【挫折しまくった可視化】それでも諦めきれずに完成させた「DP Note」
DP Noteは、災害データを可視化するWEBアプリサービスです。地図情報をメインとして、災害データを3Dマップや防災図解に可視化することで、統計的に得られる教訓や減災に活かせるのではないかと思い、日々、情報発信しています。
日本の災害の現状
日本で発生する災害は、地震、台風、津波、土砂災害、火山の噴火、大雪など、様々な災害が起きています。季節ごとに起きる災害が異なるなど、まさに【災害大国】と言っても過言ではないくらい、厳しい環境の中で生活をしていると思います。また、昨今では、ゲリラ豪雨や夏の猛暑なども起きており、防災が大切な時代になっていると改めて感じています。
災害に対する人々の認識
災害大国と言われる日本において、人々の災害に対する認識はどのようになっているでしょうか?【正常性バイアス】という言葉があります。予期せぬ出来事に対し正常心を保つための人の特性のことです。このバイアスがかかると、災害時に大丈夫と思い込み「避難行動を取らない」というリスクがあります。また、災害が起きた直後は防災に関する認知は上がりますが、時間の経過とともにその出来事のことは忘れられていき、防災は大切とわかっていても、なかなか取り組めなかったり、継続できなかったりするのが、現実だと思います。 どのように次世代に伝えていくべきなのか? メディアなどでは、過去の災害を報道するにあたり、災害の映像を直に流すことがありますが、人により、精神的ショックを受けることもあり、そのような方々には心理面・精神面でのフォローも必要になってきます。災害の教訓を学ぶことは大切です。ただ、テレビ、新聞、ネットニュースなど、様々な媒体を通して、どのように次世代に伝えていくべきなのか?私は、ずっと考えていました。
教育分野から考えてみる
教育分野の観点から災害を捉えてみます。子ども達のプログラミング教育が必修化され、小さい頃からパソコンやスマートフォンに触れる機会が多くなりました。最近のゲームなどのクオリティもとても高く、映像などに対し、目が肥えている学生の子たちが増えたように思います。今までと同じように、アナログな伝え方では足りないのではないか?そのように考えるようになりました。
DP Note誕生!
災害の教訓を伝えていく、そして、子ども達に防災について関心を持ってもらう、ここを掛け算して考えました。災害の映像ではなく、統計的に災害を捉えて教訓に活かすことができるのではないか?地図にしたり、グラフにしたり、図解にしたりするなど、様々な可視化をすることで、ビジュアル的に防災に関心を持たれる方々を増やせるのではないか?そのような思いから、DP Noteは誕生しました!
可視化の内容
国土地理院のGLやDeck GLという3DグラフィックのAPIを用いて、可視化しました。熱海市の土砂災害では、山間部のどこから土砂災害が起きたのか、目に見えて分かります。
天気予報では、明け方や夜のはじめ頃のような用語が使われると思いますが、具体的にどのくらいの時間帯を指しているのか、興味が湧き、24時間の時間軸で表現してみました。
我が家の防災ロードマップは、防災に初めて取り組む方々を対象に、どのような順番で防災に取り組めば良いのか、分かりやすく図解にしました。
トンガ火山噴火に伴う潮位変化を可視化したマップは、改めて地球全体で見てもこれほどの距離が離れた地域での災害が日本にも影響を及ぼすことが分かります。日本だけではなく、他の国々の災害についても注視する事が重要だという教訓が得られるのではないでしょうか?
情報発信の成果
普段のSNSの投稿の平均は3〜4,000ですが、可視化や図解ツイートだと、20,000〜25,000インプレッションに伸びていることが分かりました。特に、日本全国ダムマップは、100,000インプレッションを超える驚異的な伸び率となっており、多くの方々に関心を寄せていただく事ができました。こうしたことから、可視化や図解による防災情報の発信は、多くの人々に届けられる事がわかりました。これからも継続して情報発信していきたいと思っています。
実績
Geoアクティビティコンテスト2022
防災減災賞
ヒーローズ・リーグ2022
PLATEAU賞
LODチャレンジ2023
防災LOD賞
開発者あとがき
趣味から始めた活動が、シビックテックに進化し、さらに自分が研究分野に戻りたいと思うようになるなんて、夢にも思ってなかった。
「本当は研究がしたい」
妻と結婚する前、そう打ち明けたことがある。笑われるかなと思った。
妻は一言「後悔しないようにやったら?」背中を押してくれたことに、素直に感謝している。でも、今から研究分野に戻ると言っても、ハードルが高すぎた。
僕の最終学歴は大卒。だから、まずは院試受けて、修士、博士課程と進み、ポスドクとなり...40を過ぎてしまう。今出来ることをやりたい!だから、もう一度、調べてみた。学会に入れば、個人でも論文を投稿できることを知った。これだ!!そう思った。
第一志望に受からなかった大学時代。浪人する気にもなれず、そのまま進んだ。何かに没頭することが欲しかった。でも、生涯をかけて研究する分野に出会えなかった。友人達は院に進む中、僕は就職する道を選んだ。
社会人になる1ヶ月前、東日本大震災は起きた。
テレビで津波の映像を見て、身体が震えた。こんな大規模な災害が日本で起きるなんて...。その時の僕には、募金ぐらいしか出来なかったけど、
社会人になって、自分に出来ることを探しなさい。
そう問いかけられている気がした。
自分に出来ることは何だろう?
5年ぐらい経ち、スマホも当たり前のように使われるようになった。もともとプログラミングのスキルはあったから、アプリを作ろうと思った。そのとき、閃いた。「あっ、防災アプリを作ろう」生まれたアプリが防災INSIGHT。
災害を統計的に3D等で可視化して、分析してみたい。イメージはあったけど、家のPCのスペックと僕のスキルがイメージに追いついていなかった。何度も勉強した。でも、独学の限界を感じた。一度は、断念した。
悔しかった。そう、『悔しかった』の。
悔しい...?もともと負けず嫌いな性格。学生時代は友人達と切磋琢磨してた。大学に入り社会人になり、どこかで悟りを得たみたいに、感情的な自分が何処かに行ってしまっていた。そんな自分が「悔しい」という感情を何年振りかに感じたの。だから思った
「自分のやりたいことが見つかったかもしれない」
結婚して、書斎を設けた。人生で初めてMacを買った。PCスペックが上がった。防災INSIGHTをバージョンアップするたびに、すっかり、自分のプログラミングスキルも向上してた。
今の自分なら出来るかもしれない。再び、災害データ可視化に挑んだ。
生まれたサービスがDP Note。
ブログとか、過去にもやってたんだけど続かなかった。このDP Noteは1年以上続いてる。
今年9月、ニュースで SDGs達成目標が、ほとんどの国々で絶望的と知った。これまで、防災だけだったけど、もっと自分の活動を広げてみよう!
教育、子育て、観光、医療、環境、あらゆる分野にデジタルは存在する。
こういう論文書けそうだな、次々にアイデアが湧いてくる。
直感した。
間違いない。自分のやりたいことはこの分野なんだと。
形として残したい!
もう、理性で諦めていた感情を抑えることは出来なくなってた。
「研究がしたい!!!」迷いは無かった。
年明け、ある学会に個人として入会することにしました。そこで、論文を書きます。テーマも3つぐらいは、既に決まっている。博士号が取れるかとか、研究室に人材募集はあるのかとか、考え出すと厳しそうだけど、とりあえず、自分のやりたいようにやってみようと思う。
今の僕の活動は環境に影響されない。パソコンとネットがあれば、いつでもどこでも無料でできる。何も考えなくて良い。仕事するときはする。家で自分の好きなときに好きな研究で没頭する。
ようやく『やりたいこと』が見つかりました。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。
今後の展望
データ加工についてです。国で扱うデータはCSVやPDFなど、様々な形態があり、例えば、気象庁の震度マップは度数法で緯度・経度を表記している事があり、マップに載せるためには、10進法に変換しなくてはいけません。どうしても、データ加工に時間がかかるため、簡単に変換できるようなツールが必要かなと感じています。2023年現在、Denoやpythonを用いた変換ツールを開発しています。