コロナ禍でトレタが信じた未来と、トレタを信じてくれたお客様の話。(そしてその成果)
トレタ代表の中村です。このエントリーは、トレタアドベントカレンダー2021に参加しています。大トリの25日目!
さて、今年も大詰めです。せっかくまたこうしてアドベントカレンダーに記事を書く機会を得ましたので、この1年を振り返り、そしてこれからのトレタについて整理したいと思います。
とにかく辛かった
まずこの1年、というより約2年近くの感想は、とにかく辛かったという言葉につきます。僕らは外食のバーティカルSaaSとして外食産業に徹底的にコミットしてきましたが、そのリスクと大変さが一気に表出した、そんな状況でした。
外食産業が沈めば、僕らも沈む。まさにそういう状況で、僕ら自身も飲食店の皆さんと全く同じように、生き残りに全力を注いできました。
とにかくキャッシュを確保。そのために徹底的にコストダウンを進め、同時に資金調達にも動いていました。(資金調達は、近いうちに正式に報告させていただきます)
月のバーンレートも思い切って圧縮し、お客さまの解約も最小に抑え、なんとか生き残れるようにはなったものの、とはいえ飲食店がまともに営業できない状況では僕らの売上も伸びるわけもありません。先の見えない状況が続きました。思い切っていくつかのサービスもクローズしました。残念ながら離れていくメンバーもいました。
それでも、僕らは外食にコミットし続けることをやめませんでした。
外食産業へのコミットメントを捨てなかった理由
外食産業にこだわり続けた理由は2つあります。
理由の1つめは、こういうときだからこそ、僕らは飲食店を応援する存在であり続ければならないと、それが僕らの果たすべき役割だと思ったからです。ここで真っ先に業界から逃げてしまったら、市場が戻ったときに僕らの信用は失われているかもしれません。そもそも、戻っても居場所がなくなっているかもしれません。だったら、腹をくくって業界に徹底的に寄り添おう。そう思いました。
実際、セールスチームには「サービスを売ろうとしなくていい」と方針を出しました。「その分、飲食店の皆さんの悩みや苦しみをしっかり聞いて、自分たちに何ができるか考えよう」と。
2つ目の理由は、むしろここがチャンスだと思ったからです。実際、コロナ禍でお話をした飲食店の経営者の皆さんは口を揃えて「変わろう」と話すようになっていました。今まであれだけデジタルに懐疑的だった人たちがみな、「DXをやらねばならない」と語るようになった姿を見て、外食産業に大きな地殻変動の兆しを感じたのです。ついに業界が大きく変革するときがやってくる。それは間違いないと思いました。
だから、短期的にはピンチだけれど、長期的に見たら絶好のチャンスなのだと、そう結論づけました。(というより、恐怖を感じている自分自身を説得しました)
以上2つの理由から、僕らは外食産業から逃げずにコミットし、いずれ訪れるであろう新しい世界での急成長を実現するための「仕込み」を進めようと決めたのです。
そう考えると、コロナは絶好の仕込みの期間です。なぜなら業界自体がフリーズしているから、そのフリーズの期間中に、環境の動きに先回りして開発をすすめることが可能だからです。
こうして作られたサービスが「トレタO/X」であり「トレタ予約番」、そして「トレタスタンプ」です。既存の予約事業でも「LINE通知連携」や「トレタB/X」など、新たな発想で予約体験をより一層進化させるサービスを立ち上げることができました。
これらはみな、コロナ禍が明けた新しい世界で不可欠になるであろうサービスとして作られたものなのです。
(実際、資金調達が成功したのも、予約事業の底堅さと新規事業の手応えとの双方があってこそでした。そういう意味では、既存事業の守りを固めてくれたメンバーと、新規事業の立ち上げに奔走してくれたメンバー、全ての仲間の貢献があってこその資金調達でした。メンバーのみんな、本当にありがとう)
外食DXへの挑戦と成果
それら新サービス開発の過程で、僕らは実際にいくつかの外食企業さまとパートナーシップを結び、共同でDXに取り組んできました。そしてその過程で僕ら自身がトライ&エラーを繰り返しながら、外食DXの本質を学ぶこともできました。
そこで痛感したのは「外食DXには、やった人にしか見えてこない風景がある」ということです。DXに取り組むとどんな事が起きるのかは、巷間あちこちで語られています。実際、僕もいろんなイベントや取材で語らせてもらってきました。
しかし、DXには、やった人にしかわからないことがたくさんありました。僕自身もあれだけ語ってきた張本人ながら、やってみて初めてそのインパクトに震え、ほんとうの意味で「腹落ち」することが少なくありませんでした。
たとえば、すでに数十店舗規模で導入いただいているトレタO/X導入企業さまでは、実店舗でのトライアル運用の結果を踏まえて「30%強だった人件費率が最大20%弱にまで下がる」という衝撃の試算結果にたどり着きました。下げ幅にしてなんと13%。もちろん、僕らはO/Xを導入すれば人件費が削減できることは知っています。いや、確信を持っていると言っていいでしょう。しかし、それがまさか10%以上も下がるとなると、これはもう別次元の話です。(当の法人さま自身も信じられず、何度も試算をし直したそうです)
今の飲食店で人件費が20%以下にまでなったら、それはもう僕らの知る飲食店の収益構造ではありません。なにか別の種類の事業になったと言ってもよいくらいの変化です。
つまり、「飲食店の収益性が改善する」というレベルの話ではなく、DXの本質は「外食産業を全く異なる産業に変えてしまう」くらいのインパクトがあるのです。
実際、この企業さまでは「ホールスタッフが半分でもお店が回る」というメリットを享受しつつも、ここからさらに進んだ議論が始まっています。それは「下がった13%を何に使うか」です。
もちろんそのまますべてを利益にしてもいいのですが、敢えて削減コストの半分に当たる5-6%くらいを投資に回して、お店の付加価値向上に充てることも可能です。そしてもしそれが実行されたら、おそらく従来型の店舗との差はどんどん広がっていくでしょう。
貴重な人材を「作業」に投入し続ける企業と、「作業」を機械に任せ、より高度な「おもてなし」の実現に積極的に投資する企業。その差は歴然でしょう。
単なるコスト削減にとどまらない、DXのもたらす本当のインパクトとはこういうことなのだと思います。
こうして僕らは、外食DXの本当の姿を目の当たりにしました。DXで最初に起きる変化は、大きな変革のほんの入り口に過ぎません。最初の変化が気づきをもたらし、それが次の変化への打ち手に繋がり、それらがお互いに作用しながら、更に大きな変化の波を生み出していくのです。飲食店がそこから学び続ける限り、その効果は雪だるま式に大きくなっていきます。
なぜ圧倒的な成果を出せたのか
では、なぜこの企業さまではこのような変化が起きたのでしょう。
その理由は大きく3つあると思うのですが、その筆頭として挙げるべきはトップの意思と覚悟です。
O/X導入にあたり、この企業さまの取締役の方に「なにをしたいですか」と質問した時、「PLの構造を根本的に変えたいのだ」と即答されていました。つまりこの会社では、そもそもDXは手段であり、達成したい目的が明確に存在していたのです。そしてトップ自らがそれにコミットしてやりきる覚悟を持っていました。実際、その取締役の方自身がO/X導入プロジェクトのトップに就き、毎週ミーティングに参加しながら、プロジェクトを推進してきました。
メンバーが現状維持バイアスに囚われそうになると「いや、そこは思い切ってオペレーションを変えようよ」とその場で意思決定をする。そんな場面を、僕も幾度となく目にしました。
成功要因の2つ目は圧倒的な現場力とオペレーション力。トップが従来のやり方を大きく変えると意思決定した時、それをしっかりとやりきる現場力があるかどうかです。この企業さまではそもそも圧倒的なオペレーション力があることに加えて、現場の皆さんがワクワクしながら新しいことに挑戦するという文化がありました。トレタO/Xを導入するにあたっても、「全店舗がやりたいやりたいって前のめりになりすぎているから、それをどう抑えるか」を考えなければいけなかったほどです。その結果、紙メニューの全廃と、オペレーションの完全デジタルシフトに成功したのです。
「デジタル化すると人間の仕事が奪われる」というのは、少なくとも外食においては全く異なります。むしろ、DXを成功させるには、現場の力・人間の力が絶対に不可欠なのです。
そして3つめが「共創」です。共創については、O/X事業責任者の高武の記事が詳しいので詳細はそちらに譲りますが、そもそもは「お客さまがトレタを信じてくれる」ことがなければ、何も始まりません。従来と変わらず、機能表を並べてマルバツを付けて業者選択をするようなやり方では、おそらくこの成果は出なかったでしょう。でもそのお客さまは僕らに賭けてくれました。そして、そのトレタへの信頼が、もともとトレタの社風でもある「顧客支援への強いこだわり」というDNAを刺激し、化学変化が起きたのだと感じています。
店舗人材とテクノロジー人材とが信頼感で結ばれ、垣根を超えて一つのチームとしてDXに取り組むこと。それ抜きでは、このプロジェクトは前に進まなかったのではないかと思います。
DXは、デジタル技術だけで実現するものではありません。ITツールを導入したからと言って、それだけではDXにたどり着けません。テクノロジー人材と店舗人材とが一体となり、これまでの成功体験や当たり前を捨て、ゼロから新しいやり方を創造する。それは痛みを伴うことですが、双方が一致協力して乗り越えることで、初めて大きな変化を起こせるのです。
DXという広大なフロンティアの開拓に向けて
このように、DXで大きな成果を上げるのは決して簡単なことではありません。しかし一方で、腹をくくって本気で取り組めば、誰にでも同じような圧倒的な結果を手にできる可能性があります。スマホやタブレット、クラウドが普及し、誰でも最先端の技術やサービスを安価かつ簡単に利用できるようになった今、テクノロジーは誰に対しても公平なのですから。
飲食店は、コロナ禍を経て、デジタルテクノロジーによる新たな進化の可能性を手に入れました。
DXとは、飲食店が久しぶりに手に入れた大きな大きなフロンティアなのです。
僕らトレタが取り組んでいるサービスの本質は、予約業務やオーダー業務、会計業務の単なる効率化ではありません。リアル店舗をテクノロジーで拡張すること、それこそがトレタの目指すゴールです。
店舗というリアル空間に、目に見えないデジタルインフラというレイヤーを重ね合わせ、料理のデータや決済のデータ、そして顧客データを流通させる。
これによって店内業務もお客様の体験も「なめらか」にしながら、リアルだけでも、デジタルだけでもなし得ない新しい飲食店のありようを創造するのが、僕らの目指している世界観です。
だから、トレタのサービスはこれからもどんどん進化していきます。予約もオーダーも決済も、本当の進化はこれからです。
現在は、リアルとデジタルの世界をつないでいるのはQRコードでありスマホですが、もちろん、その先にはARやMRといった、もっともっと多種多様な技術でデジタルとリアルの接続点を持つことができるようになるでしょう。それが実現したら、飲食店は更に大きく変わっていくに違いありません。可能性は無限に広がっています。
外食は唯一、人間の五感全てを刺激する究極の体験であり、最も贅沢な体験です。その究極の体験を、デジタルの力で拡張する。そんなチャレンジングでワクワクする目標に、僕らはこれからも全力で取り組んでいきます。
飲食店の皆さん、一緒に未来を作りましょう!!
人件費率13%削減で驚かれた方もいらっしゃるでしょうが、しかしそれはまだまだDXの入り口です。未来に向けて大きな変革に挑戦したいという強い思いをお持ちの方、ぜひお気軽にお問い合わせください!
そして最後に、この未来を一緒に作ってくれる仲間(社員や外部パートナーさん)も募集しています!
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