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何を求めて


展覧会で賞をとれるような

すごい絵は描けない

技術もない 知識もない

私の絵を初めて

私は現実の世界で

この眼で観た

沢山の並んだ絵の中で

すぐに見つけた私の絵

まるで我が子を

すぐに見つけられるような素早さで


薄い うすい色

インパクトのない絵

あの時の私は咄嗟に

「恥ずかしい」と思ってしまった


何を求めていたんだろう

賞をとることだったのだろうか

誰かに認められることだったのだろうか

たくさんの力作の絵に紛れて

何を求めて私のこの絵は

ここに並んでいるのだろう



出品して、ちゃんと条件を満たせば

入選をさせていただける

小さな街の小さな展覧会


私の中では

とてもとても好きな絵だったはずなのに

並べて飾ってもらえれば

その絵が喜ぶと思ったのに


その飾られた絵を見た私は

周りと比べて「劣っている」と思ってしまった




その時、ポキッと心が折れた気がする

隣りで一緒に見てくれた夫も

「あの時、◯◯の心がポキッて折れた音、聴こえたよ」

と後で話してくれた

「最近、絵を描く気力がない」

と打ち明けた私に


「でも俺は◯◯の絵が一番好きだったよ」

とも言ってくれた


私を励ますためだったとしても

その言葉がとても嬉しく、救いだった


「ごめんね」


時間が経ち

少しでもそう思ったことを

今はその絵に謝りたい

その時の私にも謝りたい



すごく立派なものは描けないけれど

私の心の中を描けるのは私だけだよと

言ってあげたい


「自分の絵を描こう」


好きだから続けてきたんでしょう

周りと比べて小さくならないでと


私は私のままでいい

誰かと比べなくていい


私の目に映るものを描いていったらいいよと





あの時そう誓ったのに

あれからどうしても

やっぱり絵を描く気力が湧かない

何を描いていいのか

今まで何をどうやって描いていたのか

もやもやしたまま

時間だけが淡々と過ぎてゆく


描くことを忘れてしまわないだろうかと

焦る気持ちを抱えながら


ベランダのプランターの茶色の土から

新しい緑の芽が出るのを心待ちにしながら

今朝も水をあげている



「窓辺にて」



2024.9.28 (鉛筆、水彩色鉛筆) hoho





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