時折思い出します。また旅の途中藤本さんの実家に行き、お父さんたちとの出会いにほっこり&披露してくださった「詩吟」の姿が感動的で、より思い出深い旅になりました!
●荒木祐美 / コミュニティワーカー
「海」「山」「街」、どのエリアも発見とおもしろさに溢れていましたが、なにより行く先々で出会う人々が印象的なツアー体験でした。福山のみなさんはシャイな方が多い印象ですが、私たちの車が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けてくれる。その場所から“帰る”のではなく“行く”ような不思議な感覚をいただいて、またこの街に“帰りたい”と感じた、「人」の魅力が忘れられない滞在になりました。
●並河杏奈 / ライター
2回目の福山で、念願の「自由軒」を訪問。お母さんたちのカウンター内での無駄のない動きと伝言ゲームのように通っていくオーダーは圧巻です。名産の保命酒やくわい、藤本さんのお父さんたちが継承する「詩吟」など、福山のみなさんが積み重ねてきた毎日が、とてもスペシャルな体験に感じられました。また、燧治さんや藍屋テロワールさんのような同世代の新しい挑戦にも触れることができ、ますます福山のみなさんのファンになりました!

最後に、今回のワーケーションをコーディネートいただいた藤本さんからも感想をいただきました。

6年前から京都を中心に全国各地に関わる活動を進めるなかで、地元である福山の魅力やおもしろさに気づきはじめ、2021年には鞆の浦での活動「ともに鞆の浦」、2022年には福山の食材を使った食のプロジェクト「ひと旅のごちそう」など、福山と各地をつなぐ活動がスタートしました。
その延長で福山市さんともワーケーション事業をご一緒させていただき、福山移住者のインタビュー調査、イベントの開催、クリエイターと現地を巡るプログラムの企画を行っています。

地域内外で顔が見える関係性を築き、コラボレーションが生まれる土壌ができれば、関わる人が増える分、福山をPRしていく輪が広がっていくのではないかと思います。その続きに、福山で事業をはじめたり、移り住む人が増えるとさらにおもしろくなると考えています。
地元・福山の魅力的な地域や人をキーワードに、食(味わう)・場(出会う)・旅(訪れる)を提供し、これからも福山との関わりを広げていきたいです!

「海・山・街」の魅力と出会うワーケーションで巡ったスポットをご紹介
〈海側〉
【景色・歴史・まち歩き】常夜灯・医王寺
【食】入江豊三郎本店・SHION・みなと夢ごこち
【宿泊&ワーク】燧治(ひうちや)
▼関連リンク
ともに鞆の浦
〈山側〉
【景色】展望デッキ
【食】喜多村ファーム・森林珈琲
【藍染体験】藍屋テロワール
〈街中〉 【景色・歴史・まち歩き】福山城
【食】自由軒
【宿泊&ワーク】AREA INN FUSHIMICHO

  • 「ワーケーションふくやま」藤本さん紹介記事

  • 藤本さんのプロジェクト「ひと旅のごちそう」

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