【焼かれるべき絵/焼かれるべき絵:焼いたもの】
嶋田美子作。1993年。
昭和天皇の立ち姿を描写した版画(エッチング)作品が『焼かれるべき絵』であり、これを「焼いた」あとの作品である『焼かれるべき絵:焼いたもの』と対になっている。
藤江民【Tami FUJIE 1986 WORK】と同様、富山県立近代美術館事件(いわゆる天皇コラージュ事件)に対する抗議として生まれた。
同事件は富山県立近代美術館で開催された「'86富山の美術」展に出展した大浦信行『遠近を抱えて』が、昭和天皇の写真も使用したコラージュ作品であったことから右翼団体が抗議し、これに応じて美術館が作品の売却・図録焼却という一方的な処分に及んだ事件である。
当然ながら図録には『遠近を抱えて』つまり天皇の写真が含まれており、つまりは美術館は天皇の写真を焼いたことになる、天皇の写真をコラージュにしてはいけないのに、焼くのは良いのかという矛盾を突いた、抗議の意味で作られた作品である。
嶋田は作品を作っただけでなく美術館に対し、本作を焼いた灰を同封して抗議の手紙を送った。
あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」では両作品のほか、その灰と手紙、焼いていく途中経過の写真、美術館からの返信もあわせて掲示していた。
なお作者の嶋田美子氏は、同展の中止事件について「今回の検閲の核には日本政府の、また日本社会の底深い【ミソジニー】があると思います」と謎発言をしている。
同展に対する批判の主なものは昭和天皇等に対する無礼な表現や反日的表現(これらの理由による中止を筆者が正当なものと見なしているわけではない)であり、ミソジニーやアンチフェミニズム的言説はほとんど関与していない。
参考リンク・資料:
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