【アラートループ事件】
※【無限アラート事件】【兵庫県警ブラクラ摘発事件】からも転送されます。
2019年3月、ネット掲示板に「不正プログラム」へのリンクを書き込んだ人物5名が、刑法168条の2第2項の不正指令電磁的記録供用未遂罪ので、兵庫県警による摘発を受けた事件。
無限アラート事件・兵庫県警ブラクラ摘発事件などとも呼ばれるが、本件で使われたプログラムは実際にはブラクラ(ブラウザクラッシャー)ではなく、単なるジョークプログラムである。
同月4日、39歳と47歳の男性が家宅捜索を受け、13歳の女子中学生1名が補導されたことが報じられた。また3月26日には、中学生と大学生の2名も摘発されていたと続報。
いずれも最終的には不起訴になっている。
不起訴理由として検察は「起訴猶予」としており、これは「犯罪であることは譲らないが、今回は勘弁してあげただけ」と取り繕うための名目と考えられている。
件のプログラムは、画像のような猫のAA(アスキーアート)が表示され「OK」ボタンを押しても何度でも出て来ることで、知識のないネットユーザーを慌てさせるものである。
なお実際にはブラウザごと閉じてしまえば簡単に消すことができ、他の異常動作を端末に引き起こすこともないので、いわゆるブラウザクラッシャーやウイルスプログラムとは異なるものである。
この刑法168条の2~3条に書かれている一連の「不正指令電磁的記録に関する罪」は、いわゆるコンピュータウイルス対策として2011年の刑法改正で新設された犯罪であるが、当初からその定義が不明確であるとして批判が多かった。
実際に成立時には「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」が出され、「その捜査等に当たっては、憲法の保障する表現の自由を踏まえ、ソフトウエア の開発や流通等に対して影響が生じることのないよう、適切な運用に努めること」と謙抑的運用を指示している。
そもそもジョークプログラムについては法務委員会で「もちろん本来入るべきではない」ことが討論されたことも明らかになっている。
一般的にも、刑事司法は抑制的であるべきことが警察官職務執行法等で定められており、今回のような単なるジョークプログラムによる刑事司法を用いた制裁は、本来あるべき謙抑性をかなぐり捨てたものと言え、多くの批判が集まった。
日本ハッカー協会では、会員の加藤公一・高木浩光・とつげき東北の3氏が発起人となって被疑者のための寄付金を公募、一日で約700万円の集金を達成している(現在は募集を終了)。
また本件に使われているプログラムJavaScriptの生みの親であるBrendan Eich氏が「(自身も開発に携わった20年前のブラウザである)Netscape4でも止められる」と日本警察の過剰反応を批判したことも話題となった。
【みんなで逮捕されようプロジェクト】
本件を受けて、先述の加藤公一(はむかず)氏がTwitter上で提唱。場をソフトウェア開発のプラットフォームであるGithubに移行して「みんなで逮捕されようプロジェクト」と称する抗議行動を開始。有志によって27か国語以上に翻訳され、世界に逮捕の不当性を訴えた。
これに対して兵庫県警サーバー犯罪対策課がメディアの取材を受け「自分の子供にもそんなことが言えるのか!」と反発したことが報じられている。
参考リンク・資料:
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