夏本番への予行演習
去年の秋、森の古屋に住むことになった時
夏にはこいつをそばに置こうと決めていた
日本の家屋もだんだん機密性が良くなって
殺虫剤の性能もあれこれいろいろ進化して
無臭や微香や無煙が好まれるようになって
久しくこいつを見かけていなかったけれど
この古家にしっくり来るのはこいつだろう
暑かった今日も暮れて、
畑終わりのひとっ風呂そして冷えたビール
大好きな森に続くガラス戸を全開にしたら
網戸越しに吹き込むひんやりした涼しい風
緑の渦巻の上をそろりと進む小さな赤い火
ふんわりふわりと漂ってくる除虫菊の紫煙
ふとよぎる昔の記憶 黒光する実家の縁側
ああ、いいなぁ。
もうすぐ夏がくるんだなぁ。
まだ梅雨入り前の気まぐれな暑さだけど
一足先の予行演習。
よっしゃ、こっちは準備万端。
梅雨も、夏も、いつでも来やがれ。