[読書メモ]『イギリスからの手紙』

p6
本当いうと、例の臆病風に吹かれています。かえすがえすも来るんじゃなかったナ。

pp39-40
この“terrible!”といういい方は、イギリス人はよく言うので、何でもないことでもすぐ言うのです。

p40
しかし、何しろ、天気が悪いから、あまり乾かないそうです。そのため、どの町にもコインランドリーが盛業で、面白いです。

p47
イギリス人は、割合に規則などに対して、ゆるやかで、話せばわかるというところがあります[。]

p51
そこで僕は、自分でもこんなに心臓が強かったかとあきれる位、大いに外交をしまして、何人ものイギリス人と話をしました。

p52
しかし、言葉は、分らなくても恐れずに当ってみる、という心臓が大切でしょうから、そういう図々しさと、外向的な性格に僕を生んでくれた両親にまずは感謝しております。それに僕はオシャベリだから、だまってるよりも、英語ででもよいから、何か話していたいのだよ。それが大切なことなのだろうと思います。

p56
僕は車がないと、欲求不満になっちゃうのでこれは、必要経費です。

p79
それで、急にやる気がモリモリ出て来ました。昨日から、調査は本腰を入れてバリバリはじめました。

p81
僕らの子供だから、決して心配はいらないよ。

p96
(どっちもイタリー製ですが、思わずタメ息が出るくらいはき心地がよい。伝統の力だね)

p114
この公演は、トリプルキャストで、昨日見たのは、その、ナントカカントカスキー、とナントカコーワ、というような名のバレリーナ主演でしたが、そんなことはどうでもよい。名前を憶えたりして喜ぶのは愚か者のわざです。全部で2時間余りでしたが、少しも退屈せず、終りには、つい大拍手をしてしまいました(日本のみたいに、義理拍手じゃなくってね)。

p119
イギリスは、平らなところは殆どなく、みな、のんびりと、ゆたかに地表が波うっています。

p129
最小限の規制しかしないのがイギリス流で、これは日本と全然違います。

p130
パトカーなどは、遊んでいるようなもので、勿論ネズミとりなどという愚かなことはしません。

p134
彼等は、もう考えぬいた末にこうしているわけだから、このやり方は、決して変えません。

p139
子供たちはみな、とくに中の女の子なぞは、天使のように、天使よりもっと可愛い。すごいよ。

p176
パーティーは、子供どおしが、人対人であそぶための機会として、人対物にならないように、ということも、きっとその目的の一つだろうと思います。

p177
ローゼンさんは、「子供を育てることは、最も大切なことです」というのがログセで、彼は「子供本位」をモットーとし、親子が離れるということは全くしないので、見ていると大変ですが、しかしまた実にたのしそうでもあります。

p179
雑用がないと、人間、文化的に向上しますな。

p210
参(ちな)みに、英語では、マーガリンとはいわない。「マージェリン」というのだよ[。]

p216
彼らは、自らの信念を圧するものに対しては、“Fight”するを以て旨としています。戦うべし、というのです。「長いものにも巻かれない」これがイギリス魂であり、大英帝国を築いた所以です。

p222
演説癖のある黒人男(こりゃ参るぜホントに)

p262
僕は、信念として、女を買ったりはせぬので、ああいう者に金を投じようという了簡の男の気が知れないけれどねえ。

p263
万事この調子で、彼は、私に尽すこと執事の如く、保護することシークレットサービスの如く、僕は彼といる限り、何もすることがないのでした。

p265
どうも、さすが大英帝国のやせがまんというものだったな。

p270
かけっこは五位だったそうですが、がっかりすることはないぞ。ああいうものは、一生けんめい走れば、それでよいのだよ。何位であったかは、どうでもよい。お父さんもかけっこは遅かったのだからね。そのかわり、勉強で一とうになればいいじゃないか。それなら、大地にも出来るだろ。「一生けんめい、まじめに」これが大切だからね。

p270
他の先生たちが、お父さんが勉強ばっかりしてるので驚いています。お父さんも一生けんめいだ。大地も一生けんめい勉強して、大きくなったら、イギリスへ来るかい。きれいなすばらしい国だぞ。

p280
近頃、英語のコツをひとつつかんだことは、これはサイモン・クロウもいっていましたが、聞くより話す方がやさしい、ということです。だから出来るだけ相手にしゃべるチャンスを与えぬように、きれ目なくしゃべってるとよろしい。だから、サイモンにしても、シャモニー先生にしても、概してみな、口数が多いわけです。内容は何でも良いわけ。このごろは、日本語で考えて訳すという手順はやめて、とにかく舌先で勝負することにし、思い浮ぶまま、出来る限り早口でまくしたてるようにしています。それで「オッ、この人はうまい」と思わせせちまうんですな。しかし、すると外人連中は、もうふつうのスピードで話してくるので、聞く方は大変ですが、これも慣れで、半分位分れば、何とか対応は出来るさ。

p289
とかく長、なんてつくと、ロクなやつはいない。

p289
常軌を逸した秀才ですね。

p290
俗論にまけるな、東洋文庫書報に拠って毅然として、俗学者を討つべし、とありました。

p297
Boston 夫人は、車に酔うので困るのだそうですが、僕の運転は、極めて穏やかで、とてもよろしいと上機嫌でした。

p297
夫人の最も留意せるところは、その文体が、決して Childish でない、全く adult の文体を以てする、というところなのだね。それには一つの信念があって、子供にとっては、大人の文体、大人の語彙というものは、常に〈あこがれ〉のひとつで、そういうものを読みかつおぼえることは、子供たちにとって大きな Excitement である、と、彼女は、この信念に基いて、少しも子供に妥協しない確固たる文体で書いておるわけです。かかる原文を、イギリス語正調を以て読んだときの、美しい音声の流れ、というものは、所詮、他の語に移しがたい。

p301
とりわけ、春菜の砂場であそんでる写真は、今まで最高の出来じゃないか。いや、将来ああいうタイプの、まさに傾国の美女になるであろうことがありありと分る、まことに結構な写真です。

p315
コツコツ自分で作ってごらん。それも良い勉強だぜ。イギリス人は、何でもこうやって自分で手作りすることが、子供の教育の第一と思っているので、大人になってからでも、何でも自分で作ったり工夫したりします。

p347
もっともふつうの人はうっとおしいかもしれませんが、僕は、いつも靴下をはいてないと足が寒くてねられないので、別に何とも感じません。

p353
あのように甘いものばかりたべ続けて、しかも「ウン、Delicious!」とかいって平気なのは、ちょっと神経をうたがうな。やっぱり味覚がマヒしてんだね、イギリス人は。もっとも、これは、一種、おセチ料理のたぐいだから、日本でも似たようなものかな。

p360
なにしろ、「工夫の人」ですからね。オイラは。

p364
このローストチキンなどは(イギリスへ来て、ローストチキンは、数えきれない位たべましたが)、いまなお、その風味が舌先に残っているほど、絶妙な味がしていました。

p365
「どうだい、この、a lot of Sugar というのが、ちょっと気がつかない、この味のヒケツなのだよ。意外だろう?」と彼は説明しました。もっとも、これらは、「手かげん」でやるので、やはり、ハワードさんとか、僕とか、然るべき味覚の主がやらないと、ちゃんとしたものは出来まいから、まあ、帰ったら作ってあげよう。

p373
何ごとも、一応の目鼻がつくまでは いっしょうけんめいに努力するのが僕の方法でありますから……。

p376
人のためになってあげることは、廻り廻って、また自分のためになるでしょうからね。

p381
どうも、とかく、人とちがうことをやろうとすると、100倍面倒になるように出来てるね。しかし、こうして、一つ一つ、人はリュウになってゆくのだよ。

pp405-406
やっぱり、来てみてよく話し合って、まず信頼関係を作り、それから、ことをわけて交渉すれば、道は自ずと開けます。これは、かねて思っていた通りでした。そうなってくると、何の学問でも、結句、パーソナリティの問題に帰って来るというものでしょう。

p402
「こういうバカげたことを、大まじめにやるというのはイギリス人の美風だねェ」といったら、スティーヴンが「いや、そのとおり」といって、ニヤッとしました。


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