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【LOVE SONG】
まんだ林檎氏による短編漫画。1998年発表(収録している単行本は2007年)。
いわゆるBL漫画であるが、濡れ場の無い恋愛ものである。
当時の平凡な高校生「波広」を主人公とし、性同一性障害をもつ同級生「刀根勇治」との高校時代を描いた物語。
性同一障害についての医学的な知識も人権運動的な素養もない、当時の等身大の一高校生男子である波広が、「性同一性障害」だという刀根を気遣い、時に失言し反省を繰り返しながらも、懸命に手探りで友人関係を築いていこうとする姿が丁寧に描かれている。
高校生活の終わり間際になって、刀根は波広とカラオケに行き「女になる」と決意と波広への愛を告白する。しかし、あくまで「よき男の友人」としてしかその気持ちに応えられない波広へのそ想いを込めたラブソングを歌う。
2021年1月、作者のまんだ氏がツイッター上で本作を公開したところ、トランスジェンダリスト達がバッシングに狂奔し、作者を謝罪に追い込んだ。
なぜバッシングされたのか?
それは、本作をBLと呼ぶのは、刀根を男性とみなしていることになり『トランスジェンダー女性は女性である』という彼らの教義に反するというのである。
そしてあろうことか「性同一性障害という言葉は間違っている!」と叩き始めたのである。
まず、もともと作中の時期(高校時代)において、刀根の性自認は男性である。だからこそ彼はカラオケボックスで波広に対し「女に『なる』」と決意を述べたのである。
したがって、性自認を基準とするならば、作中の刀根はまさしく男性で間違いなく、従って本作はBLということになる。今現在自分を女だと思っている人間が「女になる」なんて言うはずがないのだから。
また本作は平凡な高校生が、当時手に入れられた情報をかすかな手掛かりに、四苦八苦しながら友人との関係を手探りで構築していく物語である。
2020年代の一部運動家が振り回しているLGBTの概念が、1998年当時の高校生の脳にタイムスリップして「正解」「真理」として無双しているような話にしたりすれば、時代考証的におかしくなるし、なにより本作の味わいが消し飛んでしまう。
にもかかわらず、こうしたトランスジェンダリスト達はそれを認めず「トランスジェンダー」だと見なした刀根というキャラクターがそう描かれていないと怒り狂った。
なぜなら彼らは人をトランスジェンダーと認定することについて、非常に他責的な傾向があるからである。
自分がトランスジェンダー(=仲間?)だと思い込んだ相手――それが実在人であれキャラクターであれ――がそうでなかった場合、それが相手の意図したことであろうがなかろうが、それを相手や作者の責任にしてしまう。そのための「クイアベイティング」という言葉さえあるのだ。
本作へのバッシングはそうしたトランスジェンダリスト達が、過去の作品叩きに狂奔した悪しき事例であったと言える。
参考リンク・資料:
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